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エッジからデータセンターまでのデータ処理をサポートするインテル

エッジからデータセンターまでのデータ処理をサポートするインテル

2018年12月06日更新

SILICON INNOVATION
シリコン・イノベーション

コンピューターのエンジンとエネルギーの役割に大きな変化が現れている。爆発的に増大するデータがその主要因であり、あらゆる場所で生成されるデータをより効率的に処理できるアーキテクチャが求められるようになってきたのだ。こうした環境に合わせて、プロセッサーやメモリー、そしてそれらを搭載したハードウェアを提供する各ベンダーにも、新たなイノベーションの動きが生じている。

データセントリックへ軸足を移す

INNOVATION1 Intel

PCの黎明期からプロセッサー市場をリードしてきたインテルは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の渦中において、自身もまた大きなトランスフォーメーションを遂げようとしている。

インテル自身も変化

「世界中で生成されるデータ量は2025年に163ZBになると予測されています。現在でも、90%のデータはこの2年で生成されたと言われています。ますます増加するデータをビジネスに生かせるかどうか、それが企業の命運を分けるでしょう」

 このように語るインテル データセンター・グループ・セールス ディレクター 福原由紀氏は、企業を取り巻く環境について、データを中心とした変革が起こっていると指摘する。「従来は60年程度だった企業の平均寿命は、デジタル化の進展などによって2020年には12年程度になるとも予想されています。現在は、データを駆使できる企業が伸びており、旧態依然の企業体質では生き残れないのです。より変革しやすい環境を作っていくべきです」(福原氏)

 データの消費や活用の対象となるのは、ミレニアル世代(2000年代に成人もしくは社会人を迎える世代)へと移行している。現在はこの世代を対象にしたサービスの創出や労働環境の整備も求められている。「2020年までに全労働力の半数をミレニアル世代が占めると目されています。前世代と大きく異なるのは、デジタルネイティブである点です。生まれながらにしてPCやスマートフォンを利用して育ってきており、消費においてもビジネスにおいても、デジタルの活用が当たり前の世代です。この世代を軸にしたビジネスをどう展開できるかが、これから取り組むべき課題になります。新しいサービスを生み出していくのもまた、ミレニアル世代になるでしょう」(インテル 執行役員常務 技術本部 本部長 土岐英秋氏)

 このような環境の中で、ITの活用に保守的な日本企業に対して福原氏は、「ITを取り入れなくても事業を継続できていた企業も、今後は積極的なトランスフォーメーションで海外の企業やサービスへの競争力を高めていかなければなりません」と進言する。

 インテルもまた変革を遂げてきた企業だ。メモリーからスタートしてCPU、そしてプラットフォームの提供へと遷移してきた同社は現在、データを事業の軸にすえたデータセントリックカンパニーになろうとしている。

「インテルは創業から4回目のトランスフォーメーションの時期を迎えています。当社も事業内容を変化させながら生き残ってきたのです。現在は、クラウドやIoTの進展で、データセンター側の処理が大きくなっています。合わせてエッジではさまざまな処理のベースとなるデータが生み出されていて、それらの適切な処理能力が求められているのです。実現するためには、エッジからデータセンター、そしてそれらをつなぐネットワークの全ての過程において、より効率的なデータ処理を実現するテクノロジーが必要です。当社は、データを中心にその処理をサポートする製品を、ユーザーの環境や予算に合わせた形で提供していけるように事業を進化させています」(土岐氏)

「市場の変化に合わせてインテルはポートフォリオも広げています。CPUやメモリーだけでなく、FPGAなどのアクセラレーター、システムの最適化のためのソフトウェア、他社との協業によるソリューションの提供など、エコシステム全体を意識した取り組みを進めているのです。アルテラの買収で提供が可能になったFPGAによって、CPUだけでは難しかった特化した分野を複数にわたってカバーできるようになりました。例えば通信インフラやAI系のシステムです。これからもさまざまな領域で応用していけるでしょう」(福原氏)

インテル 土岐英秋氏
インテル 福原由紀氏

記憶領域の階層を再定義

 新たな時代のデータセンターテクノロジーとしてインテルは、「より高速な移動」「より多くを保存」「あらゆるものを処理」という三つのキーワードのもとに、ネットワーク、メモリー、プロセッサーなどの開発に力を注いでいる。

 例えば、データ処理の起点となるメモリーやストレージのカテゴリーにおいて同社は、「メモリー/ストレージ階層の再定義」を進行させている。従来のDRAM、SSD、HDDという構造の中に「パーシステントメモリー(不揮発性メモリー:Non-Volatile Memory)」を加えて、より高速なデータ処理環境を構築しようとしているのだ。

「データの処理効率を向上させるという目的自体は従来から変わっていません。パーシステントメモリーは電源を切っても記憶内容を失わないメモリーでDRAMよりも低コストで導入できるため、DRAMとSSDやHDDの間を埋めるテクノロジーとなります。これによって、従来以上にデータの読み出し書き出しでボトルネックを生まないシステムが構築できるようになるのです」(土岐氏)

 パーシステントメモリーは、DRAMとSSDの中間程度のアクセス速度やレイテンシーの低さを実現し、DRAMと比較してコストパフォーマンスが高いのが特長だ。電源オフ時にDRAMのデータを別の場所に回避させるような処理が必要なくなる。デバイスの起動も高速化できる。こうした利点から、大きな期待を集めている。インテルでは3D XPointという技術を使ってパーシステントメモリーを実現させた。

 実際にインテルではメモリーとストレージの階層構造において、次のような製品群で再定義を実現しようとしている。

・ホットティアー
メモリー容量を改善する「インテル Optane DC Persistent Memory」

・ウォームティアー
SSDのパフォーマンスを改善する「インテル Optane SSD」
効率的なストレージとして「インテル 3D NAND SSD」

 インテル Optane SSDとインテル 3D NAND SSDは以前から出荷が開始されており、インテル Optane DC Persistent Memoryも今夏から徐々に出荷が開始されているという。

「メモリーの進化は、プラットフォーム内のトランザクションの高速化に寄与します。プラットフォームとデータセンター、もしくはデータセンター内におけるラック間やデータセンター間のデータ処理の高速化には、オムニパスやシリコンフォトニクスなどの新たなテクノロジーを適用していきます。さまざまな場面でデータの流れをどれだけスムーズにできるか。そこにインテルは挑戦しているのです」(土岐氏)

AIのために再設計されたXeon

 サーバー向けに提供されているインテル Xeonプロセッサーは、発売されてから今年で20周年目を迎えた。これまでに、2ソケットや仮想化への対応、暗号化、クラウド用のカスタム、データベース向けなどさまざまな進化を経てきた。最新のインテル Xeon スケーラブル・プロセッサーは、AI向けの設計が取り入れられているのが大きな特長だ。

「Haswellの世代と比較してインテル Xeon スケーラブル・プロセッサーは、推論の処理速度がソフトウェアの最適化で5.4倍に向上しています。さらに次の世代では、『インテル ディープラーニングブースト』という命令セットの強化によって処理速度が11倍に向上します」(土岐氏)
 AI開発のライフサイクルは、学習や推論などのフェーズに分けられるが、インテル Xeon スケーラブル・プロセッサーはもともと高速な推論処理に加えて、学習部分の処理速度も向上させている。

「インテル Xeon スケーラブル・プロセッサーでは、学習部分の処理速度においても実用的なレベルに達しています。これによって一つのシステムで学習と推論を高速に行えるようになるのです。つまり、汎用性が高いデータセンターの環境でAI開発が可能になります。学習部分に専用システムを利用すると推論部分を別のシステムで行わなければならず、汎用性が低くなってしまいますが、当社は技術の民主化を推進するためにも、汎用性が高いシステムでAI開発を行えるように取り組んでいるのです」(土岐氏)
 AI処理への最適化が着実に実行されているインテル Xeon スケーラブル・プロセッサーだが、今後のロードマップは次のように公開されている。

・Cascade Lake(開発コード名)
14nmプロセス技術がベース。インテル Optane DCパーシステントメモリーとインテルディープラーニングブーストを搭載する。組み込み型のAI向けアクセラレーターによって、ディープラーニングの推論ワークロードを高速化でき、2018年7月に発表された現世代のインテル Xeonスケーラブル・プロセッサーと比較して、画像認識を11倍も高速化できると見込んでいる。Cascade Lakeは年末までの出荷開始が目指されている。

・Cooper Lake(開発コード名)
14nmプロセス技術がベース。パフォーマンスの大幅な向上、新しいI/O機能、AI/ディープラーニングのトレーニングにおけるパフォーマンスを向上した新しいインテル ディープラーニングブースト、さらなるインテル Optane DCパーシステントメモリーの技術革新を備えた新世代のプラットフォームを採用する予定だ。2019年に出荷が開始される見込み。

・Ice Lake(開発コード名)
10nmプロセス技術がベース。Cooper Lakeと同じプラットフォームをベースに、早ければ2020年の出荷開始が計画されている。

 加えて同社はディープラーニング専用プロセッサーである「Nervana」も用意している。学習部分の処理速度をさらに高速化させたいというニーズに応える製品だという。

 インテルでは、AI開発に対してハードウェアだけでなくソフトウェアの側面からも、基盤やライブラリー、ツールキットの提供でサポートしていく。「AIの活用にはCPUだけでなく、GPUやFPGAなどさまざまなシリコンが使われます。その際、それぞれのコードを別々に用意しているのでは非常に手間がかかります。そこで当社では、『インテル nGraph コンパイラー』の提供で、一つのコードをそれぞれのシリコンで使えるようにしていきます」(土岐氏)

 エッジの部分では、「OpenVINO」というツールキットが用意された。これは、IoTにおけるAI利用を促進するツールで、エッジの推論処理を高速化させる。「OpenVINOは、インテルのCPUに統合されているGPUの有効活用を可能にします。IoTのエッジシステムにおいてGPUが使われていない場合に、データ処理をGPUにオフロードさせるような使い方ができるのです。ASICで行っていた処理をGPUに代行させられれば、ASICに割かれていたコストを低減させることも可能です。OpenVINOではAI用の推論エンジンが開発できるので、エッジ側での推論のアクセラレーションが実現します」(土岐氏)

「エッジコンピューティングなどでは、エッジ側とクラウド側でのワークロードが異なってきますが、そうした状況に合わせて各部分に最適なプロセッサーを提供していきます」(福原氏)

とがったクライアント向けCPU

 クライアント向けに提供しているCPUの領域では、デスクトップ向けの「第9世代 インテル Coreプロセッサー」の提供が開始されている。これはゲームユーザー向けに設計されたCPUだ。Core i9 プロセッサー(8 コア/16 スレッド)は、最大5GHz/16MBキャッシュ、はんだを使用したサーマルインターフェースマテリアルが採用されている。

「ヒートシンク部分へのはんだの活用によって、熱伝導性が向上し、放熱効果が高まります。パフォーマンスを長時間維持したいゲームユーザーにとって最適なCPUなのです」と土岐氏は解説する。

 クリエイター向けに設計されたのは、「インテル Xeon W-3175Xプロセッサー」だ。28コア/56スレッド、最大4.30 GHz、38.5MB のインテル スマートキャッシュに対応しており、高負荷用にスレッド化されたワークロード向けのプロセッサーとなる。「28コアのインテル Xeon W-3175Xプロセッサーは、スチール写真やビデオのエンコーディングといった、マルチコア処理の効果を得やすいクリエイター向けのプロセッサーです」(土岐氏)

 さらに、ハイエンド向けの「インテル Core X シリーズ」も用意されている。8~18コアまでの拡張性を備えており、インテル ターボ ブースト マックス テクノロジー3.0によってクロック周波数は最大4.50 GHz。はんだを使用したサーマルインターフェースマテリアルも採用されている。2,666MHzでの4チャネルDDR4メモリーをサポートしていて、インテル Optane SSDも利用できる。

「これら3種類のデスクトップ向けCPUは、汎用性ではなく特徴的な長所にこだわって開発された点が新しい部分です。従来までのCPUでは物足りなかったユーザーに対して、大きな訴求力を持つでしょう」(土岐氏)

 ノートPC向けCPUについては、「パフォーマンス」「バッテリー持続時間」「適応性に優れたフォームファクター」「5Gなどの接続性」に加えてAI機能の実装も視野に入っている。

「当社が提供する新たなプロセッサーやメモリーなどを活用すれば、より効率的な働き方が可能になります。古いサーバーやPCを利用しているユーザーに対しては、EOSのタイミングでもありますので、ぜひ、新しいサーバーやPCへの買い替えを促していただきたいですね」と福原氏はメッセージを送る。

「エッジからデータセンター、そしてそれらをつなぐネットワークの全ての過程において、より効率的な処理を実現するテクノロジーが必要になっているのです」

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