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スマートロックが民泊の鍵管理を変える

スマートロックが民泊の鍵管理を変える

2018年09月13日更新

民泊施設で需要高まる
スマホで解錠するスマートロック

訪日外国人の増加に伴い、民泊の需要も高まっている。しかし、一般の家屋やマンションの一室などを宿泊施設として貸し出す民泊は、鍵の管理に課題がある。そうした管理をスムーズに行うツールとして、スマートロックの存在がある。

一部民泊施設で利用されるスマートロック

 訪日外国人の増加に伴い、宿泊施設のニーズも高まっている。昨今では旅行者が一般の民家に宿泊して、現地の住環境なども含めて楽しむ「民泊」を利用する観光客も増えてきている。しかし、民泊などの民家を利用した宿泊には課題も存在する。

 それは宿泊地として提供している場所の鍵の問題だ。ホテルなどであればカードキーなどによる施錠システムは完備されているが、一般の民家を宿泊施設として使用する民泊などで、そうした施錠のシステムを導入することは難しい。

 そこで需要が出てきているのが、後付けの施錠システムだ。スマートフォンで鍵の開閉ができるスマートロック「Qrio Smart Lock」や「Qrio Lock」を提供しているQrioのLock事業部 事業部長 兼 マーケティング部 部長の高橋 諒氏は「すでに一部の民泊事業者では、当社のスマートロックを採用いただいています。個人で簡易宿舎の免許を取得し、3施設ほどを民泊施設として運用しているオーナーが、家電量販店などで3台のQrio Smart Lockを導入し、専用アプリから宿泊者に対して合鍵を送るといった鍵の管理を行っているようです」と活用事例を語る。

 Qrio Smart Lockや、その次世代機であるQrio Lockは、鍵のサムターン部分を挟み込むように取り付けるだけで設置が完了するため、導入が非常に簡単だ。民泊施設の施錠システムとして活用する場合は、宿泊者に対してスマートロックを解錠するための合鍵を発行すればよいため、鍵の管理などの手間が不要になる。

Qrio Lock 事業部 事業部長 兼 マーケティング部 部長 高橋 諒 氏

複数施設を管理できるロックシステムを構想

 民泊事業者にメリットが多いように見えるスマートロックの利用だが、課題もある。「管理する民泊施設が三~四つ程度であればよいのですが、大規模になるとスマートフォンのアプリだけで管理するのは難しいです。施設予約の管理なども必要になるため、今後大規模な民泊施設に導入を検討している事業者さまに向けて、民泊向けのスマートロックシステムの提供を構想しています」と高橋氏。Qrioではスモールオフィス向け鍵管理システム「カギカン」を提供しており、法人向け市場でのスマートロックシステム構築のノウハウが蓄積されている。そのノウハウを生かしたシステムの構築を予定しているという。

「課題は販路です。現在、民泊市場は黎明期で、小規模な事業者が多いため、どういった販路でスマートロックシステムを提供していくか検討している段階です」と高橋氏。昨今では賃貸マンション一棟を全て民泊用に利用しようとする不動産事業者も増えてきており、今後は不動産を経由して、スマートロックを一定数導入する民泊事業者も増加する可能性がある。そうしたインバウンドの宿泊需要の増加に合わせて、スマートロックのニーズも高まっていく。販売店は民泊市場の動向に合わせて、販路を開拓していくことが、インバウンド需要の獲得につながりそうだ。

観光サイクル全てでITのサポートが重要に

街を見回してみても、訪日外国人の数は増加しているように見える。それでは実際の数値はどうなっているのだろうか。インバウンドにまつわる市場需要を数多く調査しているみずほ総合研究所に話を聞いた。

2013年と比較したインバウンド消費額は3倍に

 インバウンドに関わる市場が拡大を続けている。特に昨今は、都市圏の商業施設でモノを買う“モノ消費”から、地方圏のその土地ならではの体験を楽しむ“コト消費”へと消費の対象が移りつつあり、インバウンドの需要は地方圏にも広がっている。インバウンドにまつわる市場需要を数多く調査し、それらの結果から「キーワードで読み解く地方創生」(みずほ総合研究所 編)などの著作にも関わるみずほ総合研究所 調査本部 経済調査部 兼 高度デジタル情報解析室 主任エコノミスト 宮嶋貴之氏は、インバウンド需要の現状について「アベノミクス以降、訪日外国人の数は順調に増加しており、インバウンド消費額も2013年と比較して2017年は3倍に拡大しています」と語る。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック実施後は訪日外国人が減少する懸念などもあるが、世界経済フォーラムが発表した観光競争力指数のランキング(2017年版)において、日本が欧州の観光大国に次ぐ4位を獲得するなど、東京オリンピック・パラリンピック後も世界的な観光需要は増加する見通しだ。一方で、政府は訪日外国人を2030年に6,000万人まで増加させる目標を打ち出しており、達成させるためには訪日選択率をさらに底上げする必要がある。それには首都圏だけでなく、地方圏の交通インフラ整備が不可欠だ。

 一方で、不足が懸念されていた2020年のホテル客室については「ホテルの建設ラッシュが起こっており、2020年には十分な客室数が供給されると予測しています。供給過剰の懸念もありますが、都市圏での稼働率は高水準を維持するでしょう」と宮嶋氏。また訪日外国人の宿泊先として、クルーズ船や民泊施設などの需要も高まっているが「民泊新法が6月15日に施行されたことで、それまでに提供されていた民泊物件の八割が削除されました。そのため、短期的にはホテルの需要が高まるでしょう」と宮嶋氏は指摘する。

 しかし、長期的に見ると、現地の住環境を体験できる民泊施設は訪日外国人から高いニーズがあり、その受け皿として新法に則った民泊施設が増加していく可能性があるとも指摘する。

みずほ総合研究所 調査本部 経済調査部 兼 高度デジタル情報解析室 主任エコノミスト 宮嶋貴之 氏

日本製品を継続購入する“越境EC”の需要

 インバウンド需要において、どのようなポイントでITツールが活用されていくのだろうか。宮嶋氏は「多様な側面での活用が期待できると思います。例えば翻訳ツールやタクシー配車アプリの活用はもちろんですが、出国ゲートでは顔認証システムの活用や、顧客情報のビッグデータをもとにAIを利用して顧客に対して最適な商品を宣伝するといった利用です。また、インバウンドを契機としたアウトバウンド(海外需要の取り組み)も重要になっており、出国前から帰国後までの一気通貫した取り組みが、小売企業の課題になってくるでしょう」と語る。

 宮島氏が指摘したアウトバウンドとは、訪日外国人が帰国した後の継続的な需要獲得を指す。具体的には、インバウンドが活性化していることで、日本製品の知名度が向上しており、帰国後も日本製品を再購入する「越境EC」が増加傾向にある。特に中国は、2015年から2017年にかけてインバウンドによる日本国内での買い物よりも、越境ECの取引額のほうが増加している。訪日外国人観光客の需要を包括的に獲得してくためには、出国前から移動中、旅行中、帰国後までのサイクル全てにおいて、トータルでサポートする取り組みが求められており、それら全ての側面でITの活用が必要とされている。

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