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働き方改革のインフラ整備がBCPを実現する

働き方改革のインフラ整備がBCPを実現する

2018年08月16日更新

Business Continuity Planning × Work Style Reform

B C Pと働き方改革、両立のススメ

BCP(事業継続計画)は、企業が自然災害など緊急事態に遭遇した場合に備えて、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画を指す。企業が策定するBCPというと、サーバーの冗長化やPCのバックアップ、従業員の安否確認などのシステム面も含まれるが、これらの対策をスムーズに、よりメリットが得られる方法で実現する方法がある。それが、働き方改革だ。

ワークスタイル変革ソリューションの市場が拡大
各ツールの普及に伴いBCPに副次的効果が生まれる

多くの企業が働き方改革に取り組んでいる。実際の市場動向から、需要の高いITツールに加え、働き方改革を実践することによるBCP策定のメリットについて、富士キメラ総研に話を聞いた。

製造業とサービス業などでワークスタイル変革が進む

 働き方改革に注目が集まっている中、調査会社の富士キメラ総研は「ワークスタイル変革ソリューション市場」の調査を実施し、その結果を3月2日に発表した。本調査では、労働環境の改善や生産性の向上などさまざまな効果が期待できるICT関連ソリューションを“ワークスタイル変革ソリューション”と定義している。具体的には、Web会議、デスクトップ仮想化/シンクライアント、リモートアクセス、勤怠管理、RPA関連ツール、チャットボット、文書管理を始めとする27品目のソリューション市場を分析し、今後を予測した。27品目のソリューション市場は、「コミュニケーションツール」「ワークインフラ」「バックオフィス」「セキュリティ」「ワークプレイス」「オートメーション」「ドキュメント」といった七つのカテゴリーに分解して算出している。

 ワークスタイル変革ソリューション市場の規模について、同社 第二部門 主任 菅又和彦氏は「2017年度に前年比11.0%増の8,773億円が見込まれています。また2021年度には2016年度比52.3%増の1兆2,034億円が予想されるなど、拡大傾向で推移しています」と語る。

 業種別の需要を見てみると、2016年度では製造業、サービス業/ほか向けのウエイトが高く、2021年度にはサービス業/ほか向けの市場がさらに拡大し、2業種で市場の半数近くを占めると予想されている。

 製造業の調査を担当した同社 第二部門 主任 加藤健二氏は、業種ごとの導入傾向は多様化しているため、一概に定義することは難しいと前置きした上で「労働人口の減少から、製造業では特にコミュニケーションツールやワークインフラといったカテゴリーの製品に需要が見込まれます」と語る。

 特にコミュニケーションツールにおいては、分散する工場間や、本社と工場、取引先との意思疎通を図るために導入増加が期待されている。加えて、図面や伝票、取引ごとに発生する紙文書をデジタル化し、保管コスト削減を目的するドキュメントカテゴリーのソリューション導入も進むと見られている。

(左) 富士キメラ総研 第二部門 友田敦史氏
(中央)富士キメラ総研 第二部門 主任 菅又和彦氏
(右)富士キメラ総研 第二部門 主任 加藤健二氏

自治体はセキュリティのニーズが高まる

 2021年度に3,000億円近くまで市場が拡大すると予測されたサービス業/ほかについて、調査を担当した菅又氏は、「店舗の従業員と本部の管理者との情報共有によるサービス品質向上を目的に、ビジネスチャットなどのコミュニケーションツールの導入が進むと考えられています。また、飲食サービス業を中心にモバイル端末の利用が多いため、セキュリティ対策ツールの導入も進みます」と語る。

 サービス業/ほかの市場では労働人口の多い自治体も含まれており、今後市場の拡大が予想されている。「2016年度に自治体情報システム強靱化を目的に国から補助金がついたため、特に認証デバイスの需要が喚起されています。自治体の市場では今後セキュリティ市場の規模が拡大していくでしょう」と菅又氏。

 同社はワークスタイル変革ソリューションの中で「働き方改革関連需要」についての調査も行っている。本需要は、政府などの働き方改革推進を契機とする需要を指したもので、具体的には導入目的のトップに「働き方改革の推進」を挙げたケースを対象としている。働き方改革関連需要の市場規模では、2016年度が158億円。特にセキュリティ対策や労働時間削減効果を目的としたツールに需要が集まった。また、働く場所や時間の制約をなくすリモートアクセスやデスクトップ仮想化/シンクライアント、労働環境を改善する勤怠管理などの導入も進んでおり、2017年度は前年比2.2倍の332億円が見込まれている。

 将来的にはテレワーク環境の整備が進み、働き方改革のポイントも生産性の向上にシフトしていく。それに伴い、働き方可視化ツール、RPA関連ツール、チャットボットなどの需要が増加する。上記の背景を踏まえて、2021年度の働き方改革関連需要の市場規模は2016年度比5.7倍の869億円となる見込みだ。

働き方のワークインフラ整備がBCPにつながる

 ワークスタイル変革ソリューション市場全体から見ると、働き方改革関連需要は決して多くない。ITツールを選定するエンドユーザー側が、より具体的な効果を見極めた上で導入を決めるようになってきたからだ。富士キメラ総研の第二部門 友田敦史氏は「自社の課題をよくわかっている企業は、その課題に応じたツールを導入するため、働き方改革を第一の目的にはしません。半面、漠然とした課題を感じている企業に対しては、ツール単体で提案するよりもコンサルティングから提案していくとよいでしょう。提案の際は具体的な成功例を紹介するなど、導入後の効果を可視化させる必要があります」と語る。

 ワークスタイル変革ソリューションが企業に普及していくことで、副次的な効果も得られる。「ワークスタイル変革を推進していく上で目的になるのは、多くが長時間労働の解消や働き方の多様化、政府が主導する働き方改革への対応です。しかし、リモートアクセス環境や仮想デスクトップといったワークインフラの整備によって、場所を選ばず働ける環境が広がりつつあることで、BCPの観点からも効果が生まれています」と友田氏は話す。また、Web会議ツールやビジネスチャットツールなどのコミュニケーションツールが普及することで、離れた拠点間での意思疎通を円滑にするツールもBCPに効果がある。

 加藤氏は「特に書類は、保管スペースを取るだけでなく津波や地震で紛失しやすいというデメリットがあります。ワークスタイル変革の一環でペーパーレスを進める企業も多くありますが、BCPの観点でも、書類をデジタル化すれば紛失の危険性を低減できるので導入メリットが高いと考えています」と語る。昨今ではクラウドサービスの普及も進んでおり、電子化したドキュメントをクラウドストレージに保管しておけば、BCPと業務効率の向上の双方から利便性が高まる。

 続きを読む  仮想デスクトップ環境が実現する生産性向上とBCP

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