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業務効率と市民サービス向上を目指して東京都港区が議事録作成支援システムを導入

業務効率と市民サービス向上を目指して東京都港区が議事録作成支援システムを導入

2018年10月29日更新

AI音声認識で業務の効率化と市民サービスを向上
~東京都港区で議事録作成支援システムを導入~

この 5月、東京都港区で、より正確で迅速な議事録作成と業務の効率化による働きやすい職場づくりを目的に、アドバンスト・メディアの「AmiVoice議事録作成支援システム」が導入された。同システムは、話す内容を即時に文字化するリアルタイム音声認識や、ICレコーダーで録音した音声を文字化する機能を持つ。従来の人手による文字起こし作業に比べて 2~3倍の速さでテキスト化が可能になったという。システム導入の背景、効果、課題を聞いた。

人の手作業に頼ってきた議事録の作成

 会議の議事録というと、衆議院、参議院などの国会審議や地方自治体の議会風景が思い浮かぶ。議場の中央に速記者のデスクが置かれて、議事が記録されていくあのシーンだ。

 日本の国会の場合は、第1回帝国議会から全ての会議の議事録が存在する。速記者が手書き速記技術を用いて作成してきたものだ。手順としては、手書き速記者が原稿作成を行い、校閲者が原稿を通読し、議事録を作成する。会議の応答内容を一言一句書き起こし、文章化して、さらに校閲者がチェックしていく工程は、労力、時間の面から見ても大変な作業である。

 地方自治体の議会も、地方自治体法によって会議録の作成が義務付けられている。職員の手作業によって録音データが書き起こされたり、外部に委託する形で行われてきた。

 国、地方自治体において百数十年にわたってこの手法が守られてきたが、2000年以降、衆参両院において速記者の新規採用・養成が停止され、新たな会議録作成方法が模索されるようになった。京都大学が中心になってさまざまな音声認識技術の開発が進められ、2011年、衆議院で音声認識技術を用いたシステムが採用されることになった(システム開発はNTT)。世界的にみても、国会の審議音声を直接認識するシステムは初めての事例だったという。

 近年、自治体のさまざまな業務やサービスの中でITの活用が進んでいるが、「自治体の業務の効率化」「働き方改革」「その結果の市民サービスの充実」といった面で注目されているのが議事録作成支援システムなのである。

 港区に議事録作成支援ソフトを提供したアドバンスト・メディアは20年近くシステムの開発に取り組み、東京都庁、大阪府庁をはじめ全国 136の自治体と 89の民間・団体への納入実績を持つ(都道府県庁は11、他は市町村。2018年7月8日時点)。議会だけ、あるいは全庁のさまざまな会議など、活用場面は自治体によってさまざまだという。

 近年、働き方改革といった言葉で、行政、民間を問わずさまざまな議論、取り組みが進められているが、港区の場合は、昨年6月29日に武井雅昭区長が宣言した「みなとワークスタイル宣言」というメッセージの中の取り組みの一環として位置付けられている。

業務の効率化と市民サービスの向上を目指す

「これまで港区は、ワークライフバランスの実現に向けて、ノー残業デーの実施や時差出勤制度を導入するなど、働きやすい職場づくりに取り組んできました。『全ての職員が仕事と家庭のバランスをはかり、意欲と能力を十分に発揮し、健康的に働く』『より質の高い区民サービスを提供するため、職員の意識改革をはじめ、業務の効率化、意思決定過程の見直しに全庁を挙げて取り組む』特に、長い間課題となってきた超過勤務の縮減に向けて、取り組みを強化する。こうした働きやすい職場づくりに対する区の取り組みを内外に示すために、全ての管理職(部長・課長)を集めて、『みなとワークスタイル宣言』を行ったのです」(港区総務部情報政策課長若杉健次氏)みなとワークスタイル宣言の骨子は次の3項目だ。

・職員一人ひとりが時間管理の意識を持ち、超過勤務を縮減する
・勤務時間の終了後は、原則定時退庁し、遅くとも午後8時には全員退庁する
・年次有給休暇16日以上を計画的に取得する

 こうした取り組みを進めるには、業務の効率化とその結果である市民サービスの向上が必要となる。

 2018年から、この両輪をITの側面から推進していくことになった。議事録作成はその一環で、他にもAIやRPA(Robotic Process Automation)などの取り組みも進めている。取り組みの中で、特に議事録作成は即効性、効果性が期待できるということで導入に至ったと若杉氏は語る。「区として、庁内にどのような会議があるのか、それを支援するためにどのような技術があるのか、導入するシステムの技術の精度はどの程度なのか、内部で調査・検討しました。議事録といっても、大小含めて非常に幅広くさまざまです。区の公式の会議、外部の方を含めた会議のほか、内部の打ち合わせ会議などもかなり頻繁に行っています。全庁で調べたところ、正式なものとして300を超える会議が存在することが分かりました」(若杉氏)

 これまで、約1時間の会議の議事録を職員が手作業で作成する場合、レコーダーの音声を少しずつ聞き取りながら文章化していくため、およそ3~4時間はかかっていた。この作業が、システムを導入すれば100%の精度ではないにしても、かなり高い精度で自動化できる。導入の前に、職員に試用という形で使ってもらったところ、非常に好評で、90%の職員が導入して使いたいというアンケート結果が出た。かなり有効だと手応えを感じたという。

年間 3,600時間分の作業の削減が可能に

 港区に導入された議事録作成支援システムは、次のような特長を持っている。

■港区専用の音声認識エンジンを採用し、カスタマイズ可能
港区の過去の議事録データから、地名、人名、言葉遣い(地方によっては方言)などを学習して対応。どのような人物の発言でも高精度にテキスト化できる。

■誤認部分は簡単な修正・編集を行うだけ
音声認識技術により、話した言葉はすぐ文字にできる。修正部分があれば、専門の編集ソフトで音声を聞きながら誤認部分を修正したり編集したりできる。

■従来の2~3倍のスピードで音声をテキスト化
音声認識ソフトと編集ソフトの併用で、従来の文字起こし作業に比べて2~3倍のスピードでテキスト化できる。

 港区では、会議によって議事録を残さなければならない場合は、会議の事務局の職員(会議の開催者)が ICレコーダーで録音しながら、会議を進めていく。議事録システムは、機械学習の機能を備えているので、方言や地名の特殊な言葉を学習し続けていくことでシステムの精度を高めることもできるという。

 1時間の会議を一言一句を文字化するのに、従来の手作業なら 3~4時間かかっていた。しかし、音声認識ソフトでほぼリアルタイムにテキスト化でき、だいたい30分くらいかければ、修正まで行えてしまうという。「300ある会議がそれぞれ年間で3~4回行われると、庁内の会議は年間1,200回程度実施されている計算になります。1回当たり3時間程度作業を削減できるとすると、トータルで3,600時間を別の業務に振り分けられるのです。超過勤務の削減や区民サービスの充実に注力できるようになります。そういう形で大きなメリットがあるなと感じています」(若杉氏)

 ここまで述べてきたように、議事録作成支援システムは、業務の効率化に効果があるのは明白だ。これからは、技術も精度も向上し、さらに使いやすくなっていくだろう。それでは、現時点での課題は何か。「今年の5月から導入して、すでに全庁で70回ほど利用されていますが、録音の環境によって精度が左右されてしまうケースがあります。ICレコーダーから離れたところでぼそっと小さい声で話されたりすると、精度が上がりません。うまく音を拾ってより精緻な形で文章化されれば、精度や効率性も高まるのではないでしょうか。より良いものにしていく方法を考えることが、現場サイドでの課題ですね」(若杉氏)

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