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リーダーシップを育むICT教育とは

リーダーシップを育むICT教育とは

2018年09月25日更新

4年生以上にBYOD で2in1タブレットを導入
自ら考えて行動するリーダー人材の育成を目指す

タブレットを導入して実施するICT教育が、各地に広がっている。しかし、その中には、ICT機器の使い方を教える授業に終始してしまっている学校もある。江戸川学園取手小学校では、4年生以上の児童にBYODで2in1タブレットを導入し、自ら考えて行動する学びに役立てている。同校における授業でのタブレット活用について取材した。

心豊かなリーダーの育成を図る
江戸取小学校のリーダーシップ教育

 江戸川学園取手小学校(以下、江戸取小学校)は、茨城県初の小中高等学校12年間の一貫教育校として、2014年4月に開校した。同校では、開校2年目となる2016年度から小学校4年生以上の児童に2in1タブレットを導入し、ICT教育を推進している。同校が目指す教育について、学校法人 江戸川学園 江戸川学園取手小学校 広報・入試部長 教諭の吉井 毅氏は次のように語る。

「江戸取小学校では“心豊かなリーダーの育成”を教育理念に掲げ、道徳教育に力を入れています。大勢の人のトップに立つ人材というよりも、自分が自身のリーダーとなって統率できるよう、人格を育成していくことを目標にしています」

 道徳教育においては、スティーブン・R・コヴィー著「7つの習慣」に基づいた小学生向け教材「リーダー・イン・ミー」を活用してリーダーシップの育成に取り組んでいる。また小学校から高等学校までの12カ年の期間で、発達段階に応じたキャリア教育を実施するなど、社会への興味喚起と未来への希望を育んでいる。

 リーダーシップの育成を図るためには、自ら考えて行動する際に使用するツールが不可欠だ。同校では、将来的にICT機器を活用できるスキルの有無が自ら考えて行動する場合に重要なファクターになると考え、ICT教育にも力を入れている。前述した2in1タブレットの導入も、同校のリーダーシップ教育の一環なのだ。

「ICT教育を実施するにあたり、機械の使い方を教えるのではなく、ICT機器を使って何ができるか考えたり、思い立ったときにICT機器を使ったりできる環境が必要になると考えました。そこで携行性が高く、学習活動ソフトウェアとも相性がよかった2in1タブレット『Surface Pro 3』の導入を決めました」と吉井氏。

 Surface Pro 3は、同校の4年生以上の児童全員に1台ずつBYODで導入している。同校では、BYODで1人1台のタブレット環境を実現している。購入費は保護者負担となっており、日本マイクロソフトからSurface Pro 3の文教モデルを提供してもらっているという。好みに応じてSurface Pro 3以外の端末を選択する家庭もあるが、全体の1%にとどまる程度だ。BYODで運用しているため、基本は個人所有の端末を学校で活用するといった位置付けだ。そのため、学校の学習だけでなく、家庭での宿題にも利用されている。

 PC教室にも校費で40台Surface Pro 3を導入している。PC教室に設置されている端末は、1〜3年生の児童が日常的に使い、タブレットの扱いに慣れ親しむ用途として活用されている。「低学年の児童の場合、どうしても端末を落としてしまったり、壊してしまったりといったトラブルが考えられます。学年全体でICT教育に取り組むのは4年生からが適当と考えました」(吉井氏)

江戸取小学校のPC 教室。Surface Pro 3 が並んでいる。デスクトップPC のように使えるように、ドッキングス テーションやキーボード、マウスも用意 されている。
6 年3 組の国語の授 業風景。学園祭で行う模擬国連という催 しに備え、各国の調べ学習を行い、ポス ターにまとめている。

国語の音読学習やクラブ活動紹介に
タブレットを活用してより深く学ぶ

 江戸取小学校では、ICT教育の基本方針として以下の三点を設定している。

1.「えどとりICT教育」を通じて学習活動をさらに充実する。
2.ICTを活用し「さらに分かる授業」で子供たちの確かな学力を育てる。
3.小・中・高12カ年一貫教育を見据えた多様な学習活動を実施する。

 それでは、実際の授業ではどういった活用をしているのだろうか。吉井氏は「タブレットの活用は、基本的に教科ごとの担任に一任しています。多く活用されているのは、国語や算数、音楽の授業などです。例えば国語の場合、教科書を読み上げる音読の宿題を出すことがありますが、本校ではこの音読を、タブレットで録画して提出するように指導しています」と話す。

 従来の音読の宿題は、保護者に音読を聞いてもらい、その証明にハンコを押してもらうことで音読したことを教員に示していた。その場合、音読するのは1回だけであったり、きちんと読み上げているか教員側からは分からなかったりと、課題もあった。しかし、タブレットで音読の様子を録画することで、音読している姿を教員も確認できるようになる。また、1回で終わらせてしまいがちだった音読も、録画した映像を教員に提出するようになったことで、最もよい映像を提出しようというモチベーションにもつながったという。児童が使用する全ての端末には学習活動ソフトウェア「SKYMENU Class」がインストールされており、前述したような音読の様子を録画した映像や、授業中の学習状況の確認なども行いやすい。

「SKYMENU Classにはマインドマップのように蜘蛛の巣状に自分の発想を広げていく『マッピング機能』が搭載されています。本校ではこのツールを活用して、自分たちの考えを広げていったり、児童同士で共有したりするために使用しています。例えば6年生は、将来の夢についてマッピングで表現し、その内容を教室の前に掲示してあります」と吉井氏。また、4年生の国語では「クラブ活動のリーフレットを作る」という授業があるが、同校ではそのクラブ活動紹介にタブレットを活用し、実際にプレゼンテーションして見せる、といった取り組みも実施している。「司会進行もプレゼンテーションの内容も、ほぼ子供たちだけで行います。リーダーシップ教育と絡めて、それぞれが所属しているクラブの写真を撮りに行ったり、クラブの人にインタビューして、その映像を流したりと、子供たち自身が試行錯誤してクラブの魅力を伝えられるようにしていますね」(吉井氏)

 上記のように、授業の理解を深めるだけでなく、日常的に自分たちの意思を伝えたりするような用途でもタブレットを活用している。同校のICT教育は、タブレットをあくまで文房具として扱えるようにカリキュラムが組まれている。今後社会に出ていく上で必須となるスキルを身に着け、リーダーとしての素質を育むためのツールとして、タブレットを有効に活用しているのだ。

課題は教員間のICTスキル格差
MIEEの取得で足並みをそろえる

 英語学習にも力を入れている。海外の学校とSkypeをつないでビデオ通話をしたり、Skypeでの交流を希望する学校同士をランダムにマッチングする「Mystery Skype」を活用したりして、国際的な人材の育成を進めている。Mystery Skypeはマイクロソフトが提供する教育プラットフォーム「Skype in the Classroom」で提供されているサービスの一つだ。

 2020年度からスタートするプログラミング教育についても、各教科でどのように実施していくか、試行錯誤している段階だ。

 江戸取小学校では、学級担任制の小学校が多い中では珍しい教科担任制を採用している。その背景には子供に対して複数の視点から評価ができるという教育的なメリットがあると吉井氏は話す。タブレットの活用頻度も、教員によって差があることは事実だが、教科担任制にしていることで、全ての児童がバランスよくタブレットを活用した授業を受けられているのだという。

 この活用頻度の差について、吉井氏は「教員ごとにICT活用能力のばらつきがあることは事実です。今後は本校の教員の一部にマイクロソフト認定教育イノベーター(Microsoft Innovative Educator Expert:MIEE)の資格を取得してもらうなどして、教員のICT活用能力の足並みをそろえていきたいと考えています」と展望を語った。吉井氏自身もMIEEの資格を取得しており、江戸取小学校のICT教育のレベルを、さらに引き上げていきたい考えだ。

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