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画像認識技術で生きるエッジ処理

画像認識技術で生きるエッジ処理

2018年12月17日更新

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エッジ処理でIoTビジネスの速度が変わる

IoTにおけるエッジの重要性は前項で解説した通りだ。しかし、実際にAzure IoT Edgeを活用した製品や活用事例はあるのだろうか。今回はぷらっとホームとクラウディアンの2社に、提供している製品を踏まえた、Azure IoT Edgeの利点と今後の可能性を聞いた。

WebブラウザーからIoTシステムを管理

 ぷらっとホームでは、2017年12月からIoTエッジコンピューティングを実現する高性能IoTゲートウェイ「OpenBlocks IoT VX2」を提供している。OpenBlocks IoT VX2は昨今のIoTシステムで必要不可欠とされるIoTエッジコンピューティングの構築をサポートする製品で、同社が提供してきた既存のIoTゲートウェイシリーズ「OpenBlocks IoT Family」で培ったノウハウやユーザーからのニーズが多かった機能を取り込み、長期運用に耐えうる信頼性の高い製品として開発された。

 具体的な特長に、IoTエッジコンピューティングを実現するために必要なハードウェア性能やインターフェースの強化、LPWA対応、そして新型ファームウェア「IoT Gateway Firmware 3.0」の搭載だ。現在のファームウェアは「FW3.2」で、各種新機能を搭載しているほか、Azure IoT Edgeデバイスの認定を取得しており、OpenBlocks IoT VX2とAzure IoT Edgeを使用した高信頼なIoTエッジコンピューティング環境を構築可能になっている。

 ぷらっとホームの後藤氏は、同社が提供するIoTゲートウェイOpenBlocks IoT VX2について次のように語る。

「OpenBlocks IoT VX2はインテリジェントエッジを実現するIoTゲートウェイです。視覚的に操作可能なWeb UIからセンサーやデバイスの接続、各種クラウドサービスの接続、Dockerコンテナのデプロイや割り当てリソース設定、Microsoft Azure IoT Edgeの導入やモニタリングなどが行えます。IoTデバイスからのデータ収集やクラウドとの双方向通信を実現するPlat’Home Gateway Data Handling Module System(PDHMS)とAzure IoT Edge間のダイレクトなデータ通信も可能で、収集したセンシングデータをAzure IoT Edgeで解析することもできます。インテリジェントクラウドの時代に対応した、新世代のIoT エッジコンピューティングを実現できるのです」

 Web UIでは、Webブラウザー画面上でIoT通信機能の操作や設定をはじめ、センサーやビーコンの検索、ペアリング作業など、全体のパラメーター管理が行える。各社クラウドサービスとの接続設定もWeb UIから設定可能だ。

ぷらっとホーム IoTサービス部 部長 後藤敏也 氏

相互検証されたセンサーやデバイスを活用可能

 アプリケーション実行環境であるDockerをサポートしており、Dockerコンテナのデプロイや起動・停止・リソース割り当てなどの操作もWeb UIから可能だ。Dockerイメージ共有サービス「Docker Hub」で公開されているDockerイメージのデプロイや、ユーザー自身で構築したDockerイメージのプライベートレジストリからデプロイする機能を搭載し、さまざまなDockerイメージを利用できる。

 デバイスとの接続については、ぷらっとホームがセンサー・デバイスメーカー向けに「IoTセンサー・デバイス パートナープログラム」を提供しており、相互に接続検証をしたデバイスをサポートセンサー・デバイスリストへ掲載したり、搭載しているファームウェアでの標準対応を公式でサポートしたりしている。また、双方向通信に対応したクラウドやWebサーバーとの通信アプリケーション「PD Repeater」も搭載し、Azure IoT HubやAWS IoTをはじめとした主要なクラウドサービスに対応している。

 IoT環境のゲートウェイとして十分な機能を備えたOpenBlocks IoT VX2だが、Azure IoT Edgeに対応したことで、ユーザー側にはどのようなメリットがあるのだろうか。

「あらゆるIoT環境に言えることですが、エッジ側で取得したデータをクラウドに上げるとデータ量が多くなるため、100分の1程度のデータにしたいというニーズがあります。しかし、これらのデータは普通に圧縮すると半分程度にしかならないため、メタ化など意味のある圧縮が必要です。しかし、AzureとAzure IoT Edgeを利用すれば、例えば振動の揺らぎを検出するシステムでは、一定の揺らぎを認識したときにデータを飛ばすような閾値を設定したテンプレートをAzure上でDockerコンテナ化し、エッジ側に展開できます」(後藤氏)

OpenBlocks IoT VX2に接続したカメラで画像認識処理を実施した画像。車や人などをかなり高精度に認識している。

ライトIoTの許容で画像認識で利益を得る

 もう一つのメリットとして、前述したような振動を検知するシステムは、その場でユーザー側にアラートを発信して欲しいニーズがある。Azure IoT Edgeに展開したモジュールにその判断ができるフィルターを組み込めば、クラウドを経由するラグを生じさせずに、アラートの発信が可能だ。

 また、これらのモジュールは従来であれば個別に記述する必要があったが、Azure IoT Edgeの利用によって、クラウドから全てエッジにデプロイできる。複数台への対応も可能で、エッジが100台あれば100台にデプロイできるのもメリットだ。

「エッジ側の処理で最もメリットのある利用が、画像認識です。上流で学習させてエッジで判断する使い方が期待されています」と後藤氏。


 Azure IoT EdgeもWeb UI上でマネジメント可能だ。データ処理をOpenBlocks IoT上で実行でき、PDHMSとAzure IoT Edge間のデータ連携も行える。例えばPD Handlerで収集したセンシングデータをAzure IoT Edgeでデータ解析もでき、Azure IoT Edgeを利用したIoTエッジコンピューティングを支援する。

 Azure IoT Edge向けのNode-REDモジュールも提供している。Node-REDはハードウェアデバイス/APIおよびオンラインサービスを接続するためのツールだ。センサーなどから受け取ったデータを加工・処理し、どのクラウドサービスへデータを送るか、どのようなアクションをするかなどをWeb UI上から視覚的にプログラミングできる。IoTにおけるエッジコンピューティングを容易に実行可能なのだ。

「エッジで処理してデータを取得するIoT環境は、入店傾向の把握や害獣の認識などさまざまな分野への活用が期待できます。100%完璧に認識できるわけではなく、約90%程度の認識率になるかもしれませんが、害獣が来たことや、ある程度の来店傾向を把握する用途では約90%程度の認識率でも十分メリットが得られます。このような“ライトIoT”を許容できるか否かが、今後ビジネスで利益を獲得できるかどうかの分かれ道になるでしょう」と後藤氏は指摘した。

Azure IoT Edgeを用いた振動センサーのデモ。振動を検知するとランプがつく仕組みになっている。右がエッジ処理、左がクラウド処理のランプで、動画で確認すると右のランプが一瞬早く点灯する。

画像認識分野でニーズの高い交通量計測

 IoT環境のデータ処理を行う上で、エッジによる処理の重要性が大きいのが画像認識の分野だ。そうした画像認識の分野で、特にニーズの高い交通量計測の用途で注目を集めているエッジデバイスが、クラウディアンが提供するIoT/AI用エッジ処理装置「AI BOX」だ。

 クラウディアン 事業開発部 シニア エキスパート 万代 豊氏は、AI BOX開発の経緯を次のように語る。「もともとは電通とインテルとの共同で、車の車種に応じた広告をビルボードに出す仕組みを開発していました。カメラを設置して、ファミリーカーとラグジュアリーカーをディープラーニングで学習して認識し、その車種に応じて広告を切り替えるというシステムです。その車種認識のシステムをきっかけに、『交通量計測に使えないか』という依頼をもらうようになりました」

 特に交通量計測のニーズが高いのが夜間の道路だ。道路工事などは夜間に行うことが多いため、工事を実施したことによる交通網への影響や迂回ルートを把握するために活用したいという要望が多くあったという。しかし、夜間の車両をカメラで撮影し、学習済みモデルを作るために切り出して蓄積するにあたり、データをクラウドにアップロードすることで映像が劣化してしまい、適したデータとして使えないというジレンマがあった。また、当初から開発していた車種に応じたリアルタイム広告連動は、クラウドに一度データをアップロードする時間を要するためにレイテンシーが発生し、広告表示が遅れてしまうという課題も生じていた。

クラウディアン 事業開発部 シニア エキスパート 万代 豊 氏

組み込み向けGPUで取得した映像をエッジ処理

 そこで開発されたのがAI BOXだった。AI BOXにはNVIDIAが開発した組み込み機器向けモジュール「Jetson」シリーズが搭載されており、エッジ側で学習モデルを実行して、取得映像を即時に処理できる。前述した交通量解析についても、AI BOX上で学習モデルを実行して必要な画像のみを取得する仕組みを構築すれば、非圧縮で高精度の画像を蓄積できる。

 AI BOXには屋内モデルと屋外モデルが用意されており、構造はほぼ同一だ。4本のアンテナのうち、二つはWi-Fiで残り二つはLTEに対応している。屋外モデルのみPoE給電と防水・防塵・落雷対策に対応しており、AC電源が取れない場所や雨風にさらされる場所に設置可能だ。

 ソフトウェアアーキテクチャはPCに近く、ハードウェア、ドライバー、OSとしてUbuntu、GPU、ディープラーニングフレームワーク、Python、AIアプリケーションなどで構成されている。「GPUが搭載された高性能なマシンと考えてもらえれば」と万代氏。

 エッジ処理によって、前述した即時性や画像のクオリティ問題などをAI BOXは解決した。しかし活用を進めるうちにデバイス管理や学習済みモデルのアップデートなど新たな課題に直面した。そこでクラウディアンは、Dockerベースで展開するAzure IoT EdgeをAI BOXに活用することで、その課題解決を図った。

人の目の代わりを果たすカメラの活用

「例えばドライバー依存などによるダウンロードプラットフォーム構築の煩雑さは、Dockerによる環境の分離で解決できます※。またAzure IoT Edgeは大量のデバイスへのモデル更新もコンテナ配布による更新で対応可能です。データ収集基盤の構築についても、Azure IoT Edge Hubが対応できるため、エコシステムやパフォーマンス、デプロイの全ての課題を解決できました」と万代氏はAzure IoT Edgeを採用したメリットを語った。

 AI BOXの活用用途は、開発のきっかけである交通量解析以外にも広がりはじめている。例えばビルやマンションの巡回保全、人の目で確認する必要がある水位や揚水ポンプの動作確認など、カメラを含めたIoT構築に取り組んでいる。

 また、近々実装予定であるのが顔や個人を特定できる情報をフィルタリングして、メタデータをディープラーニングで蓄積し、通信ホストに保存する技術だ。「年ごとや季節ごとのファッショントレンドをモニタリングする場合、歩いている人を撮影する必要があります。従来であれば膨大な人物を撮影しなければならず、また顔などの個人情報も取得してしまっていました。AI BOXによってフィルタリングすれば、録画すらせずに必要な情報だけを取得できるのです」と万代氏。

 今後の展望として万代氏は「AI BOXをベースに、パートナーと市場を開拓していきたいと考えています。特に画像を使うような、エッジヘビーなユースケースを中心に開拓していきたいですね。画像のような非構造情報は処理が難しいのですが、エッジ側で処理できればクラウドの使い方もスムーズになっていくでしょう」と語った。

 Azure IoT Edgeを採用したデバイスは現在のところ決して多くはない。IoTシステムの課題となるエッジ側のデータ処理に対応したデバイスはすでに活用が進んでおり、今後も画像データ処理や分析の分野で利用が進んでいくだろう。しかし、エッジで処理したデータも、クラウドにアップロードしてさらに高度な分析が行われるため、エッジとクラウドの連携は必須といえる。そういったIoT環境の連携課題を解決するのが、Azure ServiceとAzure IoT Edgeが持つ一貫性であり、今後の進化とともに活用が進んでいくだろう。
※Dockerへの対応はAzure IoT Edge対応前に完了。

クラウディアンが開発した車種によって広告を変えるIoTシステム。高級車とファミリー車を判別(左)して広告内容を変える(右)。

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