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インバウンド促進のために山形県がアリペイ導入の事業者を支援

インバウンド促進のために山形県がアリペイ導入の事業者を支援

2018年05月25日更新

山形県がアリペイ導入の事業者を支援
〜インバウンド促進のために経費を最大50万円補助〜

2017年に日本を訪れた外国人は2,869万人だった(国交省発表)。「訪日旅行促進事業」に取り組んでいる観光庁は、2020年には4,000万人、インバウンド消費額8兆円を目指すという。地方自治体でも、地域の観光資源をアピールしたり、観光客を呼び込む環境を作って「地方が稼ぐ力」を醸成しようとしている。そうした中で山形県は、中国で利用されているアリペイ決済システムを導入する民間事業者への補助事業をスタートさせた。事業の目的、内容、課題などを探った。

中国からの訪日観光客増が目的

「アリペイ(Alipay)」は、スマートフォンを用いた決済が主流になっている中国で、登録ユーザーが5億人を超えるモバイル決済システムだ。この決済方法を採用し、中国人観光客からのインバウンド効果を狙おうというのが山形県の考え方。この3月までインバウンドを担当していた山形県 庄内総合支庁 観光振興室 主査 菅原彰一氏は、導入の背景や目的を次のように語る。

「東北全体の課題でもあるのですが、本県もインバウンドのお客さまが少ないのが実情です。全国的には中国からの観光客が一番多い中で、本県に限れば台湾、韓国に次いで第3位です。ハルビンに駐在事務所を置き、コーディネーターが情報収集やプロモーションを行っているのですが、ここ数年、中国内の決済システムが劇的に変わってきていると聞いていました。アリペイというシステムについては、昨年の春頃からその利便性や登録ユーザーが約5億人も存在するという話などを聞いていました。観光客を増やすには多様な決済システムを持つことが大事だと認識していましたし、その中でもモバイル決済に早めに手を打つことは誘客面でかなり期待できるのではないかと考え、1年ほど前から導入促進を検討してきました」

「平成29年度山形県インバウンド決済システム等環境整備事業費補助金の概要」によると、目的はキャッシュレス決済に取り組む県内の小売業、飲食業、宿泊施設、観光施設などインバウンドの受け入れ拡大に意欲のある事業者に補助を行い、利便性を向上させ、外国人観光客の誘致拡大につなげようというもの。

 アリペイのシステム、導入に必要な設備の整備(Wi-Fi環境の整備、自社サイトの多言語化、飲食メニューの多言語化、買い物環境整備、施設のユニバーサル環境整備など)に対して補助を行う。予算総額は1,500万円。補助金額は補助対象経費の2分の1以内で上限額は50万円。昨年12月、県内から応募者を募る一方、酒田市に集中的に導入を進めるという2本の柱でスタートした。

酒田市の観光・宿泊施設に集中的に導入

 補助金額の上限が50万円といっても、応募の内容は多種多様。例えば、5万円のタブレットなら、その半額で2万5,000円の補助というケースもある。その一方、Wi-Fi環境の整備や多言語対応のために飲食のメニューやパンフレット、ホームページなどを多言語化したり、和式トイレを洋式化したりする事業も補助対象としたので、総額が100万円、150万円に達し、補助額上限の50万円まで行くケースもあるという。

 昨年の12月に第1期の募集を始め、当初予算の1,500万円に達しなかったので、引き続き今年1月と2月に第2期、第3期(2018年2月28日締め切り)の募集を行った。現時点ではすでに募集は終了している。これまでに補助が決定した数は41施設だという(2018年4月9日時点)。

「東北地域へ誘客するための東北観光復興対策交付金事業の一つとして、県内各地にモバイル決済システムを置くことが大事だと考えました。加えて、1カ所に集積した実施もプロモーションとして効果的ではないかと考え、山形県酒田市でアリペイを集中的に導入する事業を行いました」

 酒田市は、山形県内で唯一、外航クルーズ船が入港する港町であり、観光資源にも恵まれている。昨年度、初めてクルーズ船が寄港し、今年度も4隻ほど来航予定になっている。今後は上海などを経由する船の誘致も行い、中国人観光客を増やしていこうという機運がある。県としては、観光施設、宿泊施設、飲食店、物販店などにアリペイ決済システムを置いてもらうようにはたらきかけた。タクシーへの導入も検討されたが、配線面で保留になっている。バスなどへの設置も課題だという。

時代のニーズに即した決済環境の整備を

 支援事業の募集終了からまだ日が浅いため、目に見える実績は得られていないが、先行投資的な意味で導入は進められている。アリペイが使える店が増えれば、今後、中国からの観光客が増えるのではないかと菅原氏は期待している。

「総合的に考えれば、中国人の宿泊施設が増えること、立ち寄り客が増えることが最終的な目標になります。それに資するような取り組みにならなければなりません。アプリでアリペイが利用できる店を表示できたりすれば、そこに行ってみようというインセンティブも働きます。それをモデル的に進めているのが酒田市です。宿泊施設、土産屋、飲食店など色々な業種の店にアリペイの決済システムを導入してもらいました。今年は、クルーズ船で入港する観光客や新潟空港から山形へ来られる観光客にも利用してもらえるかもしれません」(菅原氏)

 2019年には、国内最大規模の観光キャンペーンと銘打って「新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーン」が開催される。新潟県・庄内を、京都、東京に次ぐ食文化の街にするため、「うまさぎっしり新潟」「おいしい食の都庄内」を推し進め、「日本海ガストロノミー(美食旅)」の誘客を図るという。今回の事業はその一助になるという。

 政府は、2020年に訪日観光客4,000万人を目指すというが、東京以外にも来てもらわないと、数字は達成できないと菅原氏は指摘する。

「山形、東北に来ていただくためにどうしたらいいか、官民一体となって考えていきたいですね。今回はモバイル決済に焦点を当てて導入支援事業を展開しましたが、Wi-Fi環境の整備やトイレ洋風化などの環境整備のほかに、観光客と宿泊施設や各店舗側とのコミュニケーションを円滑にするための接遇セミナーを行うなど、ソフトの面も考えていく必要があります。世の中の動きは刻一刻変わっているので、時代に応じてニーズを捉えていかなければならないですね」

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