ホーム > PC-Webzineアーカイブ > 総務省が実施する教育の情報化推進とは

総務省が実施する教育の情報化推進とは

総務省が実施する教育の情報化推進とは

2018年06月13日更新

教育課程内外からプログラミング教育効果を実証し
全国の都道府県に授業モデルを示す取り組みを実施

教育の情報化に関する事業を実施しているのは、文部科学省だけではない。総務省は2016年度からいち早くプログラミング教育に関する実証事業をスタートするなど、教育の情報化推進に深く関わっている。総務省が担う役割と担当した事業について、話を聞いた。

プログラミング教育の指導事例をいち早く創出

 教育の情報化について、文部科学省がソフトウェア面や指導面、総務省はハードウェア面の環境整備(特に情報通信技術)を主に担当している。総務省の2017年度の事業においては、主に「プログラミング教育」「データ利活用」「Wi-Fi環境整備」の三つを実施した。

 プログラミング教育においては、2016年度から低コストかつ効果的な実施手法や指導者の育成方法などを、クラウドを活用しつつ実証し、全国に普及させることを目的に「若年層に対するプログラミング教育の推進事業」を実施した。本事業を担当した総務省 情報流通行政局 情報活用支援室 課長補佐 本橋充成氏は「2020年度からプログラミング教育の本格導入が決まり、本年4月から教育現場は新学習指導要領対応に向けた移行期間に入りました。しかし、プログラミング教育を学校現場で実施するにあたり、教員からはどのように授業に取り込んでいけばいいのか、といった不安の声も聞こえてきます。こうした教育現場で本格導入に向けた準備をしていく上で参考にしていただくため、課外で学校現場と連携しながらプログラミング教育の実施モデルを実証したのが本事業です」と語る。

 2016年度の本事業では、すべての児童生徒が質の高いプログラミング教育を受けられるよう、地元の人材を指導者(メンター)として育成するとともに、教材コンテンツや指導ノウハウなどをインターネット(クラウド)上で共有・活用しつつプログラミング教育を実施するモデルについて、放課後・休業日の課外を中心に全国で実証した。2017年度は2016年度の実証内容に加えて、障害のある児童生徒(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、知的障害、病弱など)が、クラウドベースで円滑にプログラミングできるコンテンツおよび当該コンテンツを用いた適切かつ効果的な指導モデルを開発・検証し、プログラミング教育に関する格差を解消することを目指した。また2017年度は、特別支援学校の協力のもと、教育課程内での実証も行った。

「事業の効果として、プログラミング教育を知らない教員に対して、学習モデルを示せたことが大きいと考えています。例えばプログラミング教育と一口に言っても、授業内でソースコードを記述させる必要があるのかといった不安を抱えている教員は多くいます。そうした中で、ビジュアルプログラミング言語を使ってプログラミングの概念を学ぶことが、プログラミング教育の授業モデルの一つであることを示せたという効果は大きいでしょう」と本橋氏は語る。今回の実証事業は、全国の学校現場に普及展開の方策を検討していたが、一部の県では実施できなかった。そのため、学校現場と協力してプログラミング教育の一日講座を実施し、すべての都道府県での模擬講座を実現させている。

 さらに、政府としても、情報教育の推進に向けて、文部科学省を中心として、総務省、経済産業省と民間企業等が連携して「未来の学びコンソーシアム」を昨年3月に設立し、学校現場が今後プログラミング教育の本格導入に向けて必要な情報の発信を進めていく。

教育現場におけるデータ利活用を推進

 総務省では、これまでのプログラミング教育実証のノウハウを生かし、2018年度からは学校外での活動に軸足を置いた「地域におけるIoTの学び推進事業」(地域ICTクラブの展開)をスタートさせる。2017年度まで実施してきた若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業でも、課外で学校のコンピューター教室を活用するなど、現場と連携しながら総合学習などの授業を念頭に置いた取り組みを実施していた。地域ICTクラブの展開では、公民館や児童センター、学童など、学校だけでなくさまざまな施設において、放課後や休業日などでプログラミング教育をはじめとするICTの学びを実施していく。

「地域ICTクラブは、スポーツ少年団のプログラミング版をイメージしています。クラブ活動でプログラミングを実施する場合、教員が顧問になりますが、地域ICTクラブでは地域の人材をメンターとして起用ます。ICTに対して高い興味関心を示す子供たちの学習意欲を満たし、こういった子供たちを増やしていきたいと考えています」と本橋氏。新学習指導要領でプログラミング教育が必修化されたとは言え、限られた教育課程内の学習で子供たちの興味関心のすべてに対応することは難しい。そこで放課後や休業日を活用して、保護者や現役技術者、教員や技術者のOBなど地域の人材が子供たちにプログラミングを教えるモデルケースを作り、教育課程内外の双方から情報活用能力を育成することを目指している。

 前述した「未来の学びコンソーシアム」でも、小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類として「教育課程内のプログラミング教育」と「教育課程外のプログラミング教育」に分類され、それぞれの実施事例が紹介されている。「課外からプログラミングを盛り上げていくことで、学校の授業でも『プログラミングを使って勉強したい!』と思う子供たちが増えることを期待しています。また中学校や高等学校ではさまざまなクラブ活動が実施されてしますが、パソコンクラブは野球やサッカーなどの部活動のように実際のところ盛り上がっていません。課外からプログラミングなどのICTを楽しく学ぶことで、児童生徒から自発的にクラブ活動でももっとやりたいという声につながっていくのではないかと考えています」と本橋氏。

 教育現場におけるデータ利活用を推進する「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」は2017年からスタートした事業だ。本事業は文部科学省と連携しており、教員が利用する「校務系システム」と児童生徒も利用する「授業・学習系システム」間の、安全かつ効果的・効率的な情報連携方法等について実証し、「スマートスクール・プラットフォーム」として標準化することを目指している。データ利活用によって、教育の高度化や、教員の事務効率化等を促進させる狙いがある。

 2017年度から五つの地域で実証し、データの使い方などの検証を進めた。本事業を担当した情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室 課長補佐 坂本公生氏は「スマートスクール・プラットフォームについては三カ年計画で実証を進めていき、2019年度には成功させたいと考えています。今後は、特に費用や運用の課題を解消するために、パブリッククラウドの利用を推進していきたいですね」と展望を語る。

災害時に使えるWi-Fiを体育館や廊下に整備

 総務省では、学校現場のWi-Fi整備について、2017年度から三カ年計画で「公衆無線LAN環境整備支援事業」を進めている。防災の観点から、防災拠点(避難所・避難場所、官公署)及び被災場所として想定され災害対応の強化が望まれる公的拠点(博物館、文化財、自然公園等)における公衆無線LAN(Wi-Fi)環境の整備を行う地方公共団体等に対し、その費用の一部を補助するものだ。小中学校も地域の防災拠点としての役割を担っていることから、体育館、グラウンドや、移動制約者に配慮して特別教室におけるWi-Fiアクセスポイント、伝送路(LANケーブル)等の整備を、予算の範囲内で補助できるのだ。

 具体的には、災害時の避難計画のある「体育館、特別教室、多目的教室、廊下」等へのWi-Fi整備が補助対象となっている。普通教室への直接的な整備は補助対象外であるが、避難計画のある特別教室付近の廊下や、住民の避難を想定している廊下等に、Wi-Fiを整備することにより、その電波を普通教室でも利用可となる。平時では、利用者を生徒や教員等に限定することが可能だが、災害が発生した場合、誰でも利用できるようにWi-Fiを開放することが求められる。

 総務省は、文部科学省と連携しながら教育の情報化を推進している。注目を集めているプログラミング教育については、未来の学びコンソーシアムによる情報発信に加え、今後は民間企業と教育現場との連携を後押しできる仕組み作りも進めていきたいと本橋氏は話す。

「学校現場にプログラミング教育等のICT教材を提案する上で必要になるのが、なんといっても指導案です。教材単体ではそれがどう授業に活用できるのかイメージがわきにくいため、そのICT教材を使って、どのように授業をすればいいのかという指導案とセットで提案してほしいと考えています。未来の学びコンソーシアムでは、先進的な学校現場と民間企業が連携できる仕組み作りを進めていきたいと考えていますので、学校現場と民間企業がともに手を取りながら、教育の情報化を進めていってほしいと思います」と本橋氏は展望を語った。

(左)総務省 本橋充成氏
(右)総務省 坂本公生氏

キーワードから記事を探す