
レッドハットCEOなどの基調講演をリポート「Red Hat Forum Tokyo 2018 Review」
Red Hat Forum Tokyo 2018 Review
2018年11月8日、ウェスティンホテル東京で「Red Hat Forum Tokyo 2018」が開催された。テーマは「IDEAS WORTH EXPLORING アイデアとオープンソースのちからで、ビジネスに変革を。」だ。レッドハットが牽引するオープンソース市場の勢いが現れた同フォーラム。満員の聴衆の中で行われたゼネラルセッションの模様を中心にリポートする。
IBMとの一体化による四つの利点
「Red Hat Forum Tokyo 2018」は、レッドハットにとって年間最大規模となるイベントだ。冒頭の挨拶で登壇したレッドハット株式会社 代表取締役社長の望月弘一氏が、「アイデアとオープンソースの融合によるビジネスの推進と新たな価値創造がテーマです」と宣言し、ゼネラルセッションの幕が開けた。
望月氏の言葉を継いで登場したのは、レッドハット 社長兼CEO ジム・ホワイトハースト氏だ。まず、業界を揺るがせたIBMによるレッドハットの買収について次のように話した。「非常にエキサイティングなできごとです。IBMとレッドハットが力を合わせることで、世界をリードするハイブリッドマルチクラウドプロバイダーを形成できます」
IBMとの一体化によってレッドハットが得られる利点については以下の4点を挙げる。「世界をリードするレッドハットのオープンソースポートフォリオの拡大が加速」「オープンソースに対するレッドハットの取り組みが維持され、デジタル変革戦略の基盤としてのオープンソースの影響力を促進」「業界をリードするオープンソースソリューションの販路拡大を通して大規模なクロスセルの機会を提供」「独立した、個別の事業部門として業務を行い独自のカルチャーを維持」
オープンの原則が存在
続けてホワイトハースト氏は、「デジタル変革とオープンな組織」というテーマでビジネスキーノートを行った。デジタルトランスフォーメーション(DX)は、テクノロジーだけでなく、仕事の性質や21世紀における価値創造に関わる動きであり、既存の企業や業界を破壊する可能性を持っている。「レッドハットは長年にわたってディスラプション(破壊)のビジネスに身を投じてきました。当社はプロプライエタリの業界、ソフトウェアを破壊してきたのです。今ではほぼ全ての大手テクノロジー企業が、オープンソースソフトウェアを活用しており、それが不可欠になっています」(ホワイトハースト氏)
DXへの取り組みについては、次のようにアドバイスする。「従来までの、計画、指示、実行といったプロセスが通じなくなっています。あらかじめ計画できない世界に対応できるようにするのがDXの核です。つまり、より柔軟で回復性があり、より早く環境の変化に対応できる組織づくりが必要です。それには垂直ではなく水平的なアーキテクチャが欠かせません。そして、アジャイルなプロセスでさまざまな顧客ニーズに柔軟に対応し、協業的なカルチャーで共創していけるかどうか、それがDXの成功の鍵になります」(ホワイトハースト氏)
DXは、多くの場合はボトムアップで小さく始めて大きくしていくのが良いという。「これらは66四半期連続で成長してきたレッドハットの指針です。ここにはオープンの原則が存在します。テクノロジーの未来はわれわれにも予測がつきません。そのため、皆さまとオープンな関係でカルチャー、プロセス、知識などを共有し、協力して取り組んでいくことが必要です」(ホワイトハースト氏)
ビジネスキーノートの中で行われた株式会社NTTデータ 取締役常務執行役員 技術戦略担当 技術革新統括本部長 木谷 強氏とホワイトハースト氏との対談では、DXによるサービス環境構築のためにNTTデータが「Red Hat OpenStack Platform」と「Red Hat OpenShift」を活用してクラウドネイティブのシステム構築に臨んでいることが紹介された。
新たな価値を生み出すクラウドサービス
続いて特別講演として、富士通株式会社 クラウドサービス事業本部 ファウンデーションサービス統括部 統括部長の松本 修氏が登場した。テーマは「ビジネスを支えるオープンハイブリッドクラウド」だ。「FUJITSU Cloud Service for OSS」を提供する富士通は、基幹システムのクラウド化の傾向が高まる中で、さらなる安定と顧客のオープンソース活用を支援するために、レッドハットとの協業関係を強化している。
顧客がクラウドサービスに望むポイントとして松本氏は、「Sustainable」「Scalable」「Secure」「Non-Stop」「Non-Lock in」「Non-Blackbox」を挙げる。「モノシリックなオンプレのシステムを解きほぐしてクラウド移行を促しつつ、データの見える化など新たな価値を生み出すサービスの提供も目指しています」と松本氏は説明する。そのために同社は、レッドハットと協業してオープンなパブリック/プライベートクラウドサービスの提供に取り組んでいるという。
ゼネラルセッションの中盤には、レッドハット アジア太平洋地域担当 シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのダーク-ピーター・ヴァン・ルーウェン氏によって、「Red Hat Innovation Awards APAC 2018」の受賞発表が行われた。受賞したのは、ふくおかフィナンシャルグループとNTTコムウェアだ。
ふくおかフィナンシャルグループは「デジタル・トランスフォーメーション部門」で受賞した。ふくおかフィナンシャルグループ 取締役執行役員 横田浩二氏はDXの取り組みに対して「人口減少、マイナス金利政策、異業種の参入などによって厳しさが増す中で、テクノロジーの力を利用して顧客ニーズに適した組織・文化をつくろうと考えました」と話す。そこで、Red Hat Open Innovation Labsを利用し、DevOpsによるアジャイル開発手法の習得と実践、システム開発の内製化の取り組みを開始している。また、アプリケーション開発・実行環境としてRed Hat OpenShift Container Platformも採用し、パブリッククラウド上に展開・活用している。
NTTコムウェアは、「クラウド・インフラストラクチャ部門」で受賞した。NTTコムウェアは、同社が提供するPaaS型開発環境サービス「SmartCloud DevaaS 2.0」のクラウド基盤にRed Hat OpenStack Platformを導入している。Red Hat OpenStack Platformは、運用の自動化、開発環境やツール調達のセルフサービス化、動作状況の可視化を可能にするポータル機能の提供を図る上で必須の技術要件となるAPI群を内包していたからだ。「Red Hat OpenStack Platformによって、開発の迅速化、運用コストの低減、開発環境の自動化が実現しています」とNTTコムウェア株式会社 取締役 ネットワーククラウド事業本部 サービスプロバイダ部長の関 洋介氏は話す。
エンタープライズに未来をもたらす
ゼネラルセッションの最後に登壇したのは、レッドハット RHELビジネスユニット バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのステファニー・チラス氏だ。「RED HAT WAYで未来を予測する」と題したテクニカルキーノートを行った。
ソフトウェアのイノベーションを牽引してきたLinuxは現在、開発プラットフォームにおいて最も広く利用されており、パブリッククラウドインフラで稼働している全アプリケーションの54%はLinux VM上で動作しているという。「Linuxが優勢になったのはオープンソースだからです」(チラス氏)
レッドハットのビジョンは「オープンハイブリッドクラウド」だ。レッドハットでは、Red Hat Enterprise Linuxを軸に、コンテナを含むあらゆる種類のアプリケーションと環境を提供し、ハイブリッドで形作られる新しいデータセンターの構築を支援する。
「レッドハットはオープンハイブリッドクラウドの基盤を16年前に構築し、重要なマイルストーンであるOpenShiftを7年前に発表しました。その結果として、包括的なクラウド対応のポートフォリオを5年前に実現しています。そして現在、レッドハットはパブリッククラウド環境で第1位の商用Linuxディストリビューションとなっています。これまでも、そしてこれからも、レッドハットがエンタープライズに未来をもたらすのです」(チラス氏)
キーワードから記事を探す
-
第 1 位
USB Type-Cを軸にしたノートPCと外付けモニターの活用法を戸田覚が伝授
-
第 2 位
戸田覚が教えるExcelやWordでの手書き機能の使い方
-
第 3 位
戸田覚が伝授「スマホでパワポのスライドを作ろう」
-
第 4 位
Windows 10サポート終了の特需はない
-
第 5 位
PCデータをバックアップするSSD・HDDの選び方を戸田氏が指南
-
第 6 位
「オフィス作業では大画面モニターを使って仕事をさくさくこなそう」by戸田覚
-
第 7 位
PCやスマホ活用時の目に優しい画面設定について戸田覚が伝授
-
第 8 位
戸田覚が「Microsoft To-Do」を利用したセルフ働き方改革を伝授