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VAIOとLTE-XによるLTE over Wi-Fiを利用したセキュリティソリューションとは

VAIOとLTE-XによるLTE over Wi-Fiを利用したセキュリティソリューションとは

2018年04月09日更新

LTE over Wi-Fi

LTEの技術を使用した新しいワイヤレスネットワークのかたちが生まれ始めている。その一つの手法が「LTE over Wi-Fi」だ。同技術を所有するLTE-XとPCベンダーのVAIOが共同で、これまでにないセキュリティソリューションを開発している。

Wi-Fi上でLTEプロトコルを重畳

 昨年9月にLTE-XとVAIOが共同でリリースを発表した。その内容は、LTE-XとVAIOによる業務提携の合意について。目的は、LTE-Xが有するLTE over Wi-Fi技術を活用したセキュリティソリューションの共同開発・提供だ。

 LTE-Xが所有し、VAIOが注目したLTE over Wi-Fiとはどのような技術なのか。LTE-X 技術本部長の伊藤可久氏は「Wi-Fi上でLTEプロトコルを重畳させて通信を行う技術です。実際にはIPネットワークに重畳させられるので、正確にはLTE over IPと言いますが、便宜上、LTE over Wi-Fiと呼んでいます」と説明する。

 現在、多くのネットワーク通信で利用されているワイヤレスWANのLTEとワイヤレスLANのWi-Fiは、以下のような特長を有している。

・LTE:現在の携帯電話の主要規格。世界でもっとも稼働実績のある端末認証および暗号化方式
−ライセンスバンド(免許必要)
−高いセキュリティ
−端末管理機能
−柔軟なQoS

・Wi-Fi:世界でもっとも収容端末が多い無線ネットワーク
−アンライセンスバンド(免許不要)
−低コスト
−高速・大容量
−多種多様な対応デバイス
−継続的な発展

 LTEはライセンスドバンドとなりネットワークを構築するには免許が必要だ。誰もが自由にLTEネットワークを構築することはできない。特長は、高いセキュリティ性や端末の管理機能、柔軟なQoSだ。一方、Wi-Fiはアンライセンスバンドとなり、免許不要で誰もがネットワークを構築できる。コストも安く高速・大容量、多種多様な端末が対応している。ただし、運用によってセキュリティ面に懸念が残る。

「例えば公衆Wi-Fiでは、通信のもっとも基本的なリスクである改ざん、なりすまし、盗聴などのリスクがあります。LTEにおいても基地局との間の通信は誰もが電波を傍受できる空間で行われているので公衆Wi-Fiと同様のリスクが発生する可能性があります。しかし、LTEにはそれを保護できる強固な仕組みが実装されているのです」(伊藤氏)

 LTE over Wi-Fiは、LTEとWi-Fiそれぞれが持つ長所を合わせて、それぞれの短所を打ち消し、LTEとWi-Fiのいいとこどりを実現する技術だ。「LTEのデータをWi-FiのIPネットワークに乗せられるようにするLTE over Wi-Fiは、Wi-Fi(IPネットワーク)でLTEのさまざまな機能を利用できるようにする技術なのです」と伊藤氏は説明する。インフラには高速・大容量で低コストのWi-Fiを利用するが、通信のプロトコルにはLTEを使用するため、LTEの特長であるSIMを利用した端末認証や強固な暗号化技術、そして柔軟なQoSコントロールが可能になるのだ。

「LTEはセキュリティの確保においてユーザーに負担がかからないメリットがあります。LTEで通信している際に特殊な操作をしなくても盗聴される心配がないなど、ユーザーにとって使いやすいセキュリティが実現されているのです。また管理者側にとってはLTEネットワーク全体を円滑に運用できる側面も持ち合わせています。LTE over Wi-Fiは、エンドユーザー、管理者双方がLTEのメリットを享受できる技術と言えます」(伊藤氏)

エージェントソフトとSIMで実現

 LTE over Wi-Fiを利用したネットワークの優位性としてLTE-Xは次の六つの具体的なポイントを挙げている。

・SIMによる強固な認証
 自社でのSIM発行・管理
・きめ細かな通信制御
 ネットワークスライシングやエッジコンピューティングに寄与
・端末同士の通信不可
 ウイルス感染、DDoS攻撃などの影響範囲の最小化と早期対処を実現
・プライベートLTE
 運用の独立性を確保
・汎用性
 多様な端末に対応、回線フリー
・ネットワークインフラのシンプル化
 センターコントロール型によるシンプルな設計・運用・管理

 LTE over Wi-Fiは、端末にエージェントソフトをインストールすれば利用できるようになる。既存のWi-Fiネットワークをそのまま利用可能だ。認証に使われるSIMはハードSIM、ソフトSIMのどちらにも対応する。SIM自体はLTE-Xが独自に発行する。LTEの管理ツールやユーザーデータベース、認証サーバーなどはLTE-Xがクラウドサービスとして提供する。それによって、ユーザーのネットワーク構築や運用負担が軽減される。

 LTE over Wi-Fiのターゲットについては、「ネットワークカメラソリューション、端末管理/セキュアアクセスソリューション、大規模施設(工場やプラント)、ホテル、ISP(インターネットサービスプロバイダー)などを想定しています。従来のネットワーク環境の課題をLTE over Wi-Fiが解決できるからです」とLTE-X 代表取締役 CEOの池田武弘氏は説明する。いずれの環境においても、安価でセキュアなワイヤレス環境を手軽に実現したいというニーズがあるからだ。

 ワイヤレスネットワークの既存の課題を独自の手法で解決するLTE over Wi-Fi。PCベンダーとして着目したのがVAIOだった。

(左) VAIO 花里隆志氏
(中央) LTE-X 伊藤可久氏
(右) LTE-X 池田武弘氏

PCのセキュリティに最適

 現在、LTE-XとともにLTE over Wi-Fiを利用したセキュリティソリューションを開発しているVAIOの執行役員 花里隆志氏は次のように振り返る。

「これまでもLTE対応PCを提供してきましたが、何か新たなビジネスを生み出せないかと考えていました。そうしたなかで、LTE-XさんのLTE over Wi-Fiの存在を知りました。SIMを利用した認証やセキュアな通信環境をWi-Fi網で実現するLTE over Wi-Fiは、PCのセキュリティにまさに適していると判断したのです」

 LTE-Xの池田氏は「LTE over Wi-Fiを広めるためには、端末にあらかじめソリューションが組み込まれた状態での提供が理想的です。VAIOさんや当社ともども国産ベンダーとして、現在国家的な課題となっているセキュリティの面で、PCに組み込んだ形でLTE over Wi-Fiの利用を実現できることは、当社にとっても非常にありがたいと考えました」と話す。

 法人向けのPCの提供に力を注いでいるVAIOとしては、製品単体の魅力だけでなく、ソリューションを含んだ付加価値の提案で企業ユーザーへの訴求を目指している。「横並びになりがちなPC提案において、ひと味違う提案の可能性を探ってきました。その答えの一つが、LTE over Wi-Fiを利用したセキュリティソリューションの開発なのです」と花里氏は明かす。

 LTE-XとVAIOによるLTE over Wi-Fiを利用したセキュリティソリューションの提供は、今年の早い段階が予定されている。VAIOとしては、PCにLTE over Wi-Fiのエージェントなどを組み込み、さらに検証済みの状態での提供を目指すという。PCはVAIOが基本となるだろうが、すでに企業で導入されている他のPC製品でも利用できるソリューション形態も構想している。

「エンドユーザーは利用しやすく、販売パートナーのみなさまにとっては売りやすい製品、ソリューションになるはずです。セキュリティの独自技術を利用したソリューションということで、これまでにない提案ができると販売パートナーさまからの期待も大きいです。VAIOが検証済みでPCに搭載させる点も、安心して提案できそうだと評価していただいています」(花里氏)

 乱立するセキュリティソリューションの集約への期待や、IPでのセキュリティ対策に限界を感じているSIerなども、LTE-XとVAIOによるLTEの技術を使用したセキュリティソリューションに対して、大きな魅力を感じているという。

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