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仮想センサーによる新しい見える化で空間の雰囲気やヒトの関係性を可視化

仮想センサーによる新しい見える化で空間の雰囲気やヒトの関係性を可視化

2018年06月19日更新

兵庫県神戸市にある親和保育園(社会福祉法人親和福祉の会)で2018年2月20日と21日に実施された実証実験の様子。タブレットの画面に表示されているのが可視化された空間の雰囲気で、円グラフの赤い部分は興奮状態、緑の部分は落ち着いている状態、黄色い部分は楽しんでいる状態、青い部分は沈んでいる状態を示している。

仮想センサーによる新しい見える化
空間の雰囲気やヒトの関係性を可視化

飲食店や小売店などの店内に入ると、人の話し声などから「雰囲気」を感じ取ることができる。しかし「雰囲気」はなんとなく楽しそう、なんとなく居心地が悪いなど、あいまいな情報であるためデジタル化することが難しかった。それを可能としたのが村田製作所が開発した仮想センサープラットフォーム「NAONA」だ。

空気が読める日がやってきた
空間の雰囲気を可視化する

 KY(空気が読めない)と言われている人には朗報かもしれない。いよいよITを使って空気が読めるようになるからだ。KYと呼ばれる人とは周囲の雰囲気を配慮せず、周囲と協調した行動や言動をしない人のことを表現した流行語だ。

 人は感覚的に空間の雰囲気を感じ取ることができる。例えば飲食店に入って店内が騒がしい場合、「この店は楽しそうだ」と感じる場合もあれば「うるさくて不快だ」と感じる場合もあるだろう。同じように騒がしい空間であるにもかかわらず、何を基準に雰囲気を判断しているのだろうか。

 それは大勢の人の声に含まれる音声のトーンであったり、会話のスピードだったり、高揚であったり、こうしたたくさんの複雑な要素を脳が本能的に解釈しているのだろう。
 しかしさまざまな領域でこれまで可視化できなかった情報が次々とデジタルデータ化されているにも関わらず、空間の空気、すなわち雰囲気は今もデジタル化されていない。そこに目を付けたのが村田製作所だ。

 村田製作所は空間の雰囲気や盛り上がり、会話を通じた人と人との関係性といった情報を空間情報としてセンシングして可視化する、仮想センサープラットフォーム「NAONA」を開発した。NAONAのプラットフォームはさまざまなセンサーデータから雰囲気などの認知情報を「解釈」する仕組みを備えている。

村田製作所 技術・事業開発本部 IoTプロジェクト推進室 IoTプロジェクト推進1課 マネージャー 笹野晋平 氏

仮想的に雰囲気センサーを作る
まずはマイクで会話の音声を収集

 ではNAONAはどのようにして空気を読む、すなわち空間の雰囲気を可視化するのだろうか。センサーとなるのはマイクである。マイクが空間に存在する音声を収集する。マイクは例えば店舗ならば同一のフロアにエリアを区切って複数の箇所に設置する。

 マイクで空間内の音声を拾い、その音声データに含まれる特徴量をエッジデバイスで分析してNAONAクラウドにアップロードする。そしてNAONAクラウド上のプラットフォームで雰囲気を解釈し、その結果を空間ごとに可視化してユーザーに提供する仕組みだ。

 NAONAの開発に携わっている村田製作所の技術・事業開発本部 IoTプロジェクト推進室IoTプロジェクト推進1課でマネージャーを務める笹野晋平氏に話を聞いた。

 まずNAONAの特長である「仮想センサー」の意味について「NAONAは人が感じる雰囲気などの認知情報を可視化します。しかし雰囲気というデータを収集するセンサーは存在しません。そこで雰囲気を知るのに必要となる複数のセンサーを組み合わせて仮想的に「雰囲気センサー」を作り上げてデータを収集、分析し、雰囲気を解釈して可視化します。現在は雰囲気センサーの第一歩としてマイクを利用しており、空間内の音声データを収集してその特微量を分析し、雰囲気を可視化しています」と説明する。

低コストでシステムを構築できる
アイデア次第で新しい商機も創出

 NAONAは昨年開催されたCEATEC JAPAN 2017の同社のブースで公開された後、実証実験などを通じて実用化に向けた機能や仕組みの見直しや、新たな開発が進められている最中だ。

 実証実験は今年2月に2カ所で実施された。まず2月19日より実施されているのがPhone Appliでの二者の関係性の可視化だ。Phone Appliでは上司と部下とで定期的に面談が行われており、その際の会話の音声データを解釈することで二者の関係性を可視化して、会議の質を見える化するのが目的だ。

 2月20と21日には兵庫県神戸市にある親和保育園(社会福祉法人親和福祉の会)で実証実験が実施された。室内にいる子どもたちの様子を別の場所から把握することが主な目的だ。子どもたちの雰囲気や感情の変化を可視化することで、保育士が別の場所で作業をしていても子どもたちの安全を確認でき、子どもたちが必要とする対応ができることを目指している。

 実証実験の効果について笹野氏は「まだ取り組みを進めている部分も多く、具体的な効果は測定できていませんが有効性があることは評価されています」と説明する。

 前述の通りNAONAは仮想センサーが特長となる新しいIoTのプラットフォームだ。現在はセンサーにマイクを使用しているが、さまざまなセンサーを組み合わせることでこれまで可視化できなかった情報を可視化できる可能性がある。

 すでに可視化されている情報に関しても、別の側面、例えばマイクと熱センサーを組み合わせて混雑具合を可視化することも可能だろう。笹野氏は「カメラによる映像解析はシステム全体のコストや仕組みが大きくなりますが、NAONAの仮想センサーならば低コストで可視化できる利点もあります」と優位性をアピールする。誰もが空気を読める日はもうすぐやってくる。なおNAONAの事業化は2018年中の予定だ。

CEATEC JAPAN 2017で村田製作所のブース内の活況を可視化した画面。色が濃い(赤い)部分が活況度が高く、盛り上がっている。
Japan IT Week 春2018のIoT/M2M展で展示された雰囲気の可視化のデモ画面。雰囲気や生産性の度合いや変化をいろいろな見せ方で可視化できる。
USBコネクターにセンサーが内蔵されており、エッジデバイスに接続してワイヤレスでゲートウェイにデータを伝送してクラウドにアップロードする。

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