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川崎附属中学校が実践するBYODによるICT教育

川崎附属中学校が実践するBYODによるICT教育

2018年12月26日更新

公立の中高一貫校が実践する
生徒の自主性に任せたBYOD運用

生徒1人につき1台のタブレットやPCを導入する学校が増加しつつある。しかし、その多くは私立の学校だ。そうした中、川崎市の公立中高一貫校がBYODで1人1台のタブレット環境を実現している。その教育方針と取り組みを取材した。

タイピングスキルを重視し2in1端末を選定

 川崎市立川崎高等学校附属中学校(以下、川崎附属中学校)は、神奈川県川崎市において初となる公立の中高一貫校だ。同校の校長を務める和泉田政徳氏は次のように語る。「本校は、母体校である川崎高等学校の教育目標『こころ豊かな人になろう』を継承し、人権感覚豊かでたくましい人材の育成を目指して2014年度に誕生しました。社会で活躍する人材を育てるために『体験・探求』『ICT活用』『英語・国際理解』という三つのキーワードを軸とした学びに取り組んでいます。ICT活用については、開校と同時に入学した1年生120人に2in1のWindowsタブレットを購入してもらい、BYODでの1人1台環境の構築をスタートしました」

 現在では高等学校2年生までタブレットを所持し、日常的にICT機器を活用した教育を実践している川崎附属中学校。導入しているのは富士通が提供しているARROWS Tabの文教モデル(Windows 8.1バージョン)だ。キーボードが付属した2in1端末を選定した背景にはキーボードの重要性がある。和泉田氏は「音声による文字入力の精度も上がっていますが、社会に出たあとのことを考えると、キーボードによる文字入力のスキルは非常に重要になると考えました」と話す。

 端末の管理は生徒の自主性に任せており、現在の所MDMツールなどは導入していない。「ICTは学びだけでなくさまざまな用途に活用されるべきだと考えており、最低限の規則を作りそのルールに則った運用をするように指導しています。校内のネットワークにはフィルタリングをかけているため、不要なWebサイトへのアクセスはできないようになっています」と和泉田氏。そのほかのICT環境として、無線LAN環境の整備はもちろん、教室ごとにプロジェクタータイプの電子黒板を導入して授業に生かしている。

試験的に導入しているデジタル教科書のマインドマップを使って、竹取物語の人物や物語の流れを整理している。
2in1タイプのWindowsタブレットを導入しているため、タブレットスタイルでも利用可能だ。

eラーニングコンテンツを朝学習に利用

 タブレットを活用した授業については「ほぼ全ての教科で活用しています」と和泉田氏は説明する。メインのICT教材として利用しているのはジェイアール四国コミュニケーションウェアが提供する「コラボノート」で、課題の提出から授業での発表まで、さまざまな教育シーンで利用しているという。

 しかし、入学当時からコラボノートを利用した発表活動をするわけではない。中学校1年生が入学した当初は、紙をベースに発表内容をアウトプットし、その後、模造紙にまとめるという活動をしている。何がテーマなのか、何と伝えたいのか、を考える力を身に付けさせ、その後コラボノートを活用した発表に移行させるのだという。

 通常の授業以外に、同校では朝のホームルームの前に「eラーニング」という時間を15分設けている。この時間帯はラインズが提供するeラーニング教材「ラインズeライブラリアドバンス」を利用し、9教科の中から生徒が好きな教科や単元を選択して自主学習を行っている。もちろん学ぶ内容が偏らないよう、教員が課題を設定して生徒の学力向上を支援している。また週に2回、ICTスキル教育を実施し、キーボードやPCの操作に不慣れな生徒のICTスキルの向上を図っている。

 生徒総会でもタブレットは活用されている。それぞれの委員会が年間活動の報告と予算を発表する際、予算書は紙ではなくタブレットに配信されるのだ。生徒たちはタブレットを確認しながら、それぞれの委員会の予算が正しく使われたものなのかなどを考え、総会に臨んでいる。

データを根拠とした発表を国語に生かす

 コラボノートを活用した発表活動や、前述した生徒総会など、人前に立って発表する機会が多いため、生徒たちは意見を言うことに物怖じしない。「授業参観に来た保護者からも『すごいですね』と驚きの声をもらいます」と和泉田氏は話す。この積極性の背景には、やはりタブレットの存在がある。紙に書いた内容を読み上げるだけの発表よりも、PowerPointの資料などビジュアル的に説明できるコンテンツがあった方が伝わりやすく、発表する側も話しやすいのだ。また、発表する際にはExcelなどを活用し、データに裏付けられた意見を心がけるように指導しているという。

「このデータを根拠にした発表の仕方は国語に生かされます。国語では物語文や論説文を読んで筆者の考えを導く問いが出題されますが、解答するためには本文を参照して根拠となる文章を導かなくてはなりません。現在中学校1年生に試験的に導入されているデジタル教科書には、そういった根拠を導くためのツールが搭載されており、有効に活用されています」(和泉田氏)

 プログラミング教育を交えたカリキュラムマネジメントにも取り組んでいる。「中高一貫校のメリットは、6年間かけて発達段階に合わせながら学びを深めていけることです。現在中学校1年生で『レゴ マインドストーム EV3』を導入してプログラミング教育を行っていますが、プログラミング的思考で伸びる課題解決能力は、学年ごとに段階を踏んで育んでいく必要あります。まずは1年生からスタートし、各教科への取り入れも検討しながら、発達段階ごとの学びに生かしていきたいですね」と和泉田氏は今後の展望を語った。

7月に実施された企業体験学習の様子。同じく川崎に本社を構えるデルにて、VR体験やSkypeによる英語体験を行った。

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