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教員の授業デザインを変革するiPad活用

教員の授業デザインを変革するiPad活用

2019年01月30日更新

生徒1人につき1台のiPadの導入で
教員の授業デザインが双方向に変わる

学校法人千葉明徳学園が運営する中高一貫校「千葉明徳中学校・高等学校」。同校では2017年度から、中学校1年生から高等学校1年生までの生徒1人につき1台のiPadを導入し、ICT教育を実践している。私立学校がICT教育を実践する上での課題と、教員に生まれた変化について話を聞いた。

ICT推進年次計画で段階的な環境整備

 千葉明徳中学校・高等学校は、千葉県千葉市中央区に校舎を構える私立の中高一貫高だ。同校では、2017年度から1人につき1台のiPad環境を導入し、学びに生かしている。ICT教育をスタートした経緯について、千葉明徳中学・高等学校の高等学校 副校長を務める梅澤俊秀氏は次のように振り返る。

「当校では2010年頃から電子黒板機能を搭載したプロジェクターや教材提示装置(書画カメラ)の導入など、ICT環境の整備を進めていました。当時から文部科学省は教育の情報化への対応施策を打ち出しており、学校の施設設備を含めた日本の教育環境が大きく変わるだろうという危機感を抱いたからです。公立学校であれば自治体主導でICT環境の整備が一気に進む可能性がありますが、私立は数年のスパンで計画的にICT環境を整備していく必要があります。そこでICT推進年次計画を立て、電子黒板(プロジェクター)の導入を含め、校内のWi-Fi環境整備やタブレットの導入などを段階的に進めていくことを決めました」

 ICT推進年次計画は2015年度に策定され、ハードウェア面や具体的な活用の方法、アクティブラーニングを実践する上での教員研修計画などを立てた。またWi-Fiの整備も進めたという。2016年度には、先行して教員にiPad Air(Wi-Fiモデル)を貸与し、LoiLoの「ロイロノート・スクール」などを活用した具体的な研修をスタートさせた。教員が先行して活用を進めることで、スムーズな授業を実現できるようにするためだ。教員への研修が完了した2017年度に、中学校の全学年と高等学校1年生を対象に、iPad Air 2を導入した。2018年度である今年は活用2年目となり、中学校から高等学校2年生までが1人1台のiPad環境で授業を進めている。※
※特別進学コース(難関大合格を目指すクラス)では2015年度から先行してiPadを導入。

公開授業で教員の授業デザインを発展

 千葉明徳中学校・高等学校におけるiPad活用は、生徒の家庭に購入費用を負担してもらい、教材として生徒がiPadを所有する、いわゆる「BYOD」スタイルで運用している。「ロイロノート・スクールや、グーグルの『G Suite for Education』、リクルートの『スタディサプリ』など、授業で使用するアプリはあらかじめインストールした状態で生徒に渡します。MDMツールで管理はしていますが、端末に対してほぼ制限はかけていません」と梅澤氏。高等学校では生徒が自由にアプリをインストールできるようにしているなど、生徒の自主性を重んじた運用を行っている。

 iPadを導入したことで得られた効果として、「21世紀型教育」への関心の高まりと、その教育の実践に取り組む教員が出てきていることが挙げられた。例えばルーブリック評価への取り組みや、授業デザインの変化などだ。授業デザインについては、これまでの講義型の授業からアクティブラーニングへと変化し、授業が双方向的になったという。アクティブラーニングにおいて主に活用されているのはロイロノートで、例えば高校1年生の英語の授業では、教員がロイロノートで課題を配信し、生徒はその課題をもとに、ペアになった相手に英語で説明をするような授業を実践している。また、英文法の用法を説明するために教員自身が撮影した動画を教材にするなど、iPadを有効に活用した学びを実践している。

 半面、保守的な教員も少なくないと梅澤氏は課題を語る。「そうした教員にも前向きにICT活用に取り組んでもらえるよう、年に1回公開授業を実施しています。学外の教員から自分の授業に対する意見をもらえれば、それが自信になったり、逆に自分の授業を見つめ直したりする機会になるからです。また、公開授業において先進的な授業を実践する教員の1人は、人工知能を活用した教材を授業に取り入れて注目を集めていました」

 その授業を実践したのは、特別進学コース(難関大受験コース)の数学教員だ。COMPASSが提供する人工知能型教材「Qubena」(キュビナ)を公開授業で活用したという。「人工知能を活用した教材ということで、公開授業の中でも非常に高い関心がありました。しかし、人工知能によって教員が不要になる、という結論になってしまう授業ではいけません。そこで担当教員は、数人で一つのグループを作り、話し合いなどをさせながら、ただ問題を解くだけの授業ではなく、生徒の学びを導きながら学び合いを支援する双方向的な授業を構築しました」と梅澤氏は授業を振り返る。Qubenaは来年から同校の教材として本格的に導入される予定だ。

高校1年生の英語の授業
(左)教員自身が撮影した動画を教材に、英文法を学ぶ。
(右)配信された画像とキーワードをもとに、英語で状況を相手に説明して英語を学んでいる。

外部研修への参加で教員のスキルを伸ばす

 同校のタブレット活用においてアプリのインストールは制限なく行えるようになっているが、教材として採用する場合は、教科の担当教員の多数が導入に賛成しなければ採用されない。多数の教員が「使える」と判断した教材でなければ授業で活用されないからだ。また、導入したアプリについては日常的に活用できるよう、教員研修を繰り返し実施している。

「公開授業も教員のスキル向上に効果的ではありますが、今後はロイロノートのユーザー会など、外部の研修にも参加してもらい、教員の視野を広げていきたいと考えています。現在の授業コマ数ではなかなか外部に研修に行ってもらう時間が確保できないため、校内でコマ数を調整し、研修を積んできてほしいと考えています。校内の教員同士だけでは、どういった授業が望ましいのかといった到達点が分かりません。現状の授業は効率的ではありますが、全ての授業が双方向的であるかというとそうではありません。先進的な授業スタイルを実際に目にすることで、ICTがなければ実現できない授業デザインを知り、教員自身の授業に生かしてほしいと考えています」(梅澤氏)

 今後のICT運用については、iPadの導入を進めつつ、学内のスマートフォン活用の自由化にも取り組んでいきたいと、梅澤氏は理想を語る。「現在、中学校は朝にスマートフォンを教員に預ける、高等学校では電源を切ってかばんの中に入れておくという規則を作っており、授業でスマートフォンを自由に使えません。例えば授業でよく使うロイロノートなどはWebブラウザーベースで動くため、もしiPadを自宅に忘れたら自身のスマートフォンからロイロノートにアクセスすればいいのです」と梅澤氏は続けた。同校でのiPad活用はいわゆるBYODのスタイルだが、本来BYODは学校から端末を指定せず、生徒自身が使いたい端末を選んで授業に持ち込むスタイルが原義だ。学びにICTを柔軟に取り入れていくためには、私物スマートフォンを活用したBYOD化も、今後の教育ICTには求められていくだろう。

高校2年生の日本史の授業
(左)配布されたプリントに生徒自身の解答を書き込んでいく。
(右)書き込んだ解答は、iPadで撮影してロイロノートで提出する。

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