
AI、ハイブリッドクラウド、DXなどに向けたMSの最新技術とサービスを紹介
デジタルトランスフォーメーションは
三つのステップで取り組みを成功させる
マイクロソフト エンタープライズ 最高技術責任者(CTO) ノーム・ジュダ氏はデジタルトランスフォーメーションとAIについて講演した。ジュダ氏はデジタルトランスフォーメーションへの取り組みには三つのステップがあると説明した。そしてアナログの情報をデジタル化する「コンテンツのデジタル化」、次にプロセスのデジタル化による「プロセスの自動化」、そしてプロセスの自動化による「新しいビジネスモデルの創造」を挙げた。
業務の起点をデジタル化する
デジタルトランスフォーメーションへの取り組みの実例について、あいおいニッセイ同和損害保険の事例をビデオで紹介した。例えば自動車は自動運転へと進化しつつあり損害保険の対象が変化しており、自社もその変化に対応していかなければビジネスを進められなくなる。
そして現在は多くの業務が紙を起点とした設計になっていると指摘。各拠点の情報を紙で記録して文書を作り、物流を使って本社に送って承認を得るという流れだ。そのため人手と時間がかかる上に、プロセス全体のどこにもテクノロジーが活用できない。つまり業務が紙から始まっていることが原因だ。
そこで業務の起点をデジタル化する。そうすればその後のプロセスもデジタル化できるというわけだ。さらにプロセスのあらゆる部分でロボットなどのさまざまなテクノロジーも活用でき、効率化、自動化できるようになる。
同社の業務のデジタル化に活用されているのがDynamics 365である。Dynamics 365で業務の起点をデジタル化した結果、半年間に取り組んだ内容で4万時間の効率化・削減効果が見込めるという。Dynamics 365の機能はSFAやCRMだが、Office 365と連携させることで一般事務にも活用できる。同社はDynamics 365とOffice 365を連携させた基盤で業務を行うことでデジタルトランスフォーメーションを推進していく。
AIの活用は自然に取り込まれる
ジュダ氏はデジタルトランスフォーメーションを推進すれば、自然とAIの活用が取り込まれていくと説明する。デジタルトランスフォーメーションとAIは絡み合っており、どちらか一方が起点ではなく両面が起点となるという。
デジタルトランスフォーメーションにおいてAIを活用する際は、必ず人間が関わりAIがやるべきことは人間が決め、人間がやるべきことをきちんと理解して活用する「責任あるAIの活用」が必要だ。
そうした上でAIの活用について「サービス」「アジャイル」「成熟度」「倫理」という四つのポイントをアドバイスした。まずサービスについてテクノロジーの進化は早く人より先に進んでおり、活用する能力が追い付いていないことを指摘。例えば免許証は身分証明書としていろいろな場面で使われているが、盗まれて偽造されるリスクがある。しかも免許証による身分証明は手間がかかり不便でもある。また利便性が悪いとサインアッププロセスを断念する割合が45%だとする調査結果もあるという。
しかしこうした問題は最新テクノロジーを活用すれば解決可能だ。マイクロソフトではAI搭載の顔認証ATMを試作して展示会に出展した。このATMを使えば顔認証と暗証番号で現金を引き出せる。顔認証の際は顔の形状のベクトルを認識するため写真は撮らない。しかもモデルをAIがトレーニングしたら元データを破棄する仕組みのためプライバシーも侵害しない。
オープンデータと成熟度の重要性
このATMはアジャイル開発によってわずか2カ月で開発した。アジャイル開発ではいろいろな仮説を俊敏に試せて反映させられる。ただしAIを効果的に活用するには仮説や目的が必要であり、テクノロジーやデータだけでは効果的に活用ができない。
例えばPOSデータだけでは買ったものは分かるが、何を買わなかったのか、なぜ買わなかったのかが分からない。それはデータが単一だからだ。そこでスーパーマーケットの事例ではカメラを使って陳列棚の商品の前に立っている人をAIが認識して、人物に応じて広告を動的に変化させる。また複数のデータを組み合わせることで仮説を立てられ、より効果的な広告が提示できるようになる。
データについては自分で用意することもできるが、他社のデータも使えればより精度の高い取り組みが実現できる。だからこそオープンデータが重要となる。マイクロソフトではオープンデータの推進にも力を入れている。
AIの活用には自社の成熟度を見極めることも必要だ。成熟度を超えたソリューションを導入すると失敗するからだ。倫理も重要だ。失敗するとブランドをわずかな時間で毀損してしまう。だから責任あるAIの活用が求められているのだ。AIの活用には必ず人の創造性を高める目的で、人の意思決定を入れることだ。
ハイブリッドクラウドへの注力と
サービス基盤の安全性をアピール
日本マイクロソフト 執行役員 常務デジタルトランスフォーメーション事業本部長 伊藤かつら氏はデジタルトランスフォーメーションを推進するマイクロソフトのテクノロジーやサービスを詳しく紹介した。
サイバー攻撃者に負けている
まずマイクロソフト コーポーレートバイスプレジデント セキュリティ ロブ・レファーツ氏が説明した。レファーツ氏は「毎分100万ドルがサイバー攻撃によって失われている。我々はサイバー攻撃者との戦いに負けている。攻撃者は毎日攻撃を洗練化しており、今までと同じ戦略では勝てない」と話を切り出した。
さらに毎月5万社以上の企業が攻撃されており、発見されるマルウェアの96%は未知のもので、攻撃者がネットワークに侵入するまでにかかる時間は48時間以下だとするデータを示した。しかし新たな脅威が次々と現れ、ネットワークに接続されるデバイスの増加により攻撃対象も増加、しかし人材は不足している。
マイクロソフトではクラウドに数多くの機能を実装してさまざまなサービスを提供している。それはセキュリティが確保されているからできることだ。世界規模で展開しているマイクロソフトのクラウド基盤は地球で最もセキュアだとレファーツ氏は胸を張る。
100カ所以上にあるデータセンターは優秀な人材が機械学習を活用して防御している。実際に世界中で大きな被害を出した未知のマルウェア「Emotet」を感染者が出る前に数ミリ秒で隔離した。また発見が非常に困難なマルウェア「Ursnif」も特定した。フィッシングメールについてはユーザーの受信箱に入る前に1億以上のフィッシングメールの受信をMicrosoft 365で防いでいる。
セキュリティと生産性の両立
社員はセキュリティに注意を払わなければならないが、一方で仕事もしなければならない。そのため禁止されているUSBメモリーを使ったり、パブリックのクラウドストレージを使ったりするなどルールを破ってしまうケースもある。セキュリティを意識せずセキュアに仕事をする方法が必要だ。
リスクの一例としてパスワードがある。パスワードは盗まれたり流出したりすると被害に直結する。またユーザーがパスワードを入力したり管理したりするのは面倒で不便だ。だからパスワードの使用を終わりにすべきだ。
レファーツ氏はデモンストレーションを交えて、これからの認証の一例を紹介した。それはPCとスマートフォンを連携して、スマートフォンの指紋認証でログインする仕組みだ。さまざまなクラウドサービスを利用していてもシングルサインオンでスムーズにアクセスできる。
マイクロソフトでは「Secure Score」というサービスを提供している。これは仮想マシンの設定、認証の設定などセキュリティに関する要素を可視化して問題点を把握できるようにするものだ。レファーツ氏はスコアを改善することで30倍以上の安全性が確保できるとアピールした。
再び伊藤氏が登壇し「日本の企業ではオンプレミスとクラウドをまとめて管理したいという要望が強い」と話し、ハイブリッドクラウドの必要性を説いた。そしてオンプレミスでもAzureでも利用でき、しかもそれぞれが連携できるさまざまな機能を紹介し、マイクロソフトが提供するハイブリッドクラウドはクラウドの技術革新をオンプレミスでも利用できる利点があるとアピールする。
次々と生み出されるマイクロソフトの新サービス
マイクロソフトの新しいサービスも数多く紹介された。まず「Windows Virtual Desktop」だ。VDIは導入コストがかかり設定に手間もかかるが、Windows Virtual DesktopならばAzureでシンプルに利用できる。
日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター サイバークライムセンター センター長 澤 円氏が登壇しWindows Virtual Desktopのデモンストレーションを披露した。そして「Azure上にあるサービスなので期間限定でも使える。大きなコスト削減効果が期待できる」とアピールした。
続いて「Windows Server 2019」が紹介された。Windows Server 2019はAzure連携機能があらかじめ実装されており、面倒な設定をしなくてもクラウドと連携したハイブリッド環境を簡単に構築できる。
プレビューを実施している最中の「SQL Server 2019」も紹介された。SQL Server 2019は世界で最も高速でセキュア、インテリジェントなデータベースであり、WindowsだけではなくLinuxやDockerにも実装できる。すでに提供している「Azure SQL Database Managed Instance」を使えばオンプレミスで稼働しているSQL Serverのデータベースアプリケーションをそのままクラウド上に実装でき、データベースの保有コストを大幅に削減できるとアピールする。
最後に日本マイクロソフト 業務執行役員 コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部長 ドリュー・ロビンス氏が登壇し、「Azure Data Explorer」をデモンストレーションを交えて紹介した。
IoTソリューションには大量のデータを素早く分析することが求められるが、Azure Data Explorerはそのツールとなると紹介した。実はAzure Data Explorerはマイクロソフトの社内でAzureのために使われてきた機能だ。毎日20ペタバイトのログファイルを分析、検索して次のアクションにつなげており、10億レコードを1秒以内に検索することが可能だとアピールした。
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