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Society 5.0 の社会実装

Society 5.0 の社会実装

2018年05月10日更新

Society 5.0の社会実装

Society 5.0の社会実装を前進させる上で、重点的な投資分野を策定しているのが日本経済再生本部による「未来投資戦略」だ。中小企業の革新もテーマの一つになっている。

社会オリエンテッドの戦略

 日本経済再生本部は、日本経済の再生に必要な経済対策の実施や成長戦略を実現するための司令塔として設置されている。そして、未来への投資の拡大に向けた成長戦略と構造改革の加速化について審議するために「未来投資会議」を開催している。同会議において策定されているのが「未来投資戦略」だ。

 内閣官房 日本経済再生総合事務局 内閣参事官 佐野究一郎氏は、未来投資戦略について次のように説明する。「未来投資戦略は、Society 5.0の社会実装の方向性をまとめたものです。社会課題の解決のもとに民間企業の投資を促進し、経済成長につなげていくことを目的としています。Society 5.0ではIoTやビッグデータ、AIなどの活用がうたわれていますが、重要なのは技術を中心とした“技術オリエンテッド”の視点ではありません。社会課題の解決が中心となる“社会オリエンテッド”の視点が基軸になるべきです。その視点で検討されているのが未来投資戦略なのです」

 Society 5.0は、Industry 4.0などと比較されるケースもあるが、Industry 4.0は技術オリエンテッドの視点であると佐野氏は指摘する。Society 5.0は、Industry 4.0をさらに前進させた構想だというのだ。

ドイツの「Industry 4.0」や米国の「Industrial Internet」が、主として製造業の生産管理や在庫管理をIoTによって個別工場や企業の枠組みを超えて最適化しようとする試みであるのに対し、我が国は、製造業を超えて、モノとモノ、人と機械・システム、人と技術、異なる産業に属する企業と企業、世代を超えた人と人、製造者と消費者など、様々なものをつなげるConnected Industriesを実現していかなければならない。
我が国が目指す「Society 5.0」は、先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、「必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供する」ことにより、様々な社会課題を解決する試みである。
―未来投資戦略2017 基本的な考え方

「Society 5.0は、現在グローバルで取り組まれている『SDGs(持続可能な開発目標)』と重なる部分も大きいのです」(佐野氏)

内閣官房
日本経済再生総合事務局
内閣参事官
佐野究一郎 氏

日本の強みに重点投資

 未来投資戦略2017では、「モノづくりの強さ」「社会課題の先進性・大きさ」「リアルデータの取得・活用の可能性」といった日本の強みに対して、政策資源を集中的に投資する戦略が打ち立てられている。実際にSociety 5.0に向けた戦略分野としては、「健康寿命の延伸」「移動革命の実現」「サプライチェーンの次世代化」「快適なインフラ・まちづくり」「Fintech」の五つの分野が挙げられている(上図参照)。

「これらは社会課題の先進国である日本だからこそ取り組めるテーマでもあります。例えば、データの活用で健康状態を可視化し、病気を防いだりする仕組みや、人手不足が顕著な地域において、自動走行による移動サービスの実現などを目指しています」(佐野氏)

 各戦略を進めていく上で重要になるのは、やはり共通基盤の強化だ。

新しい社会インフラとなる「データ基盤(リアルデータプラットフォーム)」を構築する。政府・地方公共団体等の公共データについて、民間ニーズの高い公共交通や自動走行などの分野で徹底的にオープン化していくとともに、民間データについて、企業の枠を超えたデータの連携を後押ししていく。あわせて、データの利活用を促すように、知的財産制度や標準化をはじめとしたルールの高度化を実現する。
―未来投資戦略2017 基本的な考え方

「未来投資戦略の各施策は専門家だけで進めるのではなく、市民や民間企業を巻き込んでともに取り組めるかどうかが成功の鍵になるでしょう。共同でのルール作成が理想です。AIは雇用をなくすとも言われていますが、社会課題の解決策として市民とともに制度などを設計していきます。自動走行などITを活用した新しいサービスに対する社会の受容性を高めていくことも必要ですね」(佐野氏)

 国としては、健康寿命の延伸や移動革命の実現などの足かせとなる規制について、「『まずはやってみる』という『実証による政策形成』に舵を切る」ことを未来投資戦略2017の中で明言している。参加者や期間を限定することで試行錯誤を許容する、規制の「サンドボックス」制度を導入していくというのだ。「イノベーションの促進を、規制のサンドボックス制度が強く後押しするはずです」(佐野氏)

 行政手続の在り方についても、事業者目線で徹底的に洗い直すことで、規制改革・行政手続きの簡素化・オンライン化を一体的に推進し、重点分野の行政手続きコストを原則20%以上削減することを目指している。「2020年をめどにした行政手続きの完全オンライン化を進めています」(佐野氏)

中小企業の事業革新や生産性向上を支援

 未来投資戦略2017では、「地域経済好循環システムの構築」というテーマで、中小企業の事業革新や生産性の向上を支援する取り組みも明記された。目指すのは以下のような姿だ。

(小売)ITの専門性が特になくても、身近な税理士などの勧めでクラウドサービスを導入(月額数千円〜)。POSレジや受発注システムと連携して売上・仕入れデータが自動生成され、経理や確定申告が簡単に。データ分析とAIによって商品の入れ替えと価格の最適化を行い、さらなる顧客価値の高い新サービスを開始。

(観光地)地元有志が設立したまちづくり会社やDMO(観光地域づくりの舵取り役)が、地域の銀行やファンドから資金や経営支援を得て、景観を整備し、空き店舗や古民家などの地域資源を再生。IT企業出身者や若手人材が活躍し、観光客のデータを分析して、街の活性化と個々の事業者の生産性向上を実現。国内外からの観光客で四季を通じてにぎわっている。

 これらを実現させるための施策として未来投資戦略2017には、中小企業によるITやIoT、ロボットの活用・導入促進が盛り込まれている。専門家の支援を1万社以上に対して実施し、データを用いた新サービス・付加価値創出を支援するというものだ。合わせて、資金・人材、圏域全体の活性化という視点でも施策が実施されている(下図参照)。

 さらに、生産性革命という視点から未来投資会議によってまとめられた新たな経済政策パッケージが昨年12月に閣議決定された。その中では中小企業や小規模事業者の生産性革命を促進するために以下のような施策が明記されている。

生産性向上に必要なIT・クラウド導入を、強力に支援する。また、ITツール、IT事業者の実績等の「見える化」や、身近な支援機関による経営改善支援等、地域での支援体制(プラットフォーム)を構築する。これらの取組により、3年間で全中小企業・小規模事業者の約3割に当たる約100万社のITツール導入促進を目指す。
―新しい経済政策パッケージ 第3章 生産性革命

「中小企業などではIT化による業務の効率化の効果は大きいと考えています。例えば財務や人事労務などをクラウドサービスで実現するだけでも、相当な負担軽減になるでしょう。そうした効率化を後押しする施策を実施していきます」(佐野氏)

 中小企業を対象にしたこれらの施策による国内全体の底上げが、Society 5.0の実現を近づけることになる。

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