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スマートシティ化で子育て世代に選ばれるまちに、兵庫県加古川市の取り組み

スマートシティ化で子育て世代に選ばれるまちに、兵庫県加古川市の取り組み

2018年11月28日更新

「子育て世代に選ばれるまち」づくりに向けて
~安全・安心を実現する加古川市のスマートシティプロジェクト~

兵庫県加古川市で、「子育て世代に選ばれるまち」の実現に向けて、ITを活用した事業が進められている。まちの安全・安心の実現に「見守りカメラ・見守りサービス」事業が昨年スタート。今年から、総務省のスマートシティ推進事業の一環として複数分野のデータ収集・分析を行うプラットフォーム整備、市保有データの可視化、共有化の取り組みが進んでいる。プロジェクトの背景、課題を聞いた。
Text by 小俣慎吾 Shingo Komata

安全・安心で「子育て世代に選ばれるまち」に

 加古川市で「子育て世代に選ばれるまち」づくりが始まったきっかけを、企画部情報政策課 情報政策係長の水野あすか氏は次のように説明する。

「加古川市の人口は約26万人です。当市では岡田市長の2期目が始まったばかりですが、市民アンケートや、タウンミーティングなどで積極的に市民の意見を聞くようにしています。市民からは、安全なまちにしてほしい、安心して暮らせるまちにしてほしいという意見が強く、少子高齢化の問題にアプローチしていくためには、安全・安心なまちにするのが一番ではないかと考えました。そこで、『子育て世代に選ばれるまち』をキャッチフレーズに、地方創生に関する大きな四つの柱を立てたのです」

 加古川市の地方創生総合戦略の基本的な視点は次の通り。

・結婚、出産、子育ての希望をかなえる
・暮らしの安全、安心を守るとともに、地域と地域が連携する
・地域への人の流れをつくる
・安定した雇用を創造する

 播磨地域の市町とも連携し、広域的な視点を持ちつつ加古川市ならではの地方創生の取り組みを進めていくとしている。

 この総合戦略の目標の中から具体的な取り組みとして出てきたのが「見守りカメラ・見守りサービス」だった。スタートしたのは2017年度。生活安全課が「子育て世代に選ばれるまち」の先行事業として推進してきた。

 見守りカメラとは、小学校の通学路や学校周辺にネットワークを設置し、通学時や外出時の子どもの安全を確保することで、安心して子育てができるまちを目指すというもの。

 2017年度は通学路や学校周辺を中心に約900台の見守りカメラを設置。2018年度は公園や駐輪場周辺、主要道路の交差点などを中心に約600台の設置を進めている。見守りカメラに「ビーコンタグ(BLEタグ)検知器」を内蔵することで、子どもや、認知症のために行方不明となる恐れのある人の位置情報履歴を保護者や家族に知らせることもできる。見守りカメラの設置場所は随時更新し、「かこナビ」で確認できるようになっている。なお、肖像権やプライバシーへの配慮から、玄関や窓、ベランダなどにはプライバシーマスクを適用し、特定の部分を黒く塗りつぶして撮影しないことにしている。

見守りカメラ・サービス……9割以上が「必要」

 見守りカメラや見守りサービスに、市民はどのような感想を持っているのだろうか。

 事業に先立って「市民アンケート」(2016年6月~7月)や「市長と語るオープンミーティング」(2016年6月)が開催された。「広報かこがわ」やホームページで行われたアンケートでは、862名から回答をもらい、850名(98.6%)から見守りカメラや見守りサービスは「必要・どちらかと言えば必要」との回答を得た。「オープンミーティング」は市内12の会場で開催。617名が参加し、523名中519名(99.2%)から見守りカメラや見守りサービスは「必要・どちらかと言えば必要」との回答をもらった。

 9割以上の市民が評価しているとはいえ、実際にカメラの設置が始まると「1本向こうの電柱にしてもらえないか」とか、「家の前に設置しないでほしい」といった意見も出たという。「決して監視しているわけではなく、見守りのためのシステムなのですが、市民の中にはそのような生の声もあるようです。ただ、犯罪の抑止につながるという期待の声は大きいと聞いています」(水野氏)

 加古川市の安全・安心への取り組みは、市民への周知が進んでいるという。アプリも多くの市民にダウンロードしてもらっている。ただ、認知症の高齢者が市外のさまざまな場所で見つかったという事例もある。利用者が加古川市内にいる場合はシステムは効果的だが、隣接する明石市や高砂市などに出かけた場合、不都合が生じるおそれもある。

「同じような仕組みが、近隣の自治体にも取り入れられ、広がっていけばいいのですが」と水野氏は語る。

スマートシティプロジェクトもスタート

 見守りカメラ・見守りサービスに続き、先行事業を補足、推進する形で今年からスタートしたのが「都市の安全・安心を実現するスマートシティプロジェクト」だ。主な目的は次の二つ。

■安全・安心分野での先行事業の拡張
 市のスマートフォン向け公式アプリ「かこがわアプリ」の見守りタグ検知機能、郵便車両に搭載したIoT機器を活用し、よりきめ細かい見守りサービスを導入する。

■それ以外の分野にも取り組みを拡大する(総務省のH29年度データ活用型スマートシティ推進事業に選定)
 複数分野のデータを収集し分析などを行うプラットフォームを整備し、行政情報ダッシュボードを公開して市保有データの可視化・共有化を実現。有識者や民間事業者、見守り活動を行う市民ボランティアが参画できる取組体制を構築していく。

 こうした事業には、民間企業が共同で取り組んでいるのが特徴といえる。各社の役割は次のようになっている。

日建設計総合研究所
  代表企業として事業の全体統括を行う。

日建設計シビル
 安全・安心分野(防災、環境など)におけるシミュレーション解析やシステムデザイン・構築、都市・地域開発にかかわる豊富な知見をもとに、プラットフォームと個別アプリなどを有機的に連携させる全体システムデザインの検討・調整を行う。

NEC
 加古川市が保有する防災関連施設や人口統計など各分野のオープンデータに加えて、かこバスの位置情報などのデータを蓄積し分析することで、ダッシュボードやバスロケーションステムなど地域課題解決に向けた新たなサービスを推進。

フューチャーリンクネットワーク
 安全・安心なまちづくりによる地域活性化の観点から、「かこがわアプリ」と行政情報ダッシュボードを構築する。
「かこがわアプリ」……ユーザー登録された居住地域および現在地に応じて、緊急時の市からの重要なお知らせ、複数の見守りサービス事業者の見守りタグ(BLEタグ)の信号を受信できる。
「行政情報ダッシュボード」……プラットフォーム上に蓄積した「安全・安心をはじめとする複数分野のデータ」を地図上で重ねて閲覧できるWebシステム。

システムリサーチ
  市民の声受付サービス「スマイルメールシステム」を開始。

綜合警備保障
 従来からの先行事業で見守りカメラ・見守りサービス検知器を市内1,500カ所に整備。稼働・運用を進めている。さらに、市内の郵便車両176台にIoT機器を搭載。移動式システムで都市インフラとしての新たな価値を創出する。

 水野氏は今後の展望について、次のように話す。「安全・安心を実現する事業とはいえ、個人情報の問題も絡むので、データの扱いには慎重です。現在はデータを蓄積して分析するプラットフォーム構築の段階です。総務省の補助金の範囲で、データを利活用するためのミドルウェアの構築を進めています。基盤づくりが進めば『加古川方式』が後続の自治体に安価に提供でき、応用されるシステムになるかもしれません。そういう仕組み作りを進めていきたいですね」

 最近、見守りカメラ(いわゆる監視カメラ)がきっかけで犯罪の解決に至った事例が多く見られるし、さまざまなIT機器を活用した見守りサービス(災害対策も含む)も全国の自治体で進められている。加古川市の取り組みが全国のスマートシティ構築に応用されるようになってほしいものだ。

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