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測定精度と装着感を両立させたイヤーセンサー式脈拍計

測定精度と装着感を両立させたイヤーセンサー式脈拍計

2018年03月23日更新

測定精度と装着感の良さを両立させた脈拍計
フィットネスクラブから他業種への展開も見込む

装着者の身体データを測定するバイタルセンシングは、ウェアラブルウォッチなど、医療現場にとどまらず私たちの身近なデバイスに搭載されている技術だ。しかし、バイタルセンシング技術を搭載した一部のウェアラブルデバイスは、取得するデータの精度が高くなかったり、装着に負担があったりするなど課題もある。今回は既存のバイタルセンシングデバイスの課題を解決したイヤーセンサー式脈拍計を開発しているミズノに話を聞いた。

フィットネスクラブで活用進む脈拍計
課題は装着感と測定精度の両立

 脈拍や血圧、血中酸素濃度などを各種センサーで測定するバイタルセンシング技術は、医療現場をはじめとして幅広い分野で活用が広がっている。特に脈拍は、医療現場だけでなく、フィットネスクラブなどでもデータ活用が進められている。フィットネスクラブでは各利用者の脈拍を測定することで、最適な運動強度を検証し、各利用者に最適なサービスの提供につなげているのだ。

 フィットネスクラブで現在利用されている脈拍計は、チェストタイプと呼ばれる胸にベルトを巻き付けて測定をする製品が多い。しかしこのチェストタイプは脈拍測定の精度は高いが、胸に取り付けるため締め付け感が気になったり、フィットネスクラブ内でシェアして使用するため他人の汗などの衛生面で不快感があったりするなど課題もある。ウェアラブルウォッチのような腕時計タイプの脈拍計もあり、そちらは取り付けが簡単で装着に対する不快感はないが、計測精度が低いというデメリットが存在する。衣服にセンサーを組み込んだウェアタイプの脈拍計もあるが、フィット感がよい半面激しい運動をするとセンサーの位置がずれてしまい計測精度が落ちてしまうなど、デバイスによって一長一短があるのが実情だ。

 スポーツ用品メーカーであり、スポーツ施設の運営を行うグループ会社も持つミズノは、前述したような脈拍計の課題を解決するため、イヤーセンサー式脈拍計「MiKuHa」(ミクハ)のプロトタイプを開発した。MiKuHaは、センサーの装着箇所を耳たぶにすることで、運動時の不快感を軽減しつつ、高精度な計測を実現している。取得した脈拍データは専用アプリケーションと連動させてクラウドで管理することで、運動の成果やコンディショニングに活用できる仕組みだ。

 MiKuHaについて、同社の研究開発部 センシングソリューション研究開発課 研究員 渡辺良信氏は次のように語る。「MiKuHaは、耳たぶに装着して脈拍を取得するハードウェアです。耳の取り付けることで運動時の違和感を減らしていることに加え、本体重量はイヤーセンサー部分と本体含めて約40g、装着時の不快感が少なくなるよう工夫しています。イヤーセンサーの本体は襟に装着できるようクリップが備えられているため、簡単に取り付けられます。またヘアバンドに取り付けても安定して利用可能です」

(左)ミズノ
研究開発部 センシングソリューション研究開発課 研究員 渡辺良信 氏

(右)ミズノ
グローバルイクイップメントプロダクト部 ライフスタイル・ファシリティーズ企画部 理学療法士 鈴木大介 氏

イヤーセンサー式で装着負担を減らし
独自アルゴリズムで計測精度を向上

 同社ではもともとソニーの有機ELディスプレイモジュールを採用したスポーツ用ウェアラブル眼鏡など、BtoC向けのウェアラブルデバイスの開発を手がけており、MiKuHaも当初はこれらと連携するセンシングデバイスとして開発を進めていた。しかし、市場調査を進めていくうちにコンシューマー市場ではバイタルセンシングのデータがあまり活用されていない傾向があることが分かったという。

「代わりに、フィットネスクラブやリハビリ施設などでは利用者の運動強度の確認や、リハビリ中の利用者や高齢者に負荷をかけすぎないような調整のために、センシングデバイスを活用したサービス提供を積極的に行っていることが分かりました。しかし、既存のセンシングデバイスはフィットネスクラブで使うにはいくつかの課題があることが分かったため、BtoCからBtoBへターゲットを切り替えて、現在のMiKuHaプロトタイプが完成しました」と渡辺氏。MiKuHaで取得したデータはBluetooth Low Energy(BLE)通信によってスマートフォンやタブレット等で確認できるように改善を重ねた。センサーは独自のアルゴリズムによって運動時の振動によるノイズを排除しており、脈拍を高精度に計測できるようになっている。

 MiKuHaで取得したデータはスマートデバイスの専用アプリケーションと連動させ、クラウド上で管理可能だ。アプリ上では6人までのデータを同時に表示できるため、フィットネスクラブにおけるグループレッスンで、すべての利用者が中強度の負荷で運動できているかなどを確認しつつ指導ができる。同じ体力指標の利用者同士でグループを作り、より効率のよい運動を促す指導への活用も可能だ。収集したデータはクラウドに収集されPCから一元管理できるため、長期的な体力の変化や体調管理にも利用できる。「データはIDに紐付いてクラウド上で管理されているため、MiKuHaの導入台数が限られた環境でも多くの利用者の活動データを取得し、分析することが出来る点もメリットです」と渡辺氏はコストメリットを語る。

工事現場などで実証研究がスタート
他業種での拡販も視野に入れる

 MiKuHaは現在プロトタイプながら、多くの機関で実証研究が行われている。ミズノグループが運営するスポーツ施設において、各種スポーツプログラムへの活用はもちろんのこと、大阪国際がんセンターでは、笑いががん細胞の免疫細胞にどう関係しているかを検証する「笑いとがん医療の実証研究」において、MiKuHaで取得した脈拍のデータも併せて分析し、その関連性を確認しているという。

また、クオリカが研究開発を行っている工事現場向けIoTヘルメット「AiboQube」(アイボキューブ)での脈拍情報センシングデバイスとしてMiKuHaを活用・検証しており、建築現場における労務環境改善ツールとしての活用が期待されている。既存のセンシングデバイスの課題となっていた計測精度の低さや取り付けにくさなどが解消されているため、実証研究においても精度の高いデータが取得出来たようだ。

 同社のグローバルイクイップメントプロダクト部 ライフスタイル・ファシリティーズ企画課 理学療法士 鈴木大介氏は「実証研究で実際に装着した人からは、装着していることを忘れるほどなじむという意見をいくつかいただいています。一方で装着部分の付け外しのしやすさなど、製品化に向けて調整が必要な部分も実証研究を通して見つかりました」と語る。

 上記のように、MiKuHaはスポーツにとどまらない多くの業種での活用が見込まれており、今後リハビリ施設などでデータをプリントアウトしてコミュニケーションに活用したり、工事や建設現場で作業員の状態を可視化したりするためのツールとしての利用が期待できる。鈴木氏は「センシングデバイスとしてMiKuHaの活用用途は幅広く、他業種にも積極的に販売を進めていきたいと考えています。そのためにはその業種、企業に最適な製品提案やシステム開発が必要となるため、販売店の皆さまの力が必要です」と販売パートナーを募る。

 MiKuHaは2018年春の販売を予定しており、販売価格は税抜き3万円台を予定している。今後は利用者が7人以上の場合、ビーコン中継器と連携して多人数の心拍データを取得できるようにするなど、機能改善も進めていく方針だ。

MiKuHaで取得した脈拍データは、スマートフォンやタブレット上のアプリで確認できる。上記のアプリはフィットネスクラブで使うことを想定して開発されている。

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