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受発注者双方の業務効率化に寄与するデジタル工事写真の小黒板電子化

受発注者双方の業務効率化に寄与するデジタル工事写真の小黒板電子化

2018年04月23日更新

土木現場でデジタル写真工事の小黒板電子化が進む
〜受発注者ともに業務の効率化を図る〜

デジタルカメラで工事現場の写真を撮影すると、カメラの画面上に施工内容が自動的に表示され、撮影された画面とデータが一緒に保存される……。今、全国の自治体が発注する土木現場で、デジタル工事写真の小黒板情報電子化が進められている。工事写真の電子小黒板とはどのような取り組みなのか、導入の背景、メリット、課題などを探った。

2017年2月に国交省直轄工事からスタート

 舗装道路の工事現場で、工事の内容をチョークで書き入れた黒板を持った作業員を撮影しているシーンを目撃したことはないだろうか。この現場での一連の作業を電子化して記録してしまおうというのが「デジタル写真工事の小黒板情報電子化」(以下、電子小黒板)である。スマートフォン1台で、工事の実測値の記録と工事写真の撮影が可能になってしまうのだ。

 まず専用のアプリを導入する必要がある。ログインすると、画面上に管理する工事、工種、工事箇所、略図、撮影日、撮影者などが記入できる小黒板が表示される。手順に従って記入していけば、データは自動的に保存される。従来のように、現場で黒板に手書きする必要がなく、その後の整理も容易だ。

 公共工事では使用が認められていなかったが、発注者、受注者双方の業務の効率化が図れることから、国土交通省が2017年2月から直轄工事を対象に適用を始めた。各地方整備局技術調整管理官向けの通達によれば、目的、取り組みの内容は次のようになっている。

●目的……受発注者ともにメリットのある取り組みを実施し、業務の効率化を図る

 国交省は、デジタル工事写真については、「電子媒体に記録された工事写真の無断修正防止対策」(2006年3月の事務連絡)によって、監督・検査時の確認、専門家による定期的な抜き打ち検査を行ってきた。しかし、実施に当たっては監督職員や検査職員に多大な負荷がかかっていた。

 受注した業者も工事写真を撮影する際に、小黒板に情報を書き入れて掲げる人員を確保したり、重機と接触しないよう安全性の確保に留意する必要もあった。電子小黒板を導入すれば受発注者双方の業務を効率化でき、現場の撮影と同時に工事写真の信憑性確認も行える。

 その結果、
・現場撮影の省力化
・写真整理の効率化
・工事写真の改ざんの防止
 などができるようになったという。

●機器の導入から、実施〜写真の確認まで

 受注業者が工事で電子小黒板を使いたい場合は、工事の契約後、監督職員の承諾を得て電子小黒板の対象工事とすることができる。次のような手順で実施する。

①対象機器の導入
 受注者が電子小黒板を導入する際に必要な機器やソフトウェアは、「改ざん検知機能」を有するものを使用する。受注者は、対象工事で使用する機器を発注者に提示する。

②電子小黒板への電子的記入
 写真撮影時の画像には、撮影日、更新日時、サイズなどを格納する領域や、暗号値を格納する領域、画像を格納する領域がある。受注者は、画面上に現れた被写体(工事現場)とデータを記入した小黒板を電子画像として同時に記録する。

③写真の納品〜チェック(不適切な修正の検知)
 受注者は、工事完成時に監督職員に写真を納品。チェックシステムを用いて信憑性の確認を行う。もし不適切な修正がある場合は、写真撮影時の暗号値と異なる結果が算出されるようになっている。

都道府県など導入状況はさまざま

 こうした国交省の取り組みを受けて、全国の自治体で行う発注工事でも電子小黒板の導入が広がりを見せ始めている。

 国交省所管の財団法人から一般財団法人となり、公共調達に関する情報システムの開発や情報サービスを行っている日本建設情報総合センター(JACIC)では、デジタル工事写真の高度化に関する協議会を設けて、システムの調査研究、開発・改良、運用・保守、建設情報の提供を行っている。研究開発部の荒川裕也氏に、中央官庁・都道府県での導入状況を聞いてみた。

「2017年11月、電子小黒板の導入状況の聞き取り調査を、電子小黒板の協議会に加盟している企業(正会員、賛助会員約30数社)に対して実施しました。その結果、中央官庁では、国交省の一般土木、営繕、港湾部門、NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本、さらにJR東日本などで導入済みでした。都道府県では、茨城、栃木、埼玉、神奈川、三重、滋賀、大阪、兵庫、奈良、佐賀、長崎、熊本、大分などが検討中か未定。運用を開始しているところでも、協議により使用可能としているところも見られました。政令指定都市では、東京を除くほとんどが検討中か未定。あるいは協議により使用可能となっていました。自治体に直接聞いたわけではないので詳細はわかりませんが、今年度から徐々に普及していくといった状況ではないでしょうか」

 東京都では、2017年7月に総務部技術管理課が「デジタル工事写真の小黒板情報電子化について」という特記仕様書と電子小黒板に関する想定質問(手続き、機器・ソフトウェア、改ざん検知機能、信憑性の確認、納品の仕方)を関係部署に送り、すでに建設局、水道局、下水道局が導入している。

セキュリティ確保、改ざん防止策などが課題か

 関東圏で導入が最も早かったのは群馬県だ。昨年5月1日に導入し、12月までに数件の利用実績があった。

「対象は県土整備部が発注するすべての工事の中で、受注業者がデジタル工事写真の電子小黒板の実装を希望した工事になります。これまでのところ、ほとんどが道路などの舗装工事です。まだ始まったばかりで、業者からはメリット、デメリットについて詳しい声はあがってきていません。これから、さまざまな分野の工事に普及していくのでしょう。問題、課題についてはそのつど対応していきます」(群馬県県土整備部建設企画課政策係・福島薫氏)

 2017年7月から運用が始まった新潟県からは、具体的な取り組みとメリットが聞けた。県土木部技術管理課副課長の江部俊浩氏は次のように語る。

「舗装などの土木工事の現場で、われわれ発注者が常にそばについて見ているわけにはいきません。従って、施工業者が自主的に品質管理を行うことになります。電子小黒板は、いわばそのための『証拠写真』です。規格通りの資材を使っているか、工程が守られているか、工事の進捗に合わせて各段階ごとに写真を撮って記録することになっているのです。従前なら、チョークでデータを記入した看板を持って、現場の脇に立っているところを撮影しましたが、電子小黒板は人を立たせなくても大丈夫です。人が近づけないような急斜面の工事にも対応できます。危険性をなくし安全面でもメリットがあります。当課は業者に直接発注している部署ではないので詳細はわかりませんが、非常に便利で効率化が図れるという話を聞いています」

 国が本腰を入れて取り組んだのが昨年の1月。すぐに新潟県内の業者から「県でも取り組んでもらいたい」との要望が寄せられた。利用できるソフトは限定されていて、改ざんができないような防止策も施されている。特に問題はなく、県としても早めに取り組むことにしたという。

「導入業者が増えれば、発注側、受注側、お互いに効率化できます。人手不足の問題も解消できるでしょう」(江部氏)

 それでは、現時点で導入が遅れていたり、予定がないという自治体にはどのような事情があるのだろうか。

 群馬県や新潟県からは具体的な不具合を聞くことはなかったが、国交省が「セキュリティ性を確保した機器」の使用を前提としているように、導入に際して「まだ使用実績が少ない」「信憑性に不安が残る」「セキュリティの確保」「改ざんなどへの対策が不明瞭」といった問題があるようだ。それも、これから市町村レベルにまで導入が進み、工事写真の信憑性、作業効率が向上することで解決に向かうのではないだろうか。

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