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第5期科学技術基本計画とSociety 5.0

第5期科学技術基本計画とSociety 5.0

2018年05月09日更新

新しい社会が新しいビジネスを生み出すSociety 5.0

IoTやビッグデータ、AIなどをフル活用した新しい社会の形成が進んでいる。その設計図となるのが、「第5期科学技術基本計画」だ。そこに記された超スマート社会(Society 5.0)の姿と、新たに生み出されるビジネスの可能性を追った。

第5期科学技術基本計画とSociety 5.0

日本の未来を左右する「科学技術基本計画」。打ち出されたのはSociety 5.0という概念だ。
国はどのような社会を描いているのだろうか。

目指すべきは超スマート社会

「科学技術基本計画」とは、科学技術政策の基本的な枠組みである「科学技術基本法」に基づいて政府が策定する10年先を見通した5年間の中期計画だ。最新の科学技術基本計画は、2016年に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」。2016〜2020年度までの5年間の計画が盛り込まれた同計画の意図は、次のように記されている。

第5期科学技術基本計画では、科学技術イノベーション政策を、経済、社会及び公共のための主要な政策として位置付け強力に推進する。
未来の産業創造と社会変革に向け、「未来に果敢に挑戦する」文化を育む。人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来の姿として提起し、新しい価値やサービス、ビジネスが次々と生まれる仕組み作りを強化する。
(中略)この基本計画の実行を通じて、我が国の経済成長と雇用創出を実現し、国及び国民の安全・安心の確保と豊かな生活の実現、そして世界の発展に貢献していく。
―第5期科学技術基本計画 はじめに

 第5期科学技術基本計画では、目指すべき国の姿として「持続的な成長と地域社会の自律的な発展」「国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現」「地球規模課題への対応と世界の発展への貢献」「知の資産の持続的創出」を定めている。もちろんこれらは、日本の現状や抱える課題の分析から導き出されている。少子高齢化による地域経済社会の疲弊や社会保障費の増大、インフラの老朽化、自然災害のリスクなどが国内では顕著な課題だろう。

 世界に目を向ければ、人口増加と食料や水資源の不足、気候変動といった環境問題の悪化が深刻化している。その影響は日本にも波及してくる。第5期科学技術基本計画には、これらの課題を解決できる社会の姿が記されているのだ。

 このような社会を実現するために、5期科学技術基本計画では「未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」「経済・社会的課題への対応」「科学技術イノベーションの基盤的な力の強化」「イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築」が掲げられた。同計画の「はじめに」でも触れられている「超スマート社会」(Society 5.0)は、この4本柱の中の「未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」において打ち出された日本の未来の姿だ。そして、その社会の基盤となるのがITなのである。

ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。
―第5期科学技術基本計画 第2章

ITを基盤とした人間中心の社会

 Society 5.0は、これまでの社会を「狩猟社会(Society 1.0)」「農耕社会(Society 2.0)」「工業社会(Society 3.0)」「情報社会(Society 4.0)」と位置づけた上での概念だ。Society 4.0の情報社会、つまり現状の日本では、溢れるデータの共有や活用が十分ではないと第5期科学技術基本計画では指摘している。さまざまな課題に対して有効にデータが利用されていない状況ということだ。来たるべきSociety 5.0の社会では、あらゆるデータを共有・連携させることで、少子高齢化や地方の過疎化、貧富の格差といった課題を解決するという。

 Society 5.0のポイントについて、内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 (総合科学技術・イノベーション会議事務局) 参事官(社会システム基盤担当)の新田隆夫氏は次のように説明する。

「ポイントは三つあります。一つは、『サイバー空間とフィジカル空間の融合』です。例えば、IoTによってつながるセンサーから膨大な量のデータを収集し、それらのビッグデータをAIが解析、そして、フィジカル空間の人間にフィードバックするようなイメージです。二つ目のポイントは、『経済発展と社会的課題の両立』です。これまでは経済発展に相反する形で社会的な課題が複雑化していきました。この問題をIoTやロボット、AIなどの活用で解決することを目指します。モノやサービスを誰もが格差なく享受できる世界でもあります。三つの目のポイントは、『人間中心の社会』です。経済や組織などのシステムが優先されるのではなく、一人ひとりの人間が中心となって快適で活力に満ちた質の高い生活を楽しめる社会です」

 これらを実現するのがITであり、国はその基盤の整備に注力していくことになる。

超スマート社会の実現には、様々な「もの」がネットワークを介してつながり、それらが高度にシステム化されるとともに、複数の異なるシステムを連携協調させることが必要である。それにより、多種多様なデータを収集・解析し、連携協調したシステム間で横断的に活用できるようになることで、新しい価値やサービスが次々と生まれてくる。
―第5期科学技術基本計画 第2章

 Society 5.0に必要な基盤技術として掲げられているのが下図の項目だ。これらがSociety 5.0を形成する社会のサービスプラットフォームの構築に欠かせない要素となる。超スマート社会を形成していくために欠かせないこれらの技術基盤の強化が、これから加速していくのだ。

内閣府
政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付
(総合科学技術・イノベーション会議事務局)
参事官(社会システム基盤担当)
新田隆夫 氏

システム間データ連携プラットフォームを構築

 現在、Society 5.0の取り組みは、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議を中心として、各省庁や産業界との連携で進められている。Society 5.0の柱となるプラットフォームのイメージは上図のようになる。

 Society 5.0の実現に向けた現状のシステム面における重要課題は、「システム間データ連携プラットフォームの構築です」と新田氏は明かす。現時点においても、農業や防災、自動走行といった各分野内でのデータ連携基盤は整備されつつあるが、それらを分野横断的に利用できる基盤はまだ整備されていないからだ。「目指すべきは、分散管理されたデータが一つのデータベースのようにシームレスにつながりながら各現場の独自性も生かせる仕組みです。各分野のビッグデータがすべて連携していくイメージですね」(新田氏)

 こうしたデータ連携の基盤を構築するために、データフォーマットの統一やデータ連携を支援するツールの開発、APIの標準化などを推進し、2020年までにデータ連携基盤の試行運用を始める予定だという。

 また、IoTやビッグデータ活用のキーテクノロジーとなるAIについても研究開発を促進していく。新田氏は「すでに米国や中国の企業が多大な資金やデータを活用してAIの研究を進めています。それらの企業の後追いでは意味がありません。日本の強みが生かせる分野でAIの研究開発を加速させていきます」と、日本の独自性を意識したAI開発の重要性を指摘する。

 具体的な分野として新田氏は医療や介護を挙げる。これらは日本が他の先進国に先んじてさまざまなデータを収集できる分野と目されているからだ。国としては、これらのデータを国内の企業などが柔軟に利用できる環境構築を支援していく。

「AI開発の協調領域として医療や介護現場のデータ活用を促進できる基盤構築に取り組みます」(新田氏)

 このように進行しているSociety 5.0は、2019年に大阪で開催されるG20サミット首脳会議で世界に大々的に発信される予定だ。

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