ホーム > PC-Webzineアーカイブ > メモリーを中心としたコンピューティングアーキテクチャに挑むHPE

メモリーを中心としたコンピューティングアーキテクチャに挑むHPE

メモリーを中心としたコンピューティングアーキテクチャに挑むHPE

2018年12月11日更新

メモリー主導型コンピューティング

INNOVATION4 HPE

日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)が新しいコンピューティングアーキテクチャの開発に取り組んでいる。新たな価値を生み始めている大量のデータを高速に扱うための、メモリーを中心とした次世代アーキテクチャだ。

メモリー中心のアーキテクチャ

「Data Is The New Currency」(データは新しい通貨だ)――。HPE CEOのAntonio Neri氏が同社イベント「Discover 2018 LasVegas」でこう表現したように、現在、データの価値には大きな変化が生じている。まさに通貨のような共通の価値としてそれらが流通し始めているのだ。新たな意味をまといつつあるデータをわれわれはどのように扱うべきなのか、もしくは、いかに処理すべきなのか。

「爆発的に増加し、これまでにない価値を創造し始めているデータに対して、プロセッサーの観点から処理能力を高めて対応しようというのがこれまでのアプローチでした。しかし、そもそもの中心はコンピュート能力ではなくデータに移行しています。これまでにもシステムの集中と分散の波が起こってきましたが、これからはデータの保存、処理、利用といった側面から、システムの構成が見直されるべきなのです」(HPE The Machineエバンジェリスト 三宅祐典氏)

 こうした視点で現在HPEが取り組んでいるのが、「メモリー主導型コンピューティング」(The Machine プロジェクト)だ。これまでのコンピューティングアーキテクチャはプロセッサーが中心だったが、今後はメモリーが中心になるとHPEは考えている。その鍵は不揮発性メモリーだ。「不揮発性のメモリーを広大に使えるようになれば、データを一元的に記憶させられ、そのデータを中心に、必要なCPUを選択したりするようなアーキテクチャが実現します」(三宅氏)

 実際、不揮発性メモリー(パーシステントメモリー)によってメモリーとストレージが統合され、各デバイスが光伝送で接続される将来像が描かれたメモリー主導型コンピューティングは、従来のコンピューティングアーキテクチャのさまざまな課題を解決できる。

 例えば、データの一元的な保存によって、従来までの階層化というアプローチが不要になる。データの移動と記憶に費やされていた処理や電力も大幅に削減できるのだ。また、それらの処理を担わされていたCPUは、計算処理に特化させられるようになる。自ずと処理能力の向上が期待できる。銅線によるデータ伝送は光に変わるため、費やされていた電力や距離の問題の緩和も可能だ。

「ソフトウェアについては、今までは従来のアーキテクチャ(遅いデバイス)を前提に開発されているので、新しく開発する必要があります。プロセッサーに計算だけをさせるアプローチなどが可能になるのです」(三宅氏)

(左)HPE 三宅祐典氏(右)同社 日野 創氏

「爆発的に増加し、これまでにない価値を創造し始めているデータを中心としたコンピューティングアーキテクチャとしてメモリー主導型が求められているのです」

将来的にはSCMに

 不揮発性メモリーはDRAMとSSD/HDDの間を埋めるデバイスで、メモリーのスピードとストレージの永続性を併せ持つが、HPEではすでに「HPE Persistent Memory」として「HPE NVDIMMメモリ」を提供している。

「現状では不揮発性メモリーに対する扱いが確立されているわけではないので、非常に速いディスクとしての用途がメインになっています。しかし、一部のアプリケーションでは対応が実現しています。例えば、Windows Server 2016ではNVDIMM-Nがサポートされています。ブロックアクセス時には低レイテンシーのディスクとして認識し、Directアクセス時には、アプリケーション(SQL Server 2016)にLoad/Store命令を使って直接NVDIMM-Nにアクセスさせることが可能です。Directアクセスによって、DRAM並みの性能が発揮できるのです」(三宅氏)

 もちろん不揮発性メモリーを最大限に引き出すためにはソフトウェア側の対応が欠かせない。従来のアプリケーションを利用した場合には無駄なバッファーが発生して遅延が出てしまうが、それらをなくすことで4~5倍の高速化が見込めるというのだ。

 さらに、新しい素子を利用した次世代の不揮発性メモリーは、SCM(ストレージクラスメモリー)とも呼ばれており、今後はこのSCMの活用が徐々に広がっていくと考えられている。現状のDRAM、SSD/HDDという構成の中間にSCMが配置され、その利用比率が高まっていくというのだ。開発中のSCMとしては、「PCM(Phase Change Memory)」「ReRAM(Resistive RAM)」「MRAM(Magnetoresistive RAM)」などがあり、インテルの3D XPointもその一つだという。

 SCMを中心にしたメモリー主導型コンピューティングを実現させるために、プロセッサーとメモリーをつなぐ新たなデータアクセス規格の策定も進められている。それが「Gen-Z」だ。SCMをメモリーとして扱えるようにするGen-Zは、HPEをはじめ、AMDやDell EMCなど60以上の企業・団体が参加する「Gen-Zコンソーシアム」によって仕様が策定されている。すでに今年の2月にGen-Zコア仕様1.0が公表された。Gen-Zの特長は、数100GB/sの広帯域/低遅延、広大なメモリー空間(4,096ヨタバイト)、オープンな標準規格による高い互換性にある。

「新たなプロトコルであるGen-Zは、一つのメモリーを全てのデバイスからローカルのメモリーと同じようにアクセスできるようにします。メモリー主導型コンピューティングのアーキテクチャに欠かせない要素と言えるでしょう」(三宅氏)

まずはインメモリーから

 メモリー主導型コンピューティングのプロトタイプはすでにHPEで開発されている。160TBの単一メモリーを搭載したコンピューターで、2017年5月に発表された。メモリー主導型コンピューティングの試みとしては、ドイツ神経変性疾患センターとの協業で、アルツハイマーの研究が実施されている。従来システムと比較してデータの処理速度を100倍程に高速化できているという。また、米エネルギー省では、計算能力の大幅な向上と消費電力の削減を実現できる次世代のスーパーコンピューターとして、メモリー主導型コンピューティングの導入が検討されている。

 このような取り組みが進められている中で、メモリー主導型コンピューティングへの橋渡し的な存在としてHPEでは、インメモリーコンピューティング用サーバー「HPE Superdome Flex」を提供する。モジュラー構造で最大32ソケット、最大48TBのメモリーを搭載できるHPE Superdome Flexは、既存のインメモリーデータベースにおいて最大限のパフォーマンスを発揮すると期待されている。

「現在はSAP HANAやMicrosoft SQL Serverの基盤としての活用が進んでいます。これまでは基幹系と分析系でシステムが二つに分かれている状況がありましたが、データの移動が発生するためにリアルタイムの分析には適していません。SAP HANAとHPE Superdome Flexでは、基幹系と分析系のシステムを一つに統合した環境が構築できるのです。もちろん複数のシステムを統合する場合には、拡張性や可用性、信頼性が不可欠ですが、それらを備えているのがHPE Superdome Flexです」(HPE ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 カテゴリーマネージャー 日野 創氏)

 これまではデータをいかに小さくして保存・利用できるかが課題だった。しかし、新しい通貨として見なされるようになったデータは、生データの状態でこそ価値があると捉えられるようになってきた。こうした状況では、データは効率よくためておき、いつでも高速にそれらのデータを扱える基盤作りが重要だ。このデータ中心の世界において、HPEが取り組むメモリー主導型コンピューティングは新たな時代を開拓していきそうだ。

キーワードから記事を探す