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クラウド基盤サービス市場の成長率と今後の注目サービス

クラウド基盤サービス市場の成長率と今後の注目サービス

2018年06月20日更新

クラウド基盤サービス市場は右肩上がりに成長
導入検討中企業の35.3%がAzureを導入候補に挙げる

中小企業が手軽に利用しやすいクラウドサービスは、やはりSaaSが多い。しかし最近、中小企業でもIaaSやPaaSといったクラウド基盤サービスを導入するケースが増えてきているという。その市場背景について、矢野経済研究所に話を聞いた。

Lesson 1 2017年クラウド基盤サービス市場は前年比33.3%増

 矢野経済研究所は2018年3月16日に「クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査(2018)」を発表した。調査によると、2017年の国内クラウド基盤サービス市場は、前年比33.3%増の2,400億円(事業社売上高ベース)と大きく拡大した。この市場拡大の要因について、本調査を担当した同社のICT・金融ユニット 上級研究員 小山博子氏は「従来まで大企業が導入のメインであったクラウド基盤サービスを、中堅中小企業が導入するようになったことが大きな要因として挙げられます。その背景には、2017年1月に大手金融グループがAmazon Web Services(AWS)の採用を発表したことがあると考えています」と語る。

 金融業はセキュリティに対する意識が厳しく、それ故にオンプレミスのシステム導入が主だった。しかし、そうした金融業がクラウドを利用するという発表があったことを受けて、中堅中小企業にとっても「自社が利用してもセキュリティに対する不安は少ない」と判断する材料になったため、導入が後押しされたと考えられるのだ。こうした動きを受け、2018年の同市場(同ベース)は前年比29.2%増の3,100億円に達すると見込んでいる。

「クラウド導入に対する意識も変化しています。2013年夏頃にクラウド移行に関する調査を実施した際は、『クラウドに一切移行しない』と回答したユーザーは28.3%でした。しかし今回の調査を行った2017年夏頃には17.9%まで下がってきており、クラウド導入に対する抵抗感が減ってきていると感じています」と小山氏。クラウドを導入したユーザー企業の事例が増加していることが、こうした抵抗感の払拭につながっているようだ。

Lesson 2 ハイブリッドクラウドやマルチクラウド利用が増加傾向に

 クラウド基盤サービスを導入する企業の裾野が広がってきたことで、利用目的にも変化が生じている。数年前であればバックアップ用途にクラウド基盤サービスを利用するユーザーが主であったが、昨今では社内システムの基盤として、比較的長いスパンでクラウド基盤サービスを利用するケースも増えてきているという。

「業務特性に合わせた利用方法として、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用も増加しています。ハイブリッドクラウドの利用例では、パブリッククラウドとプライベートクラウドをつなぐケース、パブリッククラウドとオンプレミスの基幹システムをつなぐケースなどがあると思います。最近増加しているのは、基幹システムとパブリッククラウドを接続するケースですね」と小山氏。またAWSなどのパブリッククラウドを利用しつつ、他社のクラウドサービスも並行して利用するマルチクラウド環境を利用するユーザーも増加傾向にある。背景には、ベンダーロックインを回避する意識や、クラウドベンダー各社によるPaaSの機能差異化によってシステムの価値が向上したことなどが挙げられている。

 それではクラウド基盤サービスを導入する企業は、主にどのような業種になるのだろうか。「インダストリー4.0の影響で、製造業の導入が多いですね。逆に少ないのが流通業で、想定利用シーンが掴みにくく導入しにくいようです。中堅中小企業がクラウドサービスを導入する場合、SaaSから導入するケースが多いため、クラウド基盤(IaaS/PaaS)の導入は大企業と比較して少ない結果となっています」(小山氏)

Lesson 3 エンタープライズ用途の信頼性からAzureの導入検討が増加

 クラウド基盤サービスの利用用途としては、新ビジネスの立ち上げや、期間限定サービス提供のプラットフォームとしての利用など、短期的に大きなリソースが求められる用途として導入される。またソーシャルゲームのプラットフォームとしての利用も依然として大きなシェアがある。

「本調査では、2017年7〜8月に国内民間企業および公的団体・機関517社に対して『導入検討中のパブリッククラウドサービス』についてのアンケート調査を実施しました。この調査結果によると、導入検討中のパブリッククラウドとして、Microsoft Azure(Azure)が35.3%でトップとなっており、AWSが23.5%と2位に伸び悩む結果となりました」と小山氏は注目の動向を指摘する。

 Azureは2014年に国内データセンターを開設して以来、衰えることなく高成長を続けている。その一因としてエンタープライズ用途における高い信頼性が、導入を検討する声に結びついた可能性が高い。一方で、パブリッククラウドでは既にAWSを利用しているユーザー企業が多く、新規顧客層の開拓が難しくなっているという課題から、導入検討の選択肢になりにくかったのだと予想できる。

 小山氏は「AWSは多数の機能を提供しており、ユーザー企業が抱えている課題解決がしやすいサービスですが、その半面AWSしか提供していない機能も多くあり、ベンダーロックインにつながる可能性を危惧しているユーザー企業も多いようです」と指摘する。エンタープライズ用途に強みを持つAzureがアンケート結果と同様にユーザーを増やし続ければ、AWSとAzureの売上高シェアが逆転する可能性もあると考えられる。

Lesson 4 IoTやAIの普及により今後は年率30%で市場が拡大

 小山氏は「パブリッククラウドの中で個人的に注目しているのが、富士通クラウドテクノロジーズの『ニフクラ』です。オンプレミス環境でVMwareの仮想化基盤を使っている企業は多く、ニフクラはその環境をクラウド化する選択肢として挙がりやすくなっています。国内ベンダーですので、日本語UIでクラウドに不慣れなユーザーでも操作がしやすいというメリットがあり、AzureやAWSが利用しにくいユーザーの選択肢として有力ではないかと考えています」と語る。

 クラウド基盤サービスを今後訴求していくターゲット層としては、やはりスタートアップ企業やベンチャー企業といった、新規サービスに対して抵抗感のないユーザー企業が中心となる。しかしクラウドサービスの販売提案によって安定した収益を獲得していくためには、既存の基幹システムをオンプレミスで運用している企業に対しての訴求も必要になる。「例えばクラウドサービスへ移行した後、年間契約で毎月1回ユーザー企業に訪問し、継続的なサポートを実施していくなどの運用保守を実施することで、クラウドへの移行に二の足を踏んでいる既存企業に対しても、クラウドの提案がしやすくなるのではないでしょうか」と小山氏は語る。

 今後のクラウド基盤サービス市場は、前述したとおり中堅中小企業の導入の増加に加えIoTやAIなどデータを収集し分析する必要のある技術が普及するにつれて市場の拡大が予測されている。今後は年率30%で市場が拡大し、2021年には6,500億円まで市場が拡大していく見込みだ。

本日の講師
矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 上級研究員 小山博子 氏

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