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『NEC iEXPO KANSAI 2018』レポート

『NEC iEXPO KANSAI 2018』レポート

2018年08月09日更新
7月13日に大阪で開催された『NEC iEXPO KANSAI 2018』の展示会場の風景。
『NEC iEXPO KANSAI 2018』の基調講演にNEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野 隆氏が登壇し、二つの注力事業を説明した。

NECが生体認証とAIの事業領域に注力
市場をリードできるスピードが課題

外部人材の登用で成長を目指す

 今年6月に発表された3,000人の人員削減などNECは苦難からの脱却へ必死に取り組んでいる。NECはリストラ策だけではなく、同社の弱点であると代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの新野 隆氏自身も認める「自前主義」からの脱却も進めており、今年4月にはGEジャパンで社長を務めた熊谷昭彦氏を副社長に招いた。

 さらに日本マイクロソフトの人事責任者などを歴任してきた佐藤千佳を新設したカルチャー変革本部の執行役員 本部長に起用するなど、外部人材を積極的に登用している。

 C&C(Computers and Communications)をスローガンに掲げ、コンピューターと通信の技術融合による社会やビジネスの進展を早くから提唱して事業を展開してきたNECが復権をかけてどのような事業展開を進めるのか、毎年夏に開催される恒例の『NEC iEXPO KANSAI 2018』が7月13日に開催され、新野氏は基調講演でこれからのNECの事業展開について説明した。

生体認証とAIの事業に注力する

 新野氏は基調講演で「Digital Inclusion」というキーワードを示して「デジタルの力で、ひとりひとりが輝く社会」を目指して安全、安心、効率、公平に資するデジタルの活用が重要だと訴えた。

 ちなみにDigital Inclusionとはデジタル技術が空気や水のように社会に存在して、誰もがその恩恵を受けられるといった意味合いだ。NECではそうした社会の実現に向けて以前より「七つの社会価値創造テーマ」を掲げてきた。

NECが取り組み七つの社会価値創造テーマ(NECのホームページより転載)

 その実現に向けて重要な役割を担うのがAIと生体認証だという。そして新野氏は同社のAI技術群「NEC the WISE」と生体認証ブランド「BIO-IDiom」を紹介し、同社がこの二つの事業領域に注力していくことを印象付けた。

 NEC the WISEとBIO-IDiomは安全・安心な社会の実現に加えて、人・モノ・プロセスをつなぎ合わせて社会価値を創造し、持続的な成長が可能な企業・産業への変革を実現することに役立つという。

NECはAI技術群「NEC the WISE」と生体認証ブランド「BIO-IDiom」で成長を目指す。

ホワイトボックス型のAIで商機を狙う

 まずNEC the WISEで提供される生体認証技術について説明した。NECには指紋や顔だけではなく掌紋、指静脈、声、虹彩、さらには耳音響などさまざまな生体認証技術がある。中でも指紋認証技術や虹彩認証技術、そして動画と静止画の顔認証技術はアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のコンテストでトップの評価を得ているとアピールする。

 続いてBIO-IDiomについてAIは見える化、分析、対処に活用できると説明し、AI技術の進化には二つの方向性があると示した。それは「ブラックボックス型」と「ホワイトボックス型」である。

AI技術の進化には「ブラックボックス型」と「ホワイトボックス型」の二つの方向性がある。

 ブラックボックス型では目標や目的が定まった問題の解決に適しており、例えば安全な街を作る、品質の条件を設定してそれを維持・管理するなどに利用できる。ただしAIが導き出した解答について、そのルールを説明できないという課題がある。

 そしてホワイトボックス型は結果が一つに定まらない問題、例えば新商品の開発や経営判断などに適しており、AIが提示した解答のルールを説明できるのが特長だ。新野氏はこれら二つのAI技術の両方で同社の技術を進化させていくと強調した。

NECはAI技術を進化させることで圧倒的な効率化と人への示唆の高度化を目指す。

米国にAI事業の新会社を設立

 NECのAI事業についてNEC ビジネスイノベーションユニット エグゼクティブ・ディレクター 森 英人氏が説明した。

 NECは4月に米国で新会社「dotData, Inc.」(ドットデータ)を設立しており、同社では企業内に蓄積されるビッグデータのデータ分析プロセスをAIで自動化するソフトウェアを開発・販売し、企業の課題解決の高度化を支援する。

 ドットデータのコア技術にはNEC データサイエンス研究所 主席研究員 藤巻遼平氏が開発した「予測分析自動化技術」を採用し、同社のCEOに就任する。

NEC ビジネスイノベーションユニット エグゼクティブ・ディレクター 森 英人氏がNECのAI事業について説明した。

自動化でデータサイエンティスト不足に対応

 森氏はドットデータのソフトウェアについて、事前に教師データを教え込ませることなく、データの準備から運用までの分析プロセス全体を自動化・簡易化できるのが特長だとアピールした。そしてデータサイエンティストの人材不足が深刻化しているが、ドットデータのソフトウェアを利用すれば誰でも高度なデータ分析が行える上に、AIが自動的に設計する解釈可能な特徴量から新しい知見を発見することもできると説明を続けた。

 森氏はドットデータのソフトウェアの成果について三井住友銀行で実施した実証実験を紹介し、従来2~3カ月かかっていた「金融商品を買ってくれそうな顧客の分析」を1日未満で同等以上の結果を得ることができたと強調した。

共通プラットフォームで精度向上

森氏がいくつかの事例や実験を紹介した後に新野氏が再び登壇し、都市人口の増加に伴う問題として食糧不足が挙げられるが、一方で食糧が廃棄されている事実を示し、食糧消費を高精度で予測して廃棄を減らすにはサプライチェーン全体でデータ連携するとともに、共通のプラットフォームで分析・予測する必要があると訴えた。

サプライチェーン全体で共通のプラットフォームで分析・予測することで食糧提供を最適化できるという。
食糧廃棄の削減のほかにもいろいろな副次的効果が期待できるという。

NECには世界に誇れる技術力が数多くある。その一方で、自慢の技術を事業化するのに時間がかかり、競合に先を越されてしまうという問題があった。生体認証とAIの領域で成長を目指すならば、市場をリードできるスピードも必要となる。(レビューマガジン社 下地孝雄)

基調講演ではNECのAI技術はすでに実際の利用で効果を生み出しているとアピールしていた。

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