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IoT 新時代の未来づくり

IoT 新時代の未来づくり

2018年05月11日更新

IoT新時代の未来づくり

国の情報通信政策をとりまとめる総務省は、Society 5.0を形作るIoTの総合戦略を打ち出している。さらに2030年代を見越した新たなTECH戦略も策定中だ。

データ主導社会のIoT総合戦略

「Society 5.0の実現において、国の情報通信政策をとりまとめる総務省が寄与できる部分は大きいですね」——。こう語るのは、総務省 情報流通行政局 情報通信政策課 課長補佐 岸 洋佑氏だ。総務省の諮問機関である情報通信審議会は、昨年の1月に「IoT総合戦略」を策定した。IoT総合戦略ではSociety 5.0の社会を、データの生成・収集・流通・分析・活用を徹底的に図ることによって、製造過程はもとより、あらゆる社会経済活動を再設計し、社会の抱える課題解決を図っていく社会、いわゆるデータ主導社会(Data Driven Society)だと捉えている。そのデータ主導社会におけるキーとなるのが、ビッグデータ、IoT、AIだ。

データ主導社会の実現を目指す上でビッグデータの利活用が鍵となる。そしてビッグデータを収集するための手段がIoTであり、ビッグデータを分析・活用するための手段がAIである。ビッグデータには、国や地方公共団体が提供するオープンデータ、農業やインフラ管理に係る暗黙知(ノウハウ)を形式知化(構造化)したデータ、M2Mから吐き出されるストリーミングデータ、個人の属性に係るパーソナルデータなど多種多様なものが含まれる。これら様々な静的・動的なデータを組み合わせ、従来は想定し得なかった新たな課題解決のためのソリューションの実現につなげる。
―「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方について 第三次中間答申」第1部 IoT総合戦略

 IoT総合戦略では、「ネットワーク層」「プラットフォーム層」「サービス(データ流通)層」「端末層」というレイヤー別の施策と、地域におけるIoTの普及促進といったレイヤー縦断(垂直)型の施策が用意された(全体像は下図を参照)。

「データが爆発的に増えていくこれからの社会では、高速で大容量の通信を実現する技術が不可欠です。無線では例えば5Gになりますが、将来的にはその先も見越していかなければならないでしょう。また、大量のデータを柔軟に利用するためには、ソフトウェアでの制御が求められます。そこでSDNやNFVの実装を急ぐ必要がありますが、それらを扱える人材が不足しています。そうした人材育成を活発化させる体制の整備も進めています。将来的には、通信制御にAIの活用も想定されます」(岸氏)

自律型モビリティシステムやAI技術の開発を加速

 例えば、ネットワーク層における施策は、岸氏も言及する5Gの実現やSDN/NFVの実装化などが主体となる。一方、プラットフォーム層の施策では、以下のような機能を備えるシステムの重要性が前提となっている。

・端末層で生成され、ネットワーク層を通じて収集される大量のデータ群を相互連携させ、解析結果を引き出す機能
・個人や端末を認証し、上記の解析結果も活用した上でサービス提供を行う機能

 データの相互連携と認証機能は、公的個人認証サービスや、行政、医療、観光など公的主体が関与すべきサービス分野のプラットフォームにおける機能実装が想定されており、データ活用におけるルールや制度面の環境整備、個人情報のコントローラビリティの確保が図られていくという。また、サービス(データ流通)層の取り組みにおいても、データ活用の促進に必要なルールの明確化、データ取引市場に関わるルールの整備が主体となる。

 端末層は、IoTのエッジを担うパートでもあり、今後のさらなる進化が想定されている。

IoTシステムの普及に伴い、端末層においても従来とは異なる機能要件が求められる。IoTシステムにおける端末(センサー)については、小型化・長寿命化が進むことが想定されるとともに、当該端末の機能追加がソフトウェアの更新によって行われたり、AIによって制御されるなど、端末層と上位層との連携を含め、多様な機能の進化が見込まれる。
以上の問題意識を踏まえ、端末層に係る施策については、多様な端末間の相互接続性を確保するための標準化の推進、端末の脆弱性対策などを講じることに加え、特にAIの活用等による端末制御の高度化を推進する。
―「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方について 第三次中間答申」第1部 IoT総合戦略

 具体的な取り組みとしては、センサー情報を基にネットワークと連携して高信頼・高精度に自動走行させる自律型モビリティシステム(電気自動車、電動車いす、自律ロボットなど)を実現するためのネットワーク技術の確立が挙げられている。移動体に搭載されるセンサーに加えて、高度な自己位置推定や周辺環境認知を可能とする高度地図データベースなどの情報を、遅延なくリアルタイムに収集・把握できる通信ネットワーク技術を、IoT推進コンソーシアムと連携しながら2018年度までに開発することを目標とする。

 また、端末層の取り組みにはAIの社会実装も含まれた。IoT総合戦略には、「言語処理技術や脳情報通信技術などの次世代AI技術は、波及分野が広く国際的にもAI開発競争の主戦場となっている。また、多様な経済分野の発展基盤であるAIの社会実装の加速は喫緊の課題」との認識が示されている。そこで2019年度までに、情報通信研究機構(NICT)が開発した言語処理技術などの最先端のAI基盤技術の社会実装や脳科学の知見をAIに適用した次世代AI技術の開発を行い、これらの国際標準化に向けた取り組みを推進していく。

 レイヤー縦断(垂直)型の施策の一つである「地域におけるIoTの普及促進」では、2020年度までに延べ800以上の地域・団体による成功事例の創出を目指すとしているが、「目標が達成できそうな勢いで進められています」と岸氏は状況を語る。

総務省 情報流通行政局
情報通信政策課 課長補佐
岸 洋佑 氏

2030年代を見越したTECH戦略

 このようなIoT総合戦略を動かしている総務省では、さらなる未来を見据えた戦略の策定を進めている。それが、「未来をつかむTECH戦略」だ。これは、情報通信審議会傘下の「IoT新時代の未来づくり検討委員会」がまとめている。同委員会は、2030年〜2040年頃の未来社会を展望しつつ、IoTやAI、ロボットなどのイノベーションの社会実装など、これから取り組むべき情報通信政策の在り方を検討するために設置されている。

「少子高齢化といった“静かなる有事”が進行している日本を明るい未来に向かわせるための戦略です。2030年代に実現したい未来の姿から逆算して、積極的なIT導入によって変革を実行する改革プランを示しています」(岸氏)

 未来をつかむTECH戦略は、「変革実行の8カ条」「実現したい未来の姿」「政策パッケージ」で構成されている。「変革実行の8カ条」は、Moonshot、Opportunity、Valueなどの八つの観点から変革を確実に実行するための原則が記され、それぞれの頭文字をとって「MOVE FAST」と銘打っている。

 「実現したい未来の姿」では、以下のような社会が想定されている。

「I:インクルーシブ」
年齢・性別・障害の有無・国籍・所得などに関わりなく、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ、豊かな人生を享受できる「インクルーシブ(包摂)」の社会

「C:コネクティッド」
地域資源を集約・活用したコンパクト化と遠隔利用が可能なネットワーク化により、人口減でも繋がったコミュニティを維持し、新たな絆を創る「コネクティッド(連結)」の社会

「T:トランスフォーム」
設計の変更を前提とした柔軟・即応のアプローチにより、技術革新や市場環境の変化に順応して発展する「トランスフォーム(変容)」の社会

 これらを実現させるための政策パッケージについては、現在さらに検討中だ。左の表は現時点での政策パッケージ(案)で、最終的には今年の6月にとりまとめられる予定だ。「これからの日本には課題が山積していますが、総務省としては情報通信の側面から粘り強く取り組んでいき、日本の中長期的な成長戦略でもあるSociety 5.0の実現に寄与していきたいですね」(岸氏)

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