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つくば市がRPAの共同研究を実施し、その成果を報告

つくば市がRPAの共同研究を実施し、その成果を報告

2018年07月24日更新

定型的で膨大な自治体の業務プロセスを自動化
〜つくば市でRPAの共同研究を実施、報告書を発表〜

自治体のIT化は、基幹業務の効率化はもとより、防災、教育、セキュリティ、医療、観光、AI活用と裾野が広がっている。しかし、まだまだ導入が遅れている技術も多い。茨城県つくば市では、それらの技術を市民サービスの向上や行政課題の解決に結びつけることを目的に、NTTデータなど民間事業者とRPA活用に向けた共同研究を実施、5月に実績報告書を発表した。共同実験の内容、見えてきたメリットや課題、今後の展望を聞いた。

間接業務を自動化するRPA

 RPAとは聞き慣れない言葉だが、「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で「間接業務を自動化する技術」のこと。つくば市はRPAの活用で、市民サービスの向上、行政課題を解決するためにNTTデータなどの民間事業者と共同研究を実施した。

 共同研究の背景について、つくば市 政策イノベーション部 情報政策課の石川玄壱氏が説明する。

「自治体の業務は基本的にはどこも同じですが、どのようなシステムを使っているかで業務の進め方は各自治体で異なります。つくば市の場合は茨城計算センターという茨城県下で広く使われている基幹系システムが導入されていますが、他県では地元の企業などの別システムが使われています。どこの自治体でもシステムをカスタム化して使いやすくしていますが、法改正などで業務が追加されると業務フローが変わってきたり、隙間ができたりします。そこの部分を手作業で穴埋めしているのが現状なのです」

 例えば、市民から申請された内容をシステムに入力する作業や、他の機関から送られてきたデータを紙にプリントして別のシステムに手作業で入力する作業があり、毎年、多くの労力やコストを費やしている。入力ミスの修正作業は、長時間勤務を発生させる一因にもなっている。

「RPAは金融機関などで活用が進んでいますが、自治体では当市の取り組みが始まったばかりです。RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化をテーマに設定し、共同研究に取り組むことになったのです」(石川氏)

 昨年10月に市のホームページ上で公募し、12月にNTTデータ、クニエ、日本電子計算がパートナーとして選ばれた。

年間で約336時間、370万円の削減につながる?

 研究の対象となるセクションは、職員へのアンケートやヒアリングをもとに、定型的かつ膨大な作業量が発生する業務を抽出していった。

「いま何が大変か、どんなところが改善されたらいいか、ざっくばらんにアンケートしたところ、市役所業務の中では単純な作業が多いことが分かりました。その部分を減らせば違う仕事に時間や労力を割り当てられます。そこで、試験を行うセクションとしては市民税課、市民窓口課、人事課(ワークライフバランス推進部)、財政課を選び、RPAを活用して作業の効率化やミスが少ない正確で的確な処理ができるかどうかを検証することにしました」(石川氏)

 RPAソフトを市の既存システムに導入。試験は2018年1月から4月上旬にかけて行われ、5月10日には85ページにも及ぶ詳細・膨大な実績報告書が発表された。報告書には、今回の研究に協力した部署の職員からのRPAを利用した率直な意見が紹介されている。

 まず、良かった点としては、以下のよう意見が市民税課から寄せられた。

・単純作業は、早く大量の処理ができる。業務効率が非常に良くなり、手間が減った
・市民税課には必ず導入されるべきだ。来年の繁忙期はRPAなしでは乗り切れない
・重複エラー処理は、短時間でできて誤りもほとんどなかった。今まで2〜3人で数時間かけて処理していたが、時間短縮で空いた時間に他の処理をすることができた
・税部門のように短期間で一様な大量のデータを管理・加工する部門では、職員の負荷軽減につながる

「アンケートでRPAの話を聞いたときは耳慣れない言葉だったが、自分の仕事が楽になるのであればという気持ちで取り組んだ、最初は大変でもやってみたらそんなに難しくなかったなど、自分の仕事がどのように楽になり効率化できたか、具体的な意見が聞けました。職員が自分なりのRPAのシナリオを作れるかどうかについても研究しましたが、職員でも可能だという意見があり心強く感じました」(石川氏)

 市民税課で新規事業者登録や電子申告の印刷作業などの5業務にRPAを導入すれば、3カ月で約116時間、年間で約336時間、その結果370万円の時間外勤務手当の削減が見込まれる。市民窓口課で異動届受理通知業務にRPAを導入すると、結果として3カ月で約21時間、年間換算で71時間の削減が見込めるという試算も出ているという。

 ただし、次のような課題を指摘する声も集まった。

・動かすだけなら思ったより難しくなかった。しかし、敷居が高いイメージは課内でもまだある(市民税課)
・市民窓口課では、手書きの申請書を基に作成する業務が多い。手書きの申請書を高精度でOCRし、RPAで処理するためには手続き方法の検討が必要(市民窓口課)
・個々の業務において、業務手順やフロー化をしておくことが必須(人事課ワークライフバランス推進室)
・目的の作業をRPAで組める職員が少ないため、本格導入には職員を育成する必要がある(市民税課)
・依頼して完成したシナリオでも、予期せぬエラーが発生したり、微調整が必要となる(市民税課)。

全国自治体へのモデルケースとして取り組む

 メリットや課題など、さまざまな意見が出たが、これから取り組みを進めていく上でネックになりそうな問題も浮き彫りになった。それは、「RPAの内製化(シナリオを職員が作る)」「人材育成」「紙への対応」だという。

「何と言っても、市役所は紙による申請が多いのが実情です。紙からシステムに移行させるにしても、OCRはまだ完璧ではありません。紙の申請を電子化していかないと、先に進むことは難しいのです。これから本格的に導入していくときに、紙の問題を解決しないとどうにもならないのですね。そこがネックになっていることがはっきりしました」(石川氏)

 そうした課題に取り組みながら、6月の議会で補正予算を計上し、審議が進めば早くて9月には導入できるスケジュールで進めている。今回研究に協力してもらった市民税課、市民窓口課、税務課などの中でRPAが適用できるところでスタートとなる。庁内で研究で使っている部署の周辺では、RPAがどういうものであるか理解が進んでおり、「自分の所でも使えるのではないか」という意見が増えると期待しているという。

「今回の研究は、市役所のさまざまな業務へのRPA適用の可否や効果を見極め、これから全庁への展開に向けて導入していくための第一弾です。同様の課題を持つ全国の自治体への情報発信も積極的に行い、先端IT技術を公共サービス分野に導入するモデルケースとして取り組んでいきます」(石川氏)

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