
Microsoft Teamsの利用でOffice 365を利用したコラボレーションに変革を起こす
TEAM
チームツールの提案で引き出す潜在需要
働き方改革の流れを受けて、社内のチームワーク力を高めるコラボレーションツールの市場が拡大している。今年7月9日にIDC Japanが発表した国内ソフトウェア市場予測では、2017年は、場所やデバイスを問わない業務遂行を支援するチームコラボレーティブアプリケーション市場が大きく拡大した。働き方の見直しが加速する今後は、チームツールの需要はさらに拡大していくだろう。そこで本特集では、チームツールの最新状況と需要開拓に効果的な提案ポイントを探った。
コミュニケーションの在り方を見直す
Microsoft Teams
共同作業が業務効率化の鍵
Office 365の一つのツールとしてマイクロソフトはグループチャットソフトウェアの「Microsoft Teams」を提供している。Office 365の各ツールをつなぐハブとしても機能するMicrosoft Teamsの詳細を説明する前に、まずは市場背景についてマイクロソフトの見解を紹介していこう。
現在はITの進化によって働く環境が大きく変化している。マイクロソフトの資料によれば、ビジネスユーザーの45%がソーシャルツールを仕事で活用し、1ユーザーあたり4台のデバイスを使用するようになっている。多様化・グローバル化する職場環境については、5世代が同じ職場でともに働くようになっていて、全体の72%が2020年までにテレワークを実施すると予測している。世代については、30年で1世代という見方ではなく、1945年以前に生まれた世代、ベビーブーマー世代(1946年〜1964年頃生まれ)、Generation X(1965年〜1980年頃生まれ)やGeneration Y(1981年〜1995年頃生まれ)、それ以降に生まれた世代といった分け方になるだろう。現在は、これだけの多様な世代が混合して働いている状況にある。
このような環境の中で、チームを中心とした共同作業は5年前と比較して2倍になり、80%の業務時間をコミュニケーションやコラボレーションに費やしているという。共同作業の進め方が、業務効率化の鍵を握るとマイクロソフトは結論づける。
「限られたメンバーの中で業務効率を高めるためにコミュニケーションの在り方を見直したいと考えるお客さまが増えています」(日本マイクロソフトMicrosoft 365 ビジネス本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 吉田馨一氏)
求められるのは、共同作業に携わる社内外のチームメンバーと円滑にコラボレーションでき、あらゆる場所やタイムゾーンをつなぎ、さらに多様な世代の従業員誰もが利用できる簡便さを備えたチームツールだ。それを、実現しているのがMicrosoft Teamsだとマイクロソフトはアピールする。
「Office 365で培った充実したサポートで、販売パートナーさまも安心して提案できます」
日本マイクロソフト 吉田馨一氏
チーム作業のハブとして機能
Office 365に含まれるMicrosoft Teamsは、チームのためのビジネスチャットや通話、会議機能を提供する。個人やチーム単位でチャットが行え、ビデオを利用した会議も可能だ。それらが、モバイルアプリ、デスクトップアプリ、そしてWebブラウザーからも使える。
チャットのやり取りにおいては、WordやExcel、PowerPointといったOffice 365の各ツールのファイルを共同で作成したり編集したりもできる。ファイルはOneDriveに加えて、DropboxやBox、Google ドライブなどと連携して直接保存も行える。さらに、OneNoteやPlanner、Power BIなどのアプリケーションとも統合できる。
つまり、チーム作業をMicrosoft Teamsで行うようにすれば、作業工程に関連するコミュニケーションから、ExcelやPowerPointなどの資料の共有と修正、PDFなどのさまざまなファイルの共有、Outlookと連携した会議予約、音声とビデオを利用したチーム会議などが、Microsoft Teamsを中心に行えるようになるのだ。チーム作業の過程において、Microsoft TeamsがOffice 365のハブとして機能することになる。
その有用性の評価は、Microsoft Teamsの利用ユーザーが毎月15〜30%程度の割合で増えている点に表れている。Office 365を導入している大企業の多くがMicrosoft Teamsを使い始めており、Microsoft Teamsを利用するためにOffice 365を導入する中小企業ユーザーも増加しているという。「働き方改革からの流れ込みは多いですね」と吉田氏は分析する。今年の7月からはMicrosoft Teamsの無償版の提供も開始しており、さらに多くのユーザーへの普及を狙う。無償版はプレビューとしての位置付けで、有償版と比較して機能などに制約があるため、無償版から有償版への誘導が可能だ。
Office 365に含まれるコミュニケーションツールには、従来から利用されてきたメールのOutlookや社内SNSのYammerなどがあるが、その中でMicrosoft Teamsは、チームワークを高めるツールとしてより優れた機能を提供する。Microsoft Teamsには、ビジネスチャットならではの、「会話の早さ」「見やすさ」「楽しさ」があるとマイクロソフトはアピールする。メールよりも会話に適したツールであり、「コミュニケーションの量・質の向上」「組織の『関係の質』の向上」「業務プロセスの改善」「大きな行動変革」「管理職の業務効率化」などが効果として得られると説明する。
そして、チャットのやり取りの中で、Office 365の各ツールのファイルや機能を連携して利用できる強みがMicrosoft Teamsにはある。
Microsoft Teamsは、ビジネスチャットを中心にOffice 365の各ツールと連携したファイル共有や編集が可能だ。Office 365のハブとして機能する。
部門別の想定使用例
Microsoft Teamsの部門別のユースケースとしてマイクロソフトは以下のような例を挙げている。
■カスタマーサポート
・シフト交替時に途切れることなく情報を共有
・ユーザーリクエストのエスカレーション状況を可視化
・過去の会話から解決策を検索
・各分野の専門家との連携で問題解決をスピードアップ
■エンジニアリング
・複数の場所に分散したメンバー間で、チームとして継続的に協議
・オープンな場でアイデアや要件を協議し、情報を収集
・標準ドキュメントやファイルを保管
・Jiraなどの開発者向けツールと統合
■財務
・複数部門の関係者による収益発表の準備
・データの統合および分析の合理化
・予算関連書類およびファイルの保存
・経済動向およびニュースの共有
■人材管理
・職務内容のすり合わせ、インタビュープロセスの合理化
・新入社員研修の計画、準備
・分散した従業員のトレーニング
・部門のリソースおよびドキュメントの共有
■マーケティング
・キャンペーンやイベントをコーディネート
・最新コンテンツのドラフトを共有してフィードバックを収集
・分析ツールからレポートを自動的に出力
・さまざまな関係者に向けたマーケティング活動を準備
■営業
・PMやセールスオペレーションから素早く回答を入手
・重要顧客の獲得に向けて協力
・リード通知と取引メンションの取得
・企業、製品、競合他社に関する最新ニュースを共有
■運営、プロジェクト管理
・プロジェクトのコミュニケーションとツールを合理化
・最新情報を提供し、フィードバックを集め、作業をコーディネート
・ファイルを共有し、成果物を共同で編集
・新しいプロジェクトメンバーのスムーズな参加を支援
メールよりも圧倒的に早い
Microsoft Teamsを実際に利用している企業の導入例としては、次のようなケースがある。
人材関連企業のリクルートキャリアやリクルートジョブズは、「イノベーション創出」「コミュニケーション改善」「対応スピード向上」を目的にMicrosoft Teamsを導入した。効果として、「提案書を1人でゼロから作るのではなく、他の人のアイデアを参考にできるため、効率よく提案書の質を上げられている」「場所が離れていても、お互いのエリアで得られた知見を即座に共有できるようになった」「誰かが質問をすると、ほぼ10分以内に他のメンバーが回答したり、過去の類似案件の資料をアップするといったことが起きている」などが挙げられている。「属人的だったノウハウのシェアを実現し、情報共有のスピードも高められているようです」(吉田氏)
コンピューター周辺機器の製造販売を営むミマキエンジニアリングは、国内外に分散した事業所間でのリアルタイムの業務連絡と気軽なコミュニケーションの実現を目的にMicrosoft Teamsを導入した。その結果として、次のような成果を得ている。「従来のメールや電話などのコミュニケーションツールと違って、気軽に手軽にそしてスピーディーに情報共有ができるようになった」「メールの場合一度送信してしまうと取り消しが難しいが、Microsoft Teamsは送信後でも編集や削除が可能で、あまり構えずに気軽にコミュニケーションが行える」「メールよりも圧倒的に早いレスポンスを得られている」
SIerの日本ビジネスシステムズは、「部門横断プロジェクトの推進」「システム開発プロジェクトにおける管理ツールの一元化」「情報の共有基盤」を目的にMicrosoft Teamsを採用した。「チャットやファイル共有だけでなく、OneNoteやPlanner、Power BIなどのアプリケーションを一元的に使ってチームワークを実行できる点」に魅力を感じ、「成果物の最新版がどこにあるか分からない、同じような資料をメンバー間で何度も作っていた、といった状況が確実なファイル管理の実現で改善できた」という。
さまざまな世代が混合し、ITリテラシーの差が従業員間でも発生している状況の中で、利用を強制しない展開を行っているのが、インターネットサービスプロバイダーのソニーネットワークコミュニケーションズだ。利用を強制せずに使いたい人が自由に使うスタンスでMicrosoft Teamsを導入し、チームのコミュニケーションの迅速化を実現している。Microsoft Teams以外にも多様なコミュニケーション手段を提供する Office 365について、「ユーザーに無理を強いることなく、コミュニケーションの進化を優しく後押しする存在になっている」と評価する。
「Office 365にMicrosoft Teamsが含まれているため追加料金なしで全社展開が可能な点や、ID管理の部分でOffice 365用のMicrosoft FastTrackセンターのサポートが受けられる点なども支持していただいています。サポートの充実は、販売パートナーさまの安心材料にもなるでしょう」(吉田氏)
マイクロソフトの社内には、Microsoft Teamsなどを利用したチームコラボレーションのための会議室が用意されている。台形にデザインされた机は、対角線に位置する人同士も顔が見合わせやすい。座席が高めの椅子は立ち上がってモニターで説明しやすいようになっている。机の中央には、モニターとPCの接続をワンタッチで切り替えられる仕組みが配置されている。
Power BIで利用状況を可視化
Microsoft Teamsは、Power BIと連携させることで、利用状況の可視化が可能になる。利用内容の把握によって、さらなる業務改善の足がかりが得られるようになるのだ。「コミュニケーションツールの利用状況は、経営者やマネージャー層が欲しいデータです。働き方改革の推進においては特に有用でしょう。実際にお客さまからの関心も非常に高いです。Microsoft TeamsとPower BIとの連携では、従業員の業績などを加味した分析も可能です。パートナーさまのSIビジネスのチャンスになるでしょう」(吉田氏)
今後は、ビデオ会議における翻訳機能(英語などを翻訳して字幕表示)や、会議の録画機能などをMicrosoft Teamsに実装していく予定だ。録画した映像は、Office 365のビデオサービスである Microsoft Streamと連携して閲覧が可能になる。「Skypeの機能をMicrosoft Teamsに取り込むなど、会議系の機能をどんどん拡張していきます」と吉田氏は展望を明かす。
Office 365のハブとして存在し、企業のチームコラボレーションの核として機能するMicrosoft Teamsは、MRデバイスである「Microsoft HoloLens」との連携を予定しており、もちろん、タブレットやスマートフォン、モバイルPCなどのモバイルデバイスの利用も加速させる。「モバイルアプリ専任の部署によって、モバイル利用に最適なデザインを追求している点もMicrosoft Teamsの魅力です」(吉田氏)
無償版の提供が開始されたMicrosoft Teamsは、その効果の体験によって、有償のOffice 365やMicrosoft 365の導入へ促すことも可能だろう。Microsoft Teamsを起点として、ソフトウェアとハードウェアの両面の提案チャンスを広げられるのだ。
Power BIでMicrosoft Teamsのデータを分析した例。
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