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オープンデータを地域課題解決の有効な手段に〜長野県須坂市のオープンデータ化の取り組み〜

オープンデータを地域課題解決の有効な手段に〜長野県須坂市のオープンデータ化の取り組み〜

2018年03月27日更新

オープンデータを地域課題解決の有効な手段に
〜長野県須坂市のオープンデータ化の取り組み〜

インターネットの普及やIT技術の向上、SNSの活用にともなって、多様で膨大なデジタルデータがネットワーク上で生成・蓄積されている。国や自治体のオープンデータ化の取り組みによって、データを組み合わせた活用も可能となっている。今、自治体のオープンデータの活用はどこまで来ているのだろうか。長野県須坂市の現状をもとに課題を探ってみた。

国をあげてオープンデータ戦略を展開

 オープンデータとは、「自由に使える」「再利用できる」「誰でも再配布できる」ようなデータのことである。政府や独立行政法人、地方自治体などが保有する公共データが国民や企業などで利活用されやすいように機械判読に適した形で二次利用可能なルールの下で公開されること。また、そのように公開されたデータのことを指す。多種多様な情報を相互に連携させて新たな価値を生み出すことが期待されており、国や自治体が保有する公共データが国民や企業が利用しやすい形で公開されることが求められているのだ。では、国はこれまでどのように取り組みを進めてきたのだろうか。

 2012年7月に政府はIT総合戦略本部で「電子行政オープンデータ戦略」を決定・公開し、公共データの具体的な活用について次のように示している。

①政府自ら積極的に公共データを公開する
②機械判読可能な形式で公開する
③営利目的、非営利目的を問わず活用を促進する
④取組可能な公共データから速やかに公開し、成果を確実に蓄積していく

 さらに、地方自治体が取り組む具体策として、IT総合戦略本部は2015年2月に「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン(案)」を公表。その手引き書の中で、自治体のオープンデータの活用には「地域の課題を解決する視点が重要」と指摘している。地方公共団体が保有する公共データを利用しやすい形で公開することで、地域住民へのサービスを向上させ、地域課題の解決や地域経済の活性化によって地方創生につなげていく。具体的には、人口減少・少子高齢化、防災・災害対策、まちづくり・産業雇用創出、マイナンバー対応、地域活性化、財政再建、子育て、インフラ老朽化、システム、観光など、地域課題の上位に来るこれらのテーマに優先的に取り組むことが重要となっており、オープンデータの活用もその手段の一つとして期待されているのだ。

「市民提案型」という発想からスタート

 長野県須坂市がオープンデータ化に取り組み始めた時期は、2014年と全国的にも早かった。そのきっかけを、須坂市 総務部政策推進課 主査の若林久人氏は次のように語る。

「当市の三木正夫市長は、SNSなどの普及を踏まえて、情報の公開には積極的に取り組むべきというスタンスです。2013年の冬に、須坂市にゆかりのある大学の先生を招いてセミナーを開きました。その中で、須坂市出身で名古屋大学の遠藤 守 准教授と市長がICT化について話す機会があり、『オープンデータ』というキーワードが出てきたのです。全国的にもまだ取り組みが少なく、お金もかからない、ぜひやろうということで、遠藤准教授のアドバイスを受けてスタートしました」

 2014年2月には「須坂市の情報化を考える会(有志)」が「オープンデータデイ2014 in 須坂」を実施、オープンデータ推進会議の設置を求める提案書を提出した。4月21日には「須坂市オープンデータ推進会議」を設置、月1回程度の推進会議を開き、総務省ICT地域マネージャー派遣事業に申請した(7月から開始)。5月1日には「須坂市オープンデータ推進宣言」のサイトを公開。市民提案型のオープンデータとすることを前提に、利用したいオープンデータを市民が作成・申請し、市が審査後に公開することとした。

 2015年5月2日には「信越総合通信局 地域オープンデータ推進会議」を設置している。新潟県、長野県内におけるオープンデータ推進の拠点会議とすることとし、信州大学、名古屋大学などの学術研究機関や長野県、新潟県、須坂市を含む10市町村、企業やNPOなどが参画。5月21日には「千曲川オープンデータバレー構想」を発表した。須坂市を中心とした長野市、千曲市、中野市、小布施町への展開を目指すこととなった。

 このように紹介すると、市民提案型活動の支援という発想からスタートし、近隣地域への発展、さらに広域連携への拡大を目指すと矢継ぎ早に取り組みを進めたように見えるが、「市町村専用のアプリの作成や効果を最初から求めるとハードルが高すぎるので、まずはオープンデータ宣言を行い、公開手段の確立や職員のオープンデータへの理解を深めることに力を入れました」と若林氏は話す。

須坂市のオープンデータサイト。市民提案型で、市民が作成提案を行える。

オープンデータは課題解決のツールに

 須坂市がオープンデータサイトで公開しているデータは、須坂市役所問い合わせ先一覧、須坂市避難場所、地域のAED設置場所、須坂の歴史年表、須坂市動物園情報、須坂市ツキノワグマ出没情報、須坂市どこでも図書館、須坂市役所業務一覧、須坂市行政区別人口、すざか市民バス停一覧、須坂市貸出し物品・備品一覧など。自治体の行政情報としておなじみのものが多い。

 その一方で、須坂市の歴史や文化に関するもの、須坂ならではの特徴的な情報も用意されている。須坂市は、江戸時代は1万石の城下町として、明治から昭和にかけては製糸業のまちとして栄えた。公園や古い商家、蔵などの歴史の遺構、博物館、美術館、動物園などの文化施設もある。

「須坂の歴史や文化に関する情報、ツキノワグマ出没情報、動物園情報などは、須坂ならではのものではないでしょうか。動物園情報は、動物園のイベントとオープンデータを組み合わせて盛り上げられないかという発想から、フォトコンテストの写真をアップしたり、絵の上手な職員が動物を描いたイラストを公開して自由に使ってもらえるようにしました。個別アプリも、本来は市がデータを公開し、市民の側が作ってくれるのが理想なのですが、今のところ、職員が作って公開しています」(若林氏)

 2016年7月には、こうした須坂市のオープンデータの取り組みが信越総合通信局長の表彰を受けている。

 市民からの提案型のオープンデータを目指すという当初の指針は貫かれているのだろうか。若林氏によると、「市民がサイトにあるフォームを使ってデータを作成し公開するのはなかなか難しいのが実情です。市民が参加するイベントで、こういうものを出していこうよという情報を市がオープンデータ化・アプリ化しています。例えば、給食のレシピや作り方など、需要がありそうなデータはどんどん出していく予定です」というのが現状だという。

 スタートから5年目。どのような課題が見えてきたのだろうか。「オープンデータは、出すことが目的になってしまうとそこで終わってしまいます。あくまでも課題解決のためのツールであるという発想と発展性が大事です。市民がオープンデータということを知らなくても、使った結果として自然にまちづくりやものづくり、行政の見える化につながっていけばいいのです。例えば、市の技術情報センターには、キーホルダーやコースターなどを作れる『レーザー加工機』があるのですが、加工機で使えるイラストや写真、データを提供することでものづくりに使ってもらえるのではないでしょうか」(若林氏)

 オープンデータは、公開されることが目的でなく、市民が暮らしやすいまちづくりや行政の見える化に貢献することが期待されている。

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