ホーム > PC-Webzineアーカイブ > 既存の通信方式の課題を解決するLPWAとは

既存の通信方式の課題を解決するLPWAとは

既存の通信方式の課題を解決するLPWAとは

2018年11月13日更新

Special Feature 2
LPWAでもっとつながるIoT

身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)。物流や交通、農業や工場などさまざまな現場での活用事例が増えてきている技術だが、既存のIoTで用いられてきた通信方式には、ネットワークの範囲や消費電力などに課題があった。そうした課題を解消できる通信方式として、現在LPWA(Low Power Wide Area)に注目が集まっている。

IoT向け無線伝送方式の最新動向

IoT Trend

広域通信を実現するLPWA

 LPWA(Low Power Wide Area)とは、消費電力を抑えながら遠距離通信を実現する無線通信方式を指す。IoTの既存の通信技術としてよく知られているのは、Bluetooth方式、ZigBee方式、Wi-Fi方式、5G/LTE/3G方式などがある。例えばWi-Fiの転送速度は最大54Mbps(IEEE802.11a/11gの場合)と高速な通信が可能だ。しかし、通信距離は100~300m程度と近距離から中距離向けとなる。Bluetooth方式の転送速度は最大24Mbpsで通信距離は10~100m程度だ。近距離かつWi-Fi方式よりも軽量なデータのやりとりに適している。ZigBee方式は通信速度が250kbpsと前述した二つの方式よりも遅い通信方式だが、消費電力が低いという利点がある。またメッシュネットワークを利用すればネットワーク環境を拡大しやすいが、一つの中継器でカバーできる範囲が限られているため、山林や河川の監視といった広範囲のIoT環境構築には向かない。5G/LTE/3G方式は携帯電話のネットワークを利用するため、広域をカバーできるが、通信料金や通信モジュールのコストが大きいというデメリットがある。

 LPWAは、前述した既存の通信方式で生じていた通信範囲とコストの課題を解決できる通信方式だ。消費電力も非常に低く、ボタン電池程度の電源供給で数年間稼働する。1台のゲートウェイで半径数km以上の広域無線通信が可能だが、通信速度は最大で数十kbpsだ。

オープンなLoRaと1社独占のSigfox

 国内で用いられるLPWA方式の通信規格について、情報通信ネットワークにかかわる日本国内標準を作成している情報通信技術委員会が「IoTエリアネットワーク向け伝送技術の概説」においてとりまとめている。

「本技術レポートは、第1版を2017年3月7日に、第2版を2018年3月15日に発行しています。第2版では、特にLPWAN(アンライセンスバンド)やNB-IoTの説明を追記しました。LPWAは2010年ごろに登場しましたが、注目されるようになったのは2015年あたりからです。2017年時点では、海外に比べて国内の実績は少なく、技術レポート内では日本国内で試験している方式を中心に紹介しました」(同 IoTエリアネットワーク専門委員会 副委員長 高呂賢治氏)

 LPWAの種類は、情報通信技術委員会の技術レポート内でLPWANと記載されている免許不要帯域であるアンライセンスバンドと、通信キャリアの無線方式でライセンスが必要なライセンスバンドの2種類に大別できる。特に注目されているのが、LPWAN(アンライセンスバンド)の「LoRa」と「Sigfox」、携帯電話ネットワーク(ライセンスバンド)を用いた「NB-IoT」だ。

 情報通信技術委員会 担当部長(標準化) 谷口康一氏は、「同じアンライセンスバンドであるLoRaとSigfoxはよく比較されています。LPWANの通信方式は、フォーラムの会員によるサポートで運営する方式と、企業が運営する方式の二つがあり、Sigfoxは企業が運営する方式です。またSigfox通信サービスは1国につき1社が提供するように取り決められており、日本ではSigfoxネットワークオペレーターとして京セラコミュニケーションシステムが国内のSigfoxネットワークを提供しています」と語る。

 Sigfoxの通信速度は100bpsと遅いが、通信範囲は都市部で約5km(最大約15km)、郊外では約15km(最大50km)とLPWANの中でも広域をカバーする。国内ではコインパーキング向け車両検知システムや、厨房の温度監視システム、厨房機器の状況監視、水道メーターの自動検針システム、児童や高齢者の見守りシステムなどで用いられた事例がある。

 一方のLoRaはオープンスタンダードとして提案されており、LoRaチップと通信モジュールを開発製造しているICメーカーSemtechとIBMが設立したLoRa Allianceが普及推進に取り組んでいる。LoRaという規格名は、「長距離」を意味する英語“Long Range”からつけられている。

 また、LoRaを用いた通信プロトコル「LoRaWAN」は多くの国々で通信キャリアが中心となって展開している。LoRaWANは免許不要の920MHzのサブGHz帯域を使い、ネットワーク構成や通信範囲は携帯回線とほぼ同じ都市部数km、見通し15kmに対応している。最大通信速度は250kbpsで、双方向通信も可能だ。国内では圃場環境モニタリングとデータ収集システムや、農地の水管理システム、空調遠隔監視、河川などの水位モニター、大気環境のモニタリングなどに用いられた事例がある。

「LPWANの通信方式は大きなデータ転送に対応できないため、特にインフラのモニタリングや橋梁の監視、水位モニタリングなど、少ないデータを長期間発信できるセンサーが求められる現場に需要があります」と高呂氏。半面監視カメラの映像データのような、大容量の映像を転送するには適していない。「例えばカメラで何か起きたときにアラームを飛ばすといったような、エッジ側でデータを処理して必要なデータのみをLPWANで送信する仕組みであれば運用できるでしょう」(高呂氏)

“LPWAの活用は実証実験段階。 キラーアプリの出現が普及を後押し”

情報通信技術委員会 担当部長(標準化)谷口康一 氏
情報通信技術委員会 IoTエリアネットワーク専門委員会 副委員長 高呂賢治 氏

注目度は高いが本格運用例は少ない

 ライセンスバンドであるNB-IoTにはどのような特長があるのだろうか。現在は既存の携帯電話ネットワークを使ったIoT通信デバイス向け通信規格である「LTE版LPWA」の標準規格が進められており、NB-IoTもその一つだ。NB-IoTは帯域幅を200kHz以下まで絞り込み、通信速度も下り25kbps、上り60kbps程度と低速に抑えたことで、低コスト化、長距離対応化、低消費電力化を図っている。スマートメーターなど、伝送速度やモビリティへの対応が必要ないIoTサービスでの利用が想定されており、国内ではスマートパーキングやスマートファクトリーソリューションなどの活用事例が存在する。

 しかし、IoT市場全体でみると、注目度は高いものの、LPWAを活用したシステムはほぼ実証実験段階であり、本格的な導入に至ったケースは少ない。その背景の一つとして、LPWAのメリットである低消費電力の有効性が裏付けできていない点が挙げられる。具体的には、電池だけで数年稼働するといわれているLPWAだが、実際にどれだけの期間センサーが稼働したのか、という証明がまだできていないため、投資が進まないのだ。

「本格的にIoTシステムで使用されるためには、“ガス検針なら絶対に使える”といった、この通信方式でなければ実現できないキラーアプリが必要ですね」と谷口氏は指摘した。

 続きを読む  ビジネスチャンスが見込まれるLoRa方式

キーワードから記事を探す