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ビッグデータを活用して婚活を支援する愛媛県の取り組み「えひめ方式」

ビッグデータを活用して婚活を支援する愛媛県の取り組み「えひめ方式」

2018年12月27日更新

ビッグデータで隠れた好みや相性を推測してマッチング
~愛媛県の婚活支援「えひめ方式」~

結婚しない、婚期が遅れていることが少子化の主な要因と言われ、地方自治体でも対策が進められている。その中で注目を集めているのが、愛媛県が取り組む「えひめ方式」だ。愛媛県は2008年11月に「えひめ結婚支援センター」を開設。3年前からは、ビッグデータを活用して相手の検索から、お見合い、結婚に結び付けるまでの支援活動を行っている。ビッグデータ活用による婚活支援とは? 背景、効果、課題を聞いた。
Text by 古俣慎吾 Shingo Komata

えひめ結婚支援センターが出会いの場を提供

 愛媛県では、30歳代の男性の3人に1人、女性の4人に1人が未婚。50歳で結婚したことのない人の割合(生涯未婚率)も上昇しており、未婚化・晩婚化が顕著になっているという。危機感を抱いた県は、2008年に「えひめ結婚支援センター」を開設し、企業やボランティアの協力で未婚の男女に出会いの場を提供する結婚支援活動を行ってきた。センターが最初に実施したのは、男女の出会いの場づくりを支援する「de愛イベント」の開催だった。

■結婚支援イベント「de愛イベント」
・メルマガ購読者を募集し、定期的にイベント情報を配信する。
・パーティーや食事会などの結婚支援イベントを主催する飲食店、ホテル、旅行会社などを「応援企業」として募集し、企業・団体と連携しながら、小規模イベントを企画・実施する。
・20~40人程度の「de愛イベント」を、県内各地で月に20回程度開催。年2回程度、クリスマス、サマーボランティアなどの「大規模交流会」(100名程度)も開催する。
・事業に協力してもらう「ボランティア推進員」を公募し、ボランティア推進員が「de愛イベント」で参加者のカップリングフォローや、イベント後のカップルの交際フォローを行う。

 ITを活用して2011年にスタートさせたのが、1対1のお見合いをさせるシステム「愛結び」事業だった。結婚を希望する独身男女が自身のプロフィールを登録し、相手情報を閲覧して会いたい人を探す。そのカップルに対し「えひめ結婚支援センター」が個別に引き合わせをするというものだ。

■1対1のお見合い事業「愛結び」
・県内4カ所に愛結び会員の登録や閲覧・申し込みを行う窓口を設置。
・愛結びコーナーで愛結び会員の登録を行い、会員同士のプロフィールを開示し閲覧・お見合い申し込みを受け付ける。
・閲覧して引き合わせを希望する相手がいる場合、専用端末機から申し込みを行う。
・センターから相手に連絡し、了解が得られれば、ボランティアの「愛結びサポーター」が日時などの調整を行い、サポーター立会いのもと、引き合わせをする。付き合いがスタートすると、サポーターは成婚に向け適宜、カップルの交際フォローを行う。

 つまり、支援センターが中心となり、メルマガ配信で会員募集から企業や団体の支援でイベントを企画・開催し、ボランティアによるフォローまでを行う。さらに、出会いのイベントだけでなく個人情報が登録・閲覧できる端末を通じて1対1のお見合いまでを支援していく仕組みだ。何と、過疎・離島地域へもサポートを強化したり、県外独身者へもアプローチしているのだという。

 民間の結婚相談所や婚活支援センターが真似できないような規模と細かいシステムだ。実際に同センターの活動実績(2017年2月28日時点)は次のようになっている。

■結婚支援イベント「de愛イベント」
・イベント開催数:2,014回
・参加者数:延べ5万8,416人
・誕生したカップル数:8,031組
・メルマガ購読者:1万66人

■1対1のお見合い事業「愛結び」
・会員登録数:累計6,066人
・お見合い実施:6,416組
・誕生したカップル数:2,894組

■成婚報告数(2017年2月28日時点)
・結婚支援イベント「de愛イベント」:379組
・お見合い事業「愛結び」:402組

 しかし、同センター事務局長の岩丸裕建氏によると、「当初は期待通りに成果が上がらず、途中で新しい手法を考える必要があった」という。

行動履歴を活用したおすすめシステム

「1対1のお見合い事業『愛結び』は7年前から始めたのですが、登録して3年が経過しても1回もお見合いを引き受けてもらえない男性などが結構出てきたのです」と岩丸氏。

 例えば男性Aさんが、居住地域や年齢、身長など自分の希望条件を入力して相手を探し、出てきた女性Bさんを気に入り、見合いを申し込んだ。しかし断られてしまった。そして、そこで終わってしまうようなケースがかなり多かったのだという。

 結婚希望の相手の条件にこだわるのは当たり前かもしれない。ただ1回だけ来て条件を入力、登録して、待っているだけではだめなのだ。年齢を20代と決めてしまえば、30代前半の人はヒットしない。目先を少し変えればOKになるかもしれない人を逃してしまう。条件検索にはどうしても弱点が生じる。

 ただ、お見合いに行き着く確率は低くても、お見合いをした男女のほぼ半数は交際にまで発展していた。お見合いまでたどり着けば、ボランティアがサポートする強みがあったからだ。

「失敗する人はなぜお見合いにまでたどり着けないのか。その行動を分析することによってヒントが見つかるのではないか。そこで、アルゴリズム研究の専門家である国立情報学研究所の宇野毅明教授に行動データ分析を依頼したところ、お見合いにたどり着けないケースには特徴があることが分かったのです。何回失敗しても、相手を検索する条件を変えないということでした。年齢や学歴など見える条件だけでなく、婚活をしている人のお見合い行動を追って、隠れた好みや相性を推測しながらおすすめした方がよいのではないか。そこから、ビッグデータの活用という発想が生まれたのです」(岩丸氏)

 例えば、Aさんがセンターの端末にプロフィールを登録し、検索、閲覧すると、お見合い相手に行き着くまでに数多くの行動データが蓄積される。この活動履歴をビッグデータとして活用すると、Aさんに可能性のある相手が見えてくるというのだ。

 データ活用の一例を見てみると、

①Aさんが閲覧して好みの相手(女性のBさん)に申し込んだが、OKがもらえない
②データを活用すると、同じようにBさんを相手に選んだ男性Cさん、Dさんらがリンクされる
③さん、Cさん、Dさんらが婚活を進めていくと、好みが似た男性グループによって選ばれた女性のグループが構築できる
④その女性グループの中には、Aさんの好みの女性がいて、おすすめされるかもしれない

「昔、お見合いが盛んだった頃はおせっかい好きがいて、『今はちょっと給料が安いけど、がんばり屋だからうまくいくよ』などと、ネガティブデータをプラス思考に変えて結婚に結び付けてくれていました。当県のシステムは、条件が合わないように見える一面を、異なった側面から見せてくれるおせっかい好きのおすすめシステムです。もともとお見合いの申し込み件数は女性が低く、男性の2割(6%)程度にとどまっていましたが、ビッグデータを活用するようになってから22%に上がりました。お見合いに結びつく確率も、データ活用前の13%から29%に上昇しています」(岩丸氏)

 愛媛県の婚活支援は「えひめ方式」と呼ばれている。これまでに徳島県や茨城県など16県が同様の仕組みを導入した。しかし、都道府県によって条件が異なるので、単にシステムを導入しただけでは効果は上がらないと岩丸氏は言う。

「例えば、女性から男性にお見合いを申し込む傾向は近畿圏が最も高く、関東圏、九州圏から北陸、山陰と低くなっていきます。国がこのシステムを活用して一律に未婚率を解消させようとしてもうまくいかないでしょう。地域によって男女のあり方、結婚や家庭に対する考え方など、社会風土や環境が異なるからです。ただ、このえひめ方式はビッグデータを活用したカスタマイズも可能なので、さまざまな地域で効果を上げられるでしょう」と岩丸氏。

 県レベルではなく、市町村レベルでそれぞれの自治体の環境に合わせたシステム構築ができたら効果が得られそうだと期待を寄せている。

えひめ結婚支援センターのホームページでは、動画も利用してビッグデータ活用の効果を説明している(写真はホームページの動画より)。

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