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 ウェアラブルセンサーとAIで組織を活性化させる施策を提案する日立製作所

ウェアラブルセンサーとAIで組織を活性化させる施策を提案する日立製作所

2018年11月08日更新

キーワードは組織のハピネス度

ウェアラブルセンサーとAIが
社員のつながりを可視化

 働き方改革で重要なのは、社員の満足度。社員のストレスを低減させて、労働の中での幸福感を向上させる。それが、組織の活性化につながり、ひいては業績の向上に結びつく。このような視点から、オフィスワーカー向けの「Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービス」を提供しているのが日立製作所だ。ウェアラブルセンサーを利用して社員の行動データを収集し、日立製作所のAI「Hitachi AI Technology/H」を利用した分析によって組織を活性化させる施策を提案する。

 組織の活性化の指標となるのは「組織活性度」だ。日立製作所では「組織のハピネス度」とも表現しているが、これは、人と人との間で好循環が回り生き生きと働ける「元気な職場」の度合いとなる。元気のない組織は組織活性度が低く、生き生きした組織は組織活性度が高い。日立製作所は、名札型のウェアラブルセンサーを利用した3,000人以上の人間行動データの分析から、組織活性度の定量化を実現させた。

 導き出したのは、「人は動き続けるほど、止まらなくなる」という事実だ。動き続けている時間が長く、頻度が多いほど活性化しているというのだ。「活性度が高い組織は、社員が動き続けていると言えます」(日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 営業統括本部 吉田章宏氏)

 その指標の有効性は、7社、10組織、468人、5,000人日、50億点の計測から検証された。実際に、コールセンターの社員215人にウェアラブルセンサーを29日間装着させたところ、受注率と組織活性度が相関していることが実証された。組織活性度が高い日は、低い日と比較して受注率が34%も高かったのだ。

 行動データの計測は、名札型のウェアラブルセンサーと赤外線ビーコンを使用して行われる。ウェアラブルセンサーで社員同士の対面を検知し、室内に設置した赤外線ビーコンで位置を把握。ウェアラブルセンサーには赤外線センサーと加速度センサーが搭載されていて、対面情報と身体の動きのデータを収集できる。これらのデータから組織の活性化度を計測でき、さらに、組織を活性化させる具体的な行動を導き出せる。

「行動データからは社員のネットワーク(つながり)の可視化が可能です。組織内のキーパーソンや他部署とつながりが多い社員、社員同士の対面時間などが分かります。また、勤務時間の作業内訳や社員の対面比率なども把握できるのです」(日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 営業統括本部 園田英史氏)

 勤務時間の内訳としては、対面時間やデスクワーク時間などが可視化できる。対面比率では、双方向と一方向の会話の比率が計測可能だ。「ウェアラブルセンサーによる身体の動きの計測によって、会話の中で話し手(ピッチャー)となっているのか、聞き手(キャッチャー)となっているのかまでが分かるのです」(日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 営業統括本部 藤石美樹子氏)

「現状の働き方や目標の数値化によって、 働き方改革の意義や目的が明確化され、 改革への積極的な参加を社員に促せるようになります」

左から、日立製作所 吉田章宏氏、園田秀史氏、藤石美樹子氏。首に掛けたウェアラブルセンサーで、コミュニケーションの状況を把握。

上意下達から脱却し社員同士のつながりを強化

 Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービスの具体的な導入事例として日立製作所は次のようなケースを挙げる。ある物流業者は、指示待ち、素直、非提案型の企業文化に課題を持っていた。トップダウンで物事が決まる社風で、社員同士の横のつながりが希薄だった。そこで、Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービスを導入して、現状の可視化と具体的な改善案の導出を試みた。

 7本部180人の社員にウェアラブルセンサーを1カ月間着用してもらい行動データを取得した。判明したのは、やはり全体的なトップダウンの傾向だった。本部間では役員同士の会話が多く、部長同士や課長同士の会話は少なかった。また、自分が聞き手(受け手)である方が仕事に集中できるという結果も出た。これは、指示待ち、素直、非提案型の企業文化を裏付ける結果となった。

 こうしたデータから二つの施策を実施した。一つは、トップダウン型の組織を変えるために本部間のコミュニケーションを役員から部課長に委譲した。もう一つは、聞き手(受け手)の姿勢を変えるために、「会議では全員発言」「会議の出席者は最低限に絞る」「会議時間の上限を設定」「全員参加の短時間会議」など、会議の仕方を変更した。

 これらの施策を実施した後に、再度行動データを取得した結果、本部間での部課長同士の会話の増加や、社員同士の双方向による会話の活発化などが効果として表れた。導入した物流業者からは、「マネージャーの役割を明確にすることで、効率化が図られた」「会議時間を減らす施策を通して、無駄な会議の存在に気付けた」「この結果をすぐに部内に展開したい」という喜びの声をもらえたという。

「現状の働き方の可視化と最適な施策の実施で、上意下達の組織からの脱却を実現できた事例です」(吉田氏)

カラオケボックスでSkype会議もOK

 日立製作所自身も、自社において働き方改革を推進している。オフィスはフリーアドレスを中心にして、ペーパーレス会議の実施やコミュニケーションスペースの設置、さらに、サテライトオフィスとして、自社オフィスの改造に加えて外部会社のサービスも活用した上で首都圏41カ所、900席を用意している。昨年10月に東京の八重洲に設置された「@Terrace」(アットテラス)には、利用シーン別に九つのスペースが用意されている。「Microsoft Surface Hub」を利用したミーティングも可能だ。

「サテライトオフィスの活用で、無駄な移動時間を削減でき、よりフレキシブルで効率的な働き方が実践できるようになります。現在、サテライトオフィス全体では、1日あたり2,500人、月間で5万人を超える社員が利用しています」(吉田氏)

 日立グループの日立ソリューションズ西日本では、営業利益の達成を目的とした働き方改革を、ITの活用で実践している。その柱は、「業務の効率化」「会議スタイルの変革」「制度の改革」「オフィスの改革」 の四つ。業務の効率化や会議スタイルの変革の軸にしているのはSkype for Businessだ。社内、社外との会議、打ち合わせにSkype for Businessを活用することで、移動を削減し、ペーパーレス化も実現。営業スタイルも、SEの同行出張からリモート参加型へシフトするなど、徹底した効率化を図っている。

 こうした業務改革に見合った制度も必要となったため、在宅勤務制度を拡充した「タイム&ロケーションフリーワーク制度」や、サテライトオフィス代わりにカラオケボックスを仕事で活用可能にする「サテライトオフィス制度」を導入した。さらに、オフィスにはフリーアドレス化で生まれた空間にコラボレーションエリアを新設して、コミュニケーションの活性化などを促進している。最新の取り組みとしては、RPAやMicrosoft Teamsなどの利用も検討・推進中だ。

 自社の取り組みも含めて、日立製作所が働き方改革の成功の鍵としてまず促すのは、働き方の可視化だ。「現状の働き方や目標の数値化によって、働き方改革の意義や目的が明確化され、改革への積極的な参加を社員に促せるようになります」(園田氏)

 日立製作所では、労働時間、会議、人間関係の可視化を実現するソリューションや、改革を支援するさまざまなソリューションとサービスの提供によって、企業の働き方改革をサポートしていくという。

日立製作所のサテライトオフィス「@Terrace」。広さは約100㎡、座席数は約100席、常設PCは31台。オシャレな雰囲気が好評だ。

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