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アンライセンスバンドを利用したLTE「MulteFire」でプライベートLTEを構築

アンライセンスバンドを利用したLTE「MulteFire」でプライベートLTEを構築

2018年04月10日更新

MulteFire

アンライセンスバンドを利用したLTEの活用で、“プライベートLTE”を形成する。そんな動きが本格化しつつある。ノキアやクアルコムが中心になって商用化を進めているのが、アンライセンスバンドの5GHz帯などをLTEとして利用する「MulteFire」だ。

Wi-Fiに対して2倍以上の性能改善

 MulteFireは、免許が不要なアンライセンスバンドを利用したLTEだ。ノキアやクアルコムを創立メンバーとする「MulteFireアライアンス」が技術策定を進めている。ノキアによると、MulteFireはWi-Fiと比較して電波が届く距離は2倍以上、ユーザーの収容能力は2倍程度、無線区間の移動性や装置・サービスの信頼性の高さもWi-Fiより優れている。

「MulteFireによるプライベートLTEは、Wi-Fiに対して2倍以上の性能改善が見込まれます。半分のコストで最大2倍のカバレッジ、半分のアクセスポイント(AP)数で2倍のキャパシティを実現するのです。セルラーサービスとして培われてきたLTEの技術を使用する利点ですね」とノキアソリューションズ&ネットワークス カスタマーソリューションマネージャーの霜越 潔氏は説明する。

 MulteFireによって実現されるプライベートLTEは、そのものずばりプライベートなLTE網であり、企業などが自らLTEを利用して構築できるネットワークのことだ。プライベートLTEが求められる背景には、通信インフラへの新たなニーズの発生がある。例えば、さまざまなデータを収集してリアルタイムに分析するIoT、映像を用いた遠隔監視・管理、ARやVRのサービス化、アセットトラッキングシステム、自動運転、ドローン活用などによって生じるネットワークの課題だ。

「低遅延、高密度、リアルタイムアクセス、高いセキュリティ可用性などがネットワークに求められるケースが増えてきているのはもちろんですが、リアルタイムの映像監視やAR/VRなど新たな技術やアプリケーションを信頼性の高いネットワークで実現したいというニーズが非常に高まっているのです」(霜越氏)

ノキアソリューションズ&ネットワークス 霜越 潔氏

エッジコンピューティングに必要

 プライベートLTEは、現在IoTなどのキーワードとともに語られるエッジコンピューティングを実現するネットワークとも言える。ネットワーク遅延を回避してリアルタイム処理を実現するエッジコンピューティングには、プライベートLTEネットワークが適しているという。ノキアによるプライベートLTEの構成例(図参照)でも、IoT端末とエッジコンピューティング端末をつなぐ肝がプライベートLTEネットワークになっている。

 プライベートLTEの利用シーンの例では、重要な生産拠点や広大な倉庫、駐車場、企業オフィス、キャンパス、病院、スタジアムや大型のイベント会場、空港や鉄道のターミナルなどが挙げられている。いずれにおいても、プライベートLTEネットワークの構築によって、高帯域・低遅延・強固なモバイル環境、インドア・アウトドアの広範なカバレージ、強固なセキュリティ・データの秘匿性、キャリアグレードの信頼性、TCOの削減などが可能になるという。

 実際に海外ではプライベートLTE網を構築した事例がすでに登場し始めている。例えばオーストラリアのある鉱山では、重機のモバイルデータ通信環境を改善するためにプライベートLTEネットワークが構築された。結果としてWi-Fiと比較して少ないインフラ装置でネットワークの構成が可能になり、通信の信頼性も向上、トラフィックの優先制御なども実現している。これによって、重機の自動運転のプラットフォームが形成でき、重機の遠隔運転操作や運転環境の信頼性の向上なども可能にしている。

 Wi-Fiでは必要なエリアをカバーしきれず、かといってキャリアが提供するLTEサービスの利用ではコストが高くなってしまう。そうした状況においても、プライベートLTEネットワークの構築が解決策になるという。

ネットワークの新たな選択肢

 少し説明が長くなったが、このようなプライベートLTEネットワークを実現するのがMulteFireだ。「本来ならば、専用の帯域を用いたプライベートLTEネットワークの構築が理想なのですが、それができないケースも少なくありません。そこでMulteFireでは免許がいらない帯域を利用したプライベートLTEを実現しています」(霜越氏)

 MulteFireを利用するには、MulteFire用のAPとMulteFire対応チップを搭載した端末が必要だ。従来のWi-Fi環境をそのままMulteFire対応の機器に入れ替えるイメージである。周波数帯域も日本ではWi-Fiと同じ2.4GHzと5GHzを利用する。米国などでは3.5GHz帯が使用される。また、LTEのSIM認証を実現するにはSIMも必要だ。そして、ネットワーク管理のためのクラウドサービスが提供される予定だ。

 国内ではMulteFireの実証実験を2018年の下期中(7月〜12月)に実施できるように準備が進められている。クアルコムとインテルがMulteFireアライアンスのメンバーに名を連ねているので、PCやスマートフォンもMulteFire対応になる可能性は高いだろう。「現状は、外付けのドングルでMulteFireを利用できるようにすることも考えています」と霜越氏は話す。

 キャリアが提供するLTEやWi-Fiとは異なるネットワーク構築を可能にするプライベートLTEネットワークとMulteFire。ネットワークの新たな選択肢の登場によって、ビジネスチャンスが広がりそうだ。

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