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DeNA担当者が明かすRPA導入のツボ

DeNA担当者が明かすRPA導入のツボ

2018年10月12日更新

ゲーム事業に加えて、AIやオートモーティブ、ヘルスケア事業まで手がけるDeNAは、業務のデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組んでいる。その中で現在、大きな注目を集めているのがRPAの導入だ。

RPA CASE STUDY
DeNA

 ITの活用で業務の効率化を進めてきたDeNAは、これまでにもさまざまな仕組みを導入して成果を上げてきた。例えば、2016年には、人事業務におけるHR(Human Resource)テクノロジーの採用で、経済産業省が後援する「HRテクノロジー大賞」の優秀賞を受賞している。最近では、働き方改革やコミュニケーション活性化の目的で、ビジネスチャットツール「Slack」を導入し、関連業界から大きな注目を集めている。

 新しいテクノロジーを積極的に取り入れる企業風土が醸成されたDeNAでは、2016年ごろから市場が加熱し始めたRPAももちろん、業務を効率化するITとして検討の対象となった。DeNA経営企画本部企画統括部 IT戦略部業務改革推進グループの大脇智洋グループマネージャーはRPAについて次のように話す。「ノンプログラミングで使用できてエンジニアじゃなくても扱えるツールが存在し、従来のシステムで実現できていなかった領域における定型業務の自動化・業務改善が可能になると期待しました」

 そこでDeNAは、複数のRPAツールのトライアルを実施した。

DeNA Co., Ltd. Tomohiro Owaki
DeNA 大脇智洋氏

「RPAは、システム化が進んでいなくて作業量がそれほど多くない業務領域の効率化が可能です。さまざまな部署で自動化できる業務が存在しているはずで、それらをRPAで自動化していこうと考えました。 」

RPAツール選定時の三つのポイント

 RPAツールはデスクトップPCにインストールして利用するデスクトップ型と、サーバーにインストールしてサーバー側でロボットを一元管理できるサーバー型に分けられる。

「ユーザーに自由にロボットを作成させるのであれば、ユーザーのデスクトップにインストールして利用できるデスクトップ型が適しています。ただし、ロボットの管理をどうするかという問題が発生します。一方、サーバー型は、誰がどのようなロボットを作成しているのかをプロジェクト単位で管理できます。小さく始めるのであればデスクトップ型、管理面を重視するのであればサーバー型が適しているでしょう。もちろん、サーバー型はコストも高くなるので、導入規模などによっても適切なタイプは変わります」

 このような視点も踏まえてDeNAがPRAツールの検討時に考慮したのは次の3点だ。

・誰がロボットを作成するのか
・ロボットの管理はどうするのか
・社内の主要なシステムで利用できるのか

「RPAツールによってロボット作成に求められるスキルが変わるので、誰がロボットを作成するのかが一つ目のポイントになります。現場部門でITリテラシーが高くない従業員でも利用できるツールにするのか、それともITスキルを備えた専属の従業員などに作成させるのかといった方向性を見極める必要があります」(大脇氏)

 ロボットの管理においては、ユーザーに任せて自由にロボットを作成させるのか、それとも管理者によって集中的に管理させるようにするかで、上述したデスクトップ型かサーバー型かの選択が分かれる。

 最も大きなポイントは、社内の主要なシステムで利用できるかどうかだったという。「テストしたツールの中で、いくつかの社内システムで利用できなかったケースがありました。例えば、Webアプリケーションの操作において、標準的なブラウザーで動くタイプは問題ないのですが、専用ブラウザーで動くタイプはJavaスクリプトやActive Xの相性が悪いと動かない場合があるのです。当社では、従来から利用しているERPツールの『NetSuite』と連携させられるかどうかや、シングルサインオンのログインをロボットが行えるかどうかなどを確認しました。また、業務で活用しているサイボウズの『kintone』との連携もテストしました」(大脇氏)

 これらのポイントを勘案し、総合的な判断としてDeNAは、サーバー型のRPAツール「Blue Prism」の採用を決断した。

人事業務で年間4,000時間分を削減

 昨年6月から大脇氏が所属するIT戦略部でBlue Prismの導入・トレーニングを開始し、約2カ月間、展開の仕方や得られる効果の確認、そしてノウハウの蓄積を図った。ちなみに同社は、RPAの導入から運用までの全てを自社リソースで行っている。

「RPAは、システム化が進んでいなくて作業量がそれほど多くない業務領域の効率化が可能です。さまざまな部署で自動化できる業務が存在しているはずで、それらをRPAで自動化していこうと考えました。まずは、バックオフィス業務が多い人事部や経理部などに、RPAで効率化できそうな業務をリストアップしてもらい、難易度と効果をIT戦略部で評価して、難易度が低く効果が高い業務にRPAを適用するようにしました」(大脇氏)

 例えば、DeNAでは、人事の勤怠管理にRPAが利用されている。同社の勤怠管理システムは、ビルの入退室と連動していて通常は自動的に勤怠時間が登録されるが、外回りで直行直帰をするような営業社員は自ら勤怠システムに時間を登録しなければならない。そのため登録漏れが少なからず発生する。結果として残業時間などの正確な把握が難しくなるため、登録が漏れている従業員に対して人事部が人手でリマインドを送るなどの対応をしていた。DeNAでは、この作業をロボットに担当させて自動化することに成功したのだ。さらに、勤怠の状況から残業時間の推移を予測し、月間の残業時間が規定を超えてしまいそうな従業員に対しても、自動的に注意を促すロボットを作成した。

「残業時間の超過予測については、従業員自身が計算できるようにExcelのワークシートを用意しているのですが、勤怠管理システムにログインして、自身の月間の労働時間をExcelにコピペする必要があります。しかし、手間がかかるため従業員はなかなか実施してくれません。そこで実際には、残業時間を超過しそうな従業員を人事部が百数十人ピックアップし、Excelの作業を代行していました。そして、超過予測が出た従業員に対してリマインドを行っていたのです。この作業をロボットで自動化しました。これによって全従業員約2,500人分のチェックを1日で実行できるようになったのです。結果として、年間で業務4,000時間分の削減が可能になりました。従業員二人分ほどの業務をロボットが行っている計算になります」(大脇氏)

 こうした例に加えてDeNAは、RPAをさまざまな業務で活用しようとしている。「例えば経理業務では、AIを用いたOCRを利用して請求書と計上のチェックなどをRPAのロボットに行わせるような取り組みに着目しています。金額や取引先といった請求書の情報を OCRでデジタル化し、システムに入力されている数値との整合性をチェックさせるイメージですね。RPAによる業務の自動化によって、付加価値の高い業務への注力の実現や、月末月初などに集中しがちな業務の山を平準化できる効果が期待できます」(大脇氏)

複数のRPAツールの併用を予定

 それでは、RPAの運用面において注意すべきポイントは何か。大脇氏は、ロボットが止まることを想定しておかなければなりませんと指摘する。「例えば、SaaSアプリと連携させている場合、SaaSアプリの自動更新によってロボットが画面やHTML構造の変化に対応できずに停止してしまうことがあるのです。人であれば、ボタンのデザインが変わったとしても問題なく認識できますが、画像で認識させているロボットの場合は、それだけで止まってしまいます。そのため、業務を円滑に進行させるためにも、ロボットが停止したときの対応を事前に決めておく必要があるのです。当社ではロボットのプロセスの責任者(プロセスオーナー)を明確にし、ロボットが停止した際に、プロセスオーナーが業務を代行する仕組みを構築しています。もちろん、ロボットが止まらないような作り方や、ロボットが連携している社内システムの更新時には、ロボットの利用ユーザーに事前に告知してテストできるような仕組みも必要ですね」

 今後は、さらに小さな業務への適用を進めるために、SaaS型とデスクトップ型のRPAの導入を検討しているという。「RPAのロボット作成には、要件定義から開発・テストを含めて、少なくとも40~ 50時間はかかります。そのため、見合った効果が得られる業務にしか適用しないという方針が当社にはあります。しかし、そこに至らない小さな業務が社内に多くあることに気付きました。そこで、エンドユーザー自身によるロボット開発を推進するため、ITリテラシーの低いユーザーにとっても活用のハードルが低いSaaS型とデスクトップ型のRPAを併用して運用することを検討しています。今後は、複数のRPAツールの併用で、業務の効率化をさらに進めていく予定です」(大脇氏)

DeNA Company Profile
設立 :1999 年3 月4 日
資本金 :103 億9,700 万円
従業員数 :連結2,475 名(単体1,341 名)※ 2018 年3 月末時点
事業内容 :ゲーム、エンターテインメント、E コマース、オートモーティブ、ヘルスケア、スポーツなど

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