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二次交通課題を解決するタクシー配車アプリ

二次交通課題を解決するタクシー配車アプリ

2018年09月11日更新

ITで“おもてなし”
~インバウンドビジネスのキーポイント~


訪日外国人の数が増加している。日本政府観光局によると、2017年の訪日外国人数は推計で2,869万人と前年比19.3%増。5年連続で過去最高を更新している。日本政府は2020年に、4,000万人を超える訪日外国人を呼び込むことを目標に掲げており、今後もインバウンド市場が拡大していくことが予想されている。そうしたインバウンド市場において、ITツールの提案チャンスはどこにあるのだろうか。今回はタクシー配車アプリと多言語観光アプリに組み込まれたARリーダーの活用、そして今後需要が高まる宿泊施設のITツールを紹介していく。また市場調査会社の調査を踏まえた、インバウンド市場の展望についても解説する。

淡路島の二次交通の課題を解決
多言語対応のタクシー配車アプリ

観光資源が豊富な兵庫県淡路市(淡路島)。観光客は島内人口の約100倍と、観光事業が好調だ。しかし、観光客の内訳を見ると関西圏からの来島が約8割となっている。関東など遠方や海外などからも観光客を呼び込み、島内に長期滞在してもらうため、淡路島ではタクシー配車アプリを活用した実証実験を実施している。

地域経済活性化のため観光客獲得が急務

 瀬戸内海に浮かぶ淡路島は、古事記の神話の中では日本で最初に作られた島とされている。古代から平安時代までは、天皇や朝廷に食を献上し「御食国」(みけつくに)と呼ばれるなど、歴史や文化、食、自然など多彩な地域資源に恵まれている。また、阪神間から1時間でアクセスできるため、都市近郊型の観光地として、多くの観光客を獲得してきた。その観光客数は年間約1,300万人と、淡路島の人口13万2,000人の約100倍だ(2018年1月現在)。

 数値の上では活況に感じられる淡路島の観光事業。しかし、そこに潜む課題について、兵庫県淡路県民局県民交流室長 淡路出会いサポートセンター長 髙野滋也氏は「淡路島は、阪神間からのアクセスが非常によいため、関西圏から自家用車で日帰り観光に来ていただくケースが多いです。しかし、滞在時間の短い日帰り観光客は、消費額が平均約1万円。半面、宿泊観光客は平均約4万円です。高齢化により淡路島の人口減少が予想される中、観光戦略として長期滞在の観光客を増加させることが、地域経済活性化として急務になっています」と語る。淡路島では、65歳以上の高齢者の割合が36%を超えている。今後も人口の減少が予想される中、交換人口と呼ばれる観光客数を増加させることが重要なのだ。

 そこで淡路島では今年3月に「淡路島総合観光戦略」を策定し、首都圏などの遠方やインバウンドの観光客誘致に本格的に取り組むことを盛り込んだ。しかし、遠方やインバウンドの観光客を取り込んでいくには、島内の二次交通に課題を抱えていたという。髙野氏は「淡路島には現在鉄道がありません。そのため、観光で島内を巡る場合、路線バスかタクシー、レンタカーの使用が必須になります。しかし、路線バスも人口減少のあおりを受けて運行本数が減少しているなど、観光客が使用する上で適した交通手段ではありません」と課題を語る。

兵庫県淡路県民局 県民交流室長 淡路出会いサポートセンター長 髙野滋也 氏

タクシー配車アプリを活用した実証実験スタート

 その課題を解決するために淡路島が着目したのが、タクシー配車アプリの活用だ。スマートフォンの位置情報を元に観光客がタクシーを呼ぶため、島内のタクシー会社の電話番号などを知らない観光客でも使いやすい。また多言語に対応している配車アプリであればインバウンドの訪日観光客でもタクシーを呼べるというメリットがある。

 淡路島では複数のタクシー配車アプリの中から、200カ国以上で使用され、50カ国語に対応する自動車配車アプリ「Uber」の利用を決めた。7月21日から兵庫県淡路県民局と淡路島内のタクシー事業者、Uberとの3者による日本初の実証実験をスタートし、現在島内の40台のタクシーがUberでの配車に対応している。

 今回の実証実験で運用しているシステムは次の通り。観光客がUberアプリを使用してタクシーを呼ぶと、実証実験の対象となっているタクシーに搭載されたiPadに通知が届く。iPadにはドライバー用のUberアプリがインストールされており、タクシーを呼んだユーザーの元へ向かう想定ルートなどが表示される。

「もともとUberはライドシェアアプリとしてリリースされていたため、タクシー配車アプリとして利用するにあたって、タクシーのメーター料金で料金計算をできるようにカスタマイズをお願いしました。料金の事前確定はできず想定料金になりますが、配車を依頼した観光客は想定料金を事前に確認できるため、安心してタクシーを利用してもらえます」と髙野氏は語る。

 現在はメーター料金をもとにタブレットに打ち込んで精算をしているが、今後はタブレットと連動し、高速料金も含めて精算できるようにしていきたいという。Uberアプリは前述したとおり多言語に対応しており、事前に目的地などもアプリ上で設定できるため、訪日観光客が話す言語をタクシードライバーが分からなくても送迎できる。こうした点も、利用の上でメリットが大きい。

国の史跡として指定されている洲本城(上)、水質評価が高い大浜海水浴場(下)、徳島県と淡路島を結ぶ大鳴門橋(右)など、淡路島は観光資源が非常に豊富だ。

アプリ活用のプロモーションにも注力

 遠方の国内観光客やインバウンドの訪日観光客を増加させるため、プロモーションにも力を入れている。観光雑誌に情報を掲載したり、台湾や香港などのメディアやブロガーを対象に“ファムトリップ(ターゲットとする国や地域のブロガーやメディアに現地を視察してもらうツアー)”を実施したりしている。観光雑誌には今回のUberを活用したタクシー配車のやり方なども掲載しており、実際に訪れた観光客が二次交通に不便を感じないように工夫を凝らしている。

「島内の宿泊施設でも、今回の実証実験についてプロモーションを行っています。ホテルの部屋の目立つ場所にPOP広告を設置したり、カードキーを渡す際に同サイズ程度の広告を渡したりしています」と髙野氏。実証実験をスタートして日が浅いため、目に見えた効果は出ていないが、実際にUberからタクシーを利用した事例は出てきているようだ。

 髙野氏は「淡路島は縦に長く、観光資源も各地に分散されています。そのため、タクシーやレンタカーなどの移動手段は観光地を巡る上で必須の存在なのです。前述したように現在は関西圏からの観光客が多く、宿泊施設も土日の稼働率が高いです。今後は平日を中心に滞在してくれる国内遠方やインバウンドの観光客を呼び込み、さらに観光事業を活性化させていきたいと考えています。そのためにはUberによるタクシー配車が重要なキーになっていくでしょう」と語る。

 実証実験期間は2019年3月31日までを予定している。今後はUberアプリの使用状況などをUberが解析し、そのデータをもとに2019年度以降の実証実験の継続や、本格導入などを決めていきたい考えだ。また、多言語ナビ付きEVレンタカーを導入した実証実験も別途スタートしており、タクシーとレンタカー、双方の交通手段でもって訪日観光客を獲得していく。

淡路島内のタクシー事業者9社が実証実験に参加。合計40台のタクシーがUberによる配車に対応する。

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