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Dell EMC 最高技術責任者の黒田晴彦氏が解説する「分散型コアアーキテクチャ」

Dell EMC 最高技術責任者の黒田晴彦氏が解説する「分散型コアアーキテクチャ」

2018年07月05日更新

Distributed Core Architecture

Dell EMC

IoT/AI時代の新しいアーキテクチャとしてDell EMCが提唱するのは、「分散型コアアーキテクチャ」だ。ハードウェアとソフトウェアの目覚ましい進化が、この新しい構造を導いた。

ムーアの法則を上回る進化

 4月末から5月はじめにかけて米ラスベガスで開催された「Dell Technologies World 2018」では、現在進行形で取り組まれている企業のデジタルトランスフォーメーションの状況と、それにつながる技術の5大トレンドが紹介された。5大トレンドとは、「Immersive and Collaborative Computing(VR/AR活用による没入型・共同作業型コンピューティング)」「IoT」「マルチクラウド」「SDE(Software-Defined Everything」「AIと機械学習」だ。これらの技術が、企業のデジタルトランスフォーメーションには欠かせない。

 そして、これらの先端的な技術の基盤となるのが「分散型コアアーキテクチャ」だ。これは、エッジからクラウドに至るシステムの中でコアを分散させてデータを処理したり活用したりする構造で、IoT/AI時代の新しいアーキテクチャであるとDell EMCは説明している。エッジからクラウドまでの間で最適な処理を分散配置されたコアが実行するイメージだ。

 分散型コアアーキテクチャ構想の背景には、そもそもとして「ハードウェアとソフトウェアの劇的な進化があります」と説明するのは、Dell EMC 最高技術責任者の黒田晴彦氏だ。半導体の集積度がおよそ2年で倍増するというムーアの法則は、ハードウェアの進化を考える上でこれまで非常に重要な指標になってきたが、黒田氏は「ハードウェアだけではなく、ソフトウェアと組み合わせた進化が重要なのです」と指摘する。

 その例として黒田氏が挙げるのは、遺伝子分析コストの推移だ。「米国立衛生研究所(NIH)の統計によると、2001年時点の遺伝子分析コスト(人間一人分)は約100億円かかっていました。当然、普通の人は遺伝子分析を行うことは現実的に不可能な状況でした。その後、遺伝子分析コストの推移は、2007年ごろまではムーアの法則と同程度でしたが、2008年ごろから劇的に下がり始めました。ムーアの法則を大きく上回るコスト低下が実現し、2015年には遺伝子分析コストは約10万円にまで下がりました。15年間で10万分の1にまで低減したのです。2030年までにさらに1000分の1になると仮定すると、コストは約100円に、遺伝子分析にかかる時間は26時間(2015年時点)から94秒にまで短縮できると予測できます」

 なぜこれほどまでに、コストが下がったのか。それは、ソフトウェアを改善し、分析の手法を変更したからだ。「ハードウェアとソフトウェアの相乗効果が、これほどまでに劇的な効果を導きました」と黒田氏は語気を強める。

「ハードウェアだけではなく、ソフトウェアと組み合わせた進化が重要なのです」
Dell EMC 黒田晴彦氏

フォグとミスト、そして分散コア

 こうした例は、フラッシュメモリーの進化にも当てはまる。「SASディスクからSATA SSD、NVMe SSD、そしてNVDIMMに至るまでに約4万倍の高速化が実現していますが、これもハードウェアだけではなくソフトウェアが効いています。バッファリングやキャッシングなど従来必要だった余分な処理が不要になり、例えば、NVDIMMとSQLを組み合わせたときに非常に高速なデータ処理が実現するのです。ソフトウェアとハードウェアの組み合わせの効果と言えるでしょう」(黒田氏)

 現在、注目を集め始めているFPGA(Field Programmable Gate Array)も同様だと黒田氏は続ける。「FPGAはAIの処理を高速化できる特長がありますが、従来までは低級言語によるプログラミングが必要でした。しかし、現在はPythonやJavaのような高級言語でプログラミングできるようになってきているのです。こうした中、インテルはFPGAメーカーのアルテラを買収してインテルFPGAとして提供を開始し、Dell EMCはいち早くサーバー製品へのインテルFPGAの採用を決めました。また、プロセッサーの観点では、CPU、GPUに加えて、AI/機械学習に特化したIPU(Intelligence Processing Unit)がこれからは注目を浴びていくでしょう。重要なのは、並列処理の高速化による進化とその恩恵です」

 ハードウェアとソフトウェアがこのように進化し、並列処理への注目が高まるにつれて、コンピューティングモデルにも新たな概念が加わっている。「今年の3月にNIST(米国立標準技術研究所)が発表したのは、従来のエッジとクラウドに、フォグ(Fog)とミスト(Mist)を加えたモデルです」と黒田氏は話す。

 フォグコンピューティングは、クラウドとエッジの中間に位置するフォグノードがクラウドからエッジ側の処理を切り離し、自律・協調してデータの取得・管理・処理を分散する仕組みだ。そしてNISTの資料によれば、ミストコンピューティングは、フォグノードがエッジ端末とクラウドをつなぐのに対して、ミストノードがエッジとフォグノードのさらに中間に位置するイメージとなっている。コンピューティングがより細分化・並列化して実行される仕組みだ。

 エッジ端末でさまざまなデータを収集し、ミストやフォグノードで適宜処理され、さらにクラウド側でコアとなる分析が実行され、その結果がまたエッジ側に送られる。もちろんエッジ側で行える処理はエッジで実行してしまう。「このような流れの中で分散型コアアーキテクチャが生まれました」(黒田氏)

エンドツーエンドで支える

 Dell EMCが進める分散型コアアーキテクチャでは、エッジに求められる要素として、「オープン」「エコシステム」「運用管理」「セキュリティ」、分散型コアには「ソフトウェアデファインド」「クラウド対応」「アジャイル」、そしてクラウドには「スケールアウト」「ハイブリッドクラウド」「データレイク&HPC」が定義されている(図参照)。「IoTの時代における何十億個というデバイスで構成されるシステムをエンドツーエンドで支えるアーキテクチャです」(黒田氏)

 このアーキテクチャの上で、IoTやAI/機械学習、マルチクラウド、Software-Defined Everything、そして、VR/AR活用による没入型・共同作業型コンピューティングなどが実行され、企業のデジタルトランスフォーメーションが実現されていくという。

 実際にエッジでのコンピューティングを実現する製品としてDell EMCでは、タワー型からラック型、そしてモジュラー型までの幅広いサーバーラインアップを用意しているが、さらに高耐久性が求められる現場には、ラグド仕様のサーバーも提供している。

「米軍の現場でも使用されているのが1U2ソケットサーバーの『PowerEdge XR2』です。米国防総省制定のミルスペック準拠で、ベゼルには防塵用のフィルターを装備し、交換や洗浄が可能です。産業グレード、海洋グレード、ミリタリーグレードのいずれにも適した堅牢性の高いサーバーです」(黒田氏)

 エッジにおけるゲートウェイや組み込み用途としては、「Edge Gateway 3000/5000」シリーズや、「Embedded Box 3000/5000」シリーズなどもラインアップする。

「Dell EMCは、クラウド向けのコンピュート基盤からエッジソリューションまでエンドツーエンドでの提供で、分散型コアアーキテクチャの構成とデジタルトランスフォーメーションの実現を支えていきます」(黒田氏)

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