
マイクロソフトが語るWindows Server 2008/R2移行提案のポイント
Don’t forget! Windows Server 2008/R2 EOS
Windows ServerのEOSも忘れずに!
2020年1月14日にサポートが終了するのは、Windows 7だけではない。Windows Server 2008/R2もまた、EOSを迎えることになる。ITサプライヤーにとっては、大きなビジネスチャンスの到来だ。単純な置き換え提案ではなく、顧客課題に結びつく付加価値提案をしていこう。
Chapter 1
MICROSOFT
サポート終了時の混乱を回避するために、早期の移行アナウンスを開始した日本マイクロソフト。Windows Server 2016に移行するメリットや提案のポイントは?
焦点はセキュリティ対策
「Windows Server 2008/R2のサポートが2020年1月14日に終了します」——。従来よりも早いタイミングで移行促進の活動を開始した日本マイクロソフト。同社やサーバーベンダーなどがWindows Server 2008/R2 EOS関連の説明で採用するMM総研の調べによると、2017年9月末の時点で、約46万台(ホストとゲストを合わせると合計約76万台)のWindows Server 2008/R2サーバーが稼働していた。これはサーバーの年間出荷台数に匹敵し、大きなビジネスチャンスが存在すると指摘されている。
基本的なことではあるが、EOSを迎えたOSを利用し続けると、サポート対応やセキュリティにおいて大きなリスクを抱えることになる。障害発生時の対応が困難になったり、セキュリティ更新プログラムの新規開発が終了するために最新のセキュリティリスクに耐えられなくなったりするからだ。もちろん、古いOSを搭載したサーバーは老朽化もしているだろうから、ハードウェア自体の故障率も上昇する。
「特に今、Windows Server 2016への移行を推奨するのは、セキュリティ面が大きいですね。経済産業省が情報処理推進機構(IPA)とともに策定している『サイバーセキュリティ経営ガイドライン』の改訂や、2018年5月からEUで施行された『一般データ保護規則(GDPR)』に対応できるセキュリティ環境の構築が求められているからです」(日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 伊賀絵理子氏)
サイバーセキュリティ経営ガイドラインは、経営戦略上ITの利用が不可欠である企業の経営者を対象に、経営者のリーダーシップの下で、サイバーセキュリティ対策を推進するための指針としてまとめられている。2015年12月にVer1.0、2017年11月にVer2.0が公開された。大幅に改訂されたVer2.0では、ウイルスの検知・復旧に関する記述が充実するなど、ウイルス感染を前提とした対策の強化を経営者に求めている。
一方のGDPRは、EUにおける個人情報の保護という基本的人権の確保を目的に策定された規則で、個人情報の厳重な取り扱い体制やルール作りが必要となる。EUを含む欧州経済領域(EEA)域内に現地法人・支店・駐在員事務所を設置するすべての企業・団体・機関が、GDPRへの対応を求められている。また、EEA域内に現地法人などを設置していなくても、インターネット取引などでEEA所在者の顧客情報を取得する場合は適用対象となり得る。
このように強固なセキュリティ対策やデータ保護体制が要求される現在の企業環境においては、最新のIT環境を想定して開発され、仮想マシンのセキュリティ強化や特権IDのアクセス管理機能なども備えた最新OSであるWindows Server 2016への移行に大きなメリットが見込まれるのだ。「セキュリティ以外にも、Windows 10との高い親和性や、2027年1月11日までの長いサポート期間などの要素が、Windows Server 2016への早期移行を促すポイントになるでしょう」(伊賀氏)
計画から本番運用まで約2年
サーバーの移行スケジュールはどれくらいの期間を想定すればよいのか。伊賀氏は説明する。「サーバーの移行は新規導入よりもリスクや制約が多く、常にユーザーの生産性を意識しなければなりません。Active Directoryの移行なども含む場合、全社への影響が生じます。そのため、余裕を持った移行計画を立てて、実行していただきたいですね。同時期にPC OSのWindows 7のEOSも迎えるので、なおさらです」
サーバーOSの一般的な移行手順は以下の通りだ。
1.現状の調査
対象となるサーバーの洗い出し
構成情報の記録
運用方法の記録
ドキュメントの有無の確認など
2.移行計画の策定
ワークロードの移行先の選定
ワークロードの移行方法の選定
使用する機器の選定
HW、SW、サービスの選定
導入後の運用管理の決定
予算確保、スケジュールなど
3.移行手順の検証
PoC(概念実証)
パイロットテスト
4.移行
-移行前
万一に備えてバックアップを取得
データのクリーンアップと統合
ユーザーへ通知
-移行中
HW、SWに関するベンダー担当者を確保
ダブルチェックなどミスを防ぐ体制を整備
-移行後
移行の検証と修正作業
新システムへの切り替え判定
「実際に計画から本番運用まで約2年はかかると考えてよいでしょう。新元号への移行や消費税率の引き上げなども想定されるので、今すぐの対応をお薦めします」(伊賀氏)
選択肢は物理、VM、クラウド
Windows Server 2008/R2の移行の際に考えられる主な移行先は三つある。物理サーバー、仮想マシン、クラウドだ(下図参照)。「現在はクラウドへの移行を検討されるお客さまも多くなっています。もちろん、オンプレの物理サーバーで既存のリソースを活用したいと考えるお客さまも存在します。また、リソースを有効活用するために仮想化統合を検討する場合も想定されます。ワークロードやコストなどを勘案した適材適所の提案が必要です」
マイクロソフトではクラウド環境への移行先としてMicrosoft Azureを用意しているが、「Azureでサポートされない役割や機能、対応していないワークロードもあります。Azureで対応できない場合は、オンプレの仮想環境への移行などを検討していただきたいですね」と伊賀氏は説明する。
■Azureでサポートされない役割と機能
サポートされない役割
・動的ホスト構成プロトコルサーバー
・Hyper-V(Dv3およびEv3を除く)
・Rights Managementサービス
・Windows展開サービス
サポートされない機能
・インターネット記憶域ネームサーバー
・マルチパスI/O
・ネットワーク負荷分散
・Peer Name Resolution Protocol
・Direct Access など
■Azureでサポートされるワークロード
・Windows Server 2003以降
・BizTalk Server 2013以降
・Exchange Server 2013
・HPC Pack 2012以降
・SQL Server 2008(64ビット版)以降
・System Center 2012 Service Pack1(SP1)以降(VMMを除く) など
顧客ニーズを把握し、物理サーバー、仮想マシン、クラウドのメリットを押さえた移行提案で、Windows Server 2008/R2 EOSのビジネスチャンスを獲得していきたい。
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