
世界19カ国の先進的STEM教育授業案が集結
19カ国が集結するSTEM教育のコンテスト
世界から見た日本の授業案とその評価とは?
レゴ エデュケーションは、STEM教育に携わる教員を対象としたコンテスト「LEGO Education Teacher Award」を実施している。日本では2018年が初開催となり、2名の教員が最優秀賞を受賞した。今回は、LEGO Education Teacher Awardの概要に加え、世界各国から見た日本のSTEM教育の最前線と、その評価ポイントを紹介する。と同時に、日本のSTEM教育やプログラミング教育を普及させるために求められる取り組みも解説する。
完成度の高い創造的な授業案で
国の垣根を越えた学びを共有する
レゴ エデュケーションは、小学校現場のプログラミング教材として採用されるケースの多い、「WeDo 2.0」や「レゴ マインドストーム EV3」を提供している。また、これらの教材を活用した授業実践事例などの紹介を行っており、教育現場へのプログラミング教育の普及推進に力を入れている。
そのレゴ エデュケーションが実施しているのが「LEGO Education Teacher Award」という革新的な教育を推進するためのコンテストだ。もともとは、レゴの教材を活用している教員同士の情報共有を支援していくためにスタートした本コンテストだが、現在は世界中の小・中・高等学校で実践している教育内容を中心に、日本のほか、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ロシア、中国、韓国など19カ国で同コンテストが実施されている。同コンテスト受賞者となった教員は、アメリカ ボストン※で実施される「レゴ エデュケーションシンポジウム」で教材への取り組みや活動内容を発表し、国の垣根を越えた学びの情報共有を実践している。日本でLEGO Education Teacher Awardが実施されたのは今年が初となる。
「LEGO Education Teacher Award 2018」の日本公式ルールでは「子供たちがSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics:科学[理科]、技術、工学、数学[算数])を学び理解するプロセスを助ける、レゴ エデュケーションのプログラミング教材を使った斬新な授業の指導案」が募集され、12に及ぶ応募が寄せられた。本コンテストの受賞者について、2018年4月3日に審査会が開催され、最優秀賞として神奈川大学附属中・高等学校 小林道夫氏と、筑波大学附属小学校 鷲見辰美氏の2名の受賞が決まった。
神奈川大学付属中・高等学校の小林氏は、レゴ マインドストーム EV3をプログラミング教材として活用し、高校2年生を対象に宇宙エレベーターをテーマにした学びを実施。筑波大学附属小学校の鷲見氏はレゴ WeDo2.0を教材として活用し、小学校1年生を対象にペアで創造した動物や虫を組み立て、それが餌を取って戻るという課題を設定したプログラミング教育を行っていた。それぞれテーマ設定の完成度の高さやクリエイティビティが評価されての受賞となった。
※開催地は年によって異なる。
ロボットの垂直移動や特徴的トピックで
展示に世界各国の教員から注目が集まる
受賞者2名は前述したレゴ エデュケーションシンポジウム(6月5〜7日:アメリカ ボストン開催)で授業実践内容を発表し、各国の教員同士による情報交換を行った。
シンポジウムに同行した、レゴ エデュケーション マーケティング マネージャー 荒深晴奈氏は、シンポジウムの様子を次のように語る。「シンポジウムではLEGO Education Teacher Award 2018を受賞した先生方が、それぞれの授業の様子などを展示し、実践した授業を解説しました。二日目の午後には教員同士の情報共有の場が設けられ、世界各国の先生方とSTEM教育についてのディスカッションを交えて授業の様子などを共有していました」
特に宇宙エレベーターをテーマに授業を行った小林氏は、通常平面を横移動させるレゴ マインドストーム EV3を垂直移動させたり、宇宙というトピックで子供たちの知的好奇心を喚起させたりした点などから、さまざまな国の教員から興味を持たれていたという。鷲見氏の授業実践も、小学1年生という低学年の児童に対して、モーターの動きや組み立ての概念といったSTEMの領域での学びを実現していたことや、児童の自由な発想を育める授業内容だったことなどから、高い評価を得た。
各国の教員との情報交換で得られた、新たな知見もあったようだ。シンポジウムでは展示のほかに講演も行われており、「台数の教え方」にまつわる内容を聴講した鷲見氏は自身の授業への取り入れを検討していたという。
「個人的に興味深いと感じたのは、ニュージーランドの女子校に勤める先生がおっしゃっていた『女子生徒に工学的なテーマに興味を持ってもらうには』という課題です。その先生は生活に関わるものをテーマにしたり、ひっぱりあいなど身近な動作からレゴ マインドストーム EV3を活用したプログラミングを学んでもらうという工夫をしていました。教科に対する男女間の苦手意識の差は先入観によるところが大きいため、体験して楽しいと感じる授業づくりが必要だったようです」と荒深氏。
男女による教科ごとの苦手意識の差は日本でもあるため、こうした課題に対する解決策は、どの国でも教員による授業づくりによる工夫にかかっているのだということがよく分かる。
日本でも実践されていたSTEM教育
具体的な指導案の創出が普及のカギ
世界19カ国の参加者が集まった今回のシンポジウムにおいて、世界と比較した日本のSTEM教育はどのようなレベルだったのだろうか。荒深氏は「STEMは理数の幅を広げた概念で、プログラミング教育もこの中に含まれます。しかし、先生方はこのSTEM教育が日本に広がるとは考えにくいと指摘していました」と語る。
STEM教育が広まらないという意見は、必ずしもマイナスの視点からではない。日本ではSTEM教育で実践される“体験に基づいた学習”が学校現場に根付いているためだ。例えばボストンでは、地下鉄の漏水をテーマに地域密着のプロジェクトを学校現場で実践しているが、日本でも総合的な学習の時間や社会科などで、地域学習を行う。言葉の定義は異なるものの、すでに学校現場で同様の学びを行っているため、「広まらない」と表現したのだ。そのため、日本ではSTEM教育全体が広がるというよりは、2020年度から必修化されるプログラミング教育を軸に、さらに児童生徒の主体的な学びの姿勢を育成していくことが求められていきそうだ。
先進的な学びを実践する教員を表彰し、普及推進を促していくLEGO Education Teacher Awardだが、依然講義型の学びを実施している学校現場は多い。STEM教育やプログラミング教育を普及させていく上では課題があり、教員一人ひとりの意識改革が求められている。同社では教員に対する研修の機会や、Webサイト上での指導案の提供を実施して、教育現場でのSTEM教育の普及推進を促している。
「LEGO Education Teacher Award 2018を受賞した他国の先生方を見ても、指導案は非常にしっかりと作成されていました。指導案は授業を成功させる上で重要な存在です。特にプログラミング教育については、企業や先進的な授業を実施する先生方と連携して作成し、共有していく必要があると感じています」と荒深氏は語った。
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