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観光地の周遊性を高めるARを活用した観光アプリ

観光地の周遊性を高めるARを活用した観光アプリ

2018年09月12日更新

ARと360度コンテンツを活用し
文京区の観光スポット周遊を促す

観光客による消費を促す上で、通過型の観光地から滞留型の観光地への転換は欠かせない。長時間、複数の観光地に訪れてもらうことが、観光客の消費額増加につながるからだ。文京区では、周遊性を高めて、滞留型の観光客を増加させるために、多言語AR機能を搭載した観光ガイドアプリ「旅道-TABIDO-」を活用した観光情報発信を実施している。

16 カ所の観光スポット情報を多言語AR アプリで発信

 文京区では、通過型の観光地から滞留型の観光地へ転換するため、AR機能を搭載し多言語情報配信や自動音声翻訳も可能な観光ガイドアプリ「旅道-TABIDO-」(以下、旅道アプリ)を活用した観光客の誘致を実施している。

 文京区アカデミー推進課観光担当 白杉将和氏は「文京区は、歴史と文化に彩られた緑豊かな街で、森鷗外や夏目漱石、樋口一葉、石川啄木などの文豪が居を構えた近代文学の発祥地です。江戸時代の名残をとどめる史跡や文化遺産が多く、小石川後楽園や六義園に代表される庭園などでは、四季折々の魅力を楽しむことができるなど、観光資源が豊富な街なのです」と語る。しかし、急増する訪日外国人を含めた観光客に対して、区内の観光情報の発信が不十分という課題があった。

 そこで同区では、観光客の周遊性を高めるため、旅道アプリを活用して観光情報を発信していくことを決めた。地域の魅力を発信するプラットフォームとして、凸版印刷が提供する旅道アプリを採用し、アプリ内で区内の観光スポットをARで楽しめる「文京区デジタルジャーニー」としてサービスをスタートさせた。

 文京区デジタルジャーニーでは、前述した旅道アプリに区内の観光スポットの情報を掲載・発信している。現在配信対象となっているのは、小石川後楽園、六義園、ホテル椿山荘東京、東京ドームシティ、文京区立森鷗外記念館、史跡湯島聖堂、湯島天満宮、日本サッカーミュージアム、野球殿堂博物館、文京シビックセンター展望ラウンジ、東洋文庫ミュージアム、宝生能楽堂、肥後細川庭園、お茶の水おりがみ会館、講道館、旧伊勢屋質店の合計16カ所だ。

 旅道アプリのトップページに文京区デジタルジャーニーで紹介している施設を一覧で確認できるページが用意されており、そこから各観光スポットの紹介文や、施設のホームページなどを確認できる。旅道アプリは前述したように多言語に対応しており、スマートフォンのOSで設定された言語に合わせてアプリ上の言語表記が変更できる。そのため、訪日外国人が旅道アプリから観光スポットの情報が入手しやすく、事前の下調べがしやすいのだ。音声翻訳の機能も搭載されているため、来日した際のコミュニケーション手段としても活用できる。

文京区アカデミー推進課 観光担当 白杉将和 氏

360 度コンテンツで周遊性を高める

 旅道アプリを活用して、それぞれの施設の様子を360度見られるコンテンツも配信している。文京区が各施設で配布しているリーフレット「文京区デジタルジャーニー~スマホアプリでVR旅行~」に掲載されている文京区の地図に組み込まれたARマーカーを、旅道アプリのARリーダーで読み込むと、施設の様子を360度確認できるようになっている。リーフレットには、文京区に居を構えた森鷗外や夏目漱石、樋口一葉、石川啄木といった文豪が文京区を旅している様子がポップなイラストで描かれている。親しみやすさをアピールすることで、観光客が手に取りやすいデザインに仕上げた。そのため、文京区の観光スポットに足を運んだ観光客が、文京区デジタルジャーニーのリーフレットを手に取り、他の観光施設の様子を事前に確認した上で「その場所に行ってみよう」というアクションを起こさせるといった、観光客の流動性を促すことを狙った取り組みだ。

 もちろん、ARマーカーは前述した16カ所の観光スポットにも設置されている。例えば文京シビックセンター展望ラウンジであれば、都内の様子を一望する展望ラウンジの窓ガラスに、文京シビックセンターのARマーカーが掲載されたポスターなどが掲示されている。展望ラウンジであれば実際にその場所を歩けば、360度コンテンツと同様の眺望を楽しめるが、悪天候時には本来の眺望を360度コンテンツで楽しめるというメリットがある。また、東京ドームシティでは、東京ドームのバッターボックス付近から見た360度の景色を楽しめるなど、実際に観光した場所をさらに深く知るためのコンテンツとしても活用できるのだ。

 白杉氏は、「今回配信しているコンテンツの多くは静止画ですが、文京シビックセンター展望ラウンジと肥後細川庭園のコンテンツは360度動画になっており、実際に施設の中を歩くように観光スポットの様子をスマートフォン上で確認できます。また、熊本藩主細川家の屋敷跡である肥後細川庭園では、熊本県のゆるキャラ『くまモン』のARマーカーも設置してあり、庭園の中にくまモンを重ね合わせるといった楽しみ方もできるのです」と語る。360度コンテンツのメリットと、ARコンテンツのメリットをうまく組み合わせ、文京区における観光客の周遊性を高めているようだ。

ARマーカーを読み込むと、観光スポットの様子が360度の静止画や動画で確認できる。凸版印刷のVRスコープを利用すればVRとしても楽しめる。※表示されているコンテンツはイメージです

都内を一望できる文京シビックセンターの展望ラウンジには、他の観光スポットのARマーカーも設置されている、肥後細川庭園ではくまモンのARコンテンツも楽しめる。

GPSを活かしたスタンプラリーの取り組み

 2017年度の文京区デジタルジャーニーでは「文豪の街を巡る」ことをテーマにしていた。そのテーマを生かし、文豪が登場する漫画とコラボしたスタンプラリーを、旅道アプリを利用して実施した。旅道アプリではGPSを利用して訪れた場所のスタンプを取得できるスタンプラリー機能を搭載しており、その機能を活用したイベントだ。

 白杉氏は「イベントでは区内6カ所をスタンプラリー実施地とし、文京区立森鷗外記念館と文京ふるさと歴史館を必ず立ち寄るチェックポイントとして設定しました。実施期間は2017年12月20日~2018年1月31日と約1ヶ月ほどでしたが、文京ふるさと歴史館、文京区立森鷗外記念館ともに来館者数が大幅に伸びました」と語る。観光コンテンツとして、GPSを活用したゲーム性のあるイベントの実施も、周遊性の高い観光客誘致に一役買うことがよく分かる事例だ。

 今後の展望について白杉氏は、次のように語る。「2018年度は、文京区デジタルジャーニーで配信する360度コンテンツを、現在の16カ所から29カ所へと拡大する予定です。また、今後開催する企画展において、取り壊されてしまった建造物を再現するといった活用も予定しています。実際に建造物を復元すると、設置場所などのスペースが必要になりますが、ARコンテンツであればそうしたスペースが不要で、当時の様子を再現した建造物を見ることができます。また、凸版印刷が開発した『VRスコープ』を利用すれば、前述した建造物をVRで楽しめるため、没入感のある施設再現が可能になると考えています」

 文京区では、現実の情報を付加するARと、バーチャルに入り込むVRの双方を楽しめるコンテンツで、今後も訪日外国人を含めた観光客の獲得を目指していく。

文京デジタルジャーニーでは、文豪をポップなイラストで紹介し、観光客が親しみやすいようにプロモーションしている。

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