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フォグはエッジコンピューティングを包含する

フォグはエッジコンピューティングを包含する

2018年03月06日更新

Fog Computing

IoTというキーワードが生まれる前から、さまざまなモノがつながる世界を想定して「フォグコンピューティング」という概念が構想されていた。フォグコンピューティングとエッジコンピューティングの関係とは。

デバイスとDC/クラウドの中間でデータ処理

 シスコシステムズなどが推進しているフォグコンピューティングについて、シスコシステムズ イノベーションセンター センター長の今井俊宏氏は、「さまざまなモノがつながる世界において、クラウドだけでは難しいという想定から2010年頃に考え出されました」と振り返る。

 実際、ネットワークやセンサーの普及によってIoTという世界がすでに実現されているが、現在のIoTを支えるコンピューティングモデルは、デバイス、ネットワーク/ゲートウェイ、データセンター/クラウドとなっており、つながるものが劇的に増加するこれからは、すべてのデータをデータセンターやクラウドに集約することは難しくなっていくと予測されている。そうした世界を見越して、デバイスとデータセンター/クラウドの中間でデータ処理を行う仕組みとしてフォグコンピューティングが考え出されたのだ。

「フォグコンピューティングが必要になる要素は四つあります。それがデータ、通信、セキュリティ、アナリティクスです」と今井氏はポイントを提示する。以下が各ポイントにおける現在のIoTの課題だ。

・データ
 データソースが大量
 データのフォーマットが正しくない
 データにタイムスタンプが必要

・通信
 通信手段が脆弱、帯域が不十分
 帯域は十分だがコスト負担が大きい

・セキュリティ
 データをクラウドにアップすることが困難
 双方向通信のサービスは攻撃の脅威が高まるためクラウドでの分析は難しい

・アナリティクス
 分析を可能な限りすぐに実施したい
 現場で分散協調型の分析を実施したい

 これらの課題に対してフォグコンピューティングは、データ処理、データ分析、デバイス制御、データストア、プロトコル変換、デバイス管理、フォグとクラウド・フォグとフォグの連携といった機能で解決する。

シスコシステムズ
印南鉄也氏(左)  今井俊宏氏(右)

フォグはエッジコンピューティングを包含する

 気になるのは、フォグコンピューティングとエッジコンピューティングの違いだ。シスコシステムズでは、エッジコンピューティングについては「ヒト・モノ・現場に近い場所(エッジ)でデータを取得・処理する仕組み」と定義し、そのうえでフォグコンピューティングについては、「クラウドからエッジ側の処理を切り離し、自律・協調するフォグノードとしてデータの取得・管理・処理を分散する仕組み」と定義している。フォグコンピューティングは、データをネットワークの途中で適切に処理するフォグノードが連携するイメージだ。

 シスコシステムズの資料では前頁の図のように、エッジコンピューティングのエッジ部分では、ネットワーク、コンピューティング、コントロールが行われると表記されており、フォグコンピューティングのフォグノードにおいては、ネットワーク、コンピューティング、コントロールに加えてストレージやアクセラレーターの表記もある。これらも踏まえて今井氏は「フォグコンピューティングはエッジコンピューティングを包含する仕組みであり、エッジコンピューティングはフォグコンピューティングを実現する形式の一つになります」と解説する。

 このフォグコンピューティングの普及を促進するために、OpenFogコーンソーシアムという団体が設立されている。シスコシステムズをはじめ、デルやインテル、マイクロソフト、ARMなどの設立メンバーによって2015年11月に発足した。2017年2月には、フォグコンピューティングを実現するフォグノードやクラウドとの構成における技術・仕様要件を定義したリファレンスアーキテクチャも発表している。相互接続性や運用性を確保するための最低限の要件などが定義されていて、標準化に向けた取り組みではIEEEとも連携する。

「さまざまなサプライヤーが参画できるエコシステムの創出で、システムレベルで完全なインターオペラビリティ(相互運用性)を目指しています。他のIoT関連のプロジェクトとの連携も必要になっていくでしょう」(今井氏)

スマートシティプロジェクトで採用

 フォグコンピューティングはすでに実用化されていて、適用領域も屋外・屋内、地域単位、移動体など確実に広がってきているという。実際にフォグコンピューティングを実現するテクノロジーとしてシスコシステムズが用意しているのが「Cisco IOx」だ。これは、「さまざまな市場ニーズに対応するためにシスコシステムズのIoT製品とサードパーティのアプリケーションソフトやインターフェースを組み合わせられる仕組みです」とシスコシステムズ エンタープライズネットワーキング シニア プロダクト マネージャーの印南鉄也氏は解説する。

 シスコシステムズではCisco IOxに対応する製品として、産業用ルーター「IR800シリーズ」、産業用スイッチ「IE4000シリーズ」、フィールド向けルーター「CGR1000シリーズ」を用意している。これらの製品を利用してフォグコンピューティングに向けた一歩を踏み出している事例がすでに多数登場しているのだ。

 例えば、工作機械メーカーのMAZACは、フォグノードとして機能するIE4000シリーズを活用した「MAZAK SMARTBOX」という製品を開発した。これは、製造業向けオープン通信規格「MTConnect」を採用したネットワーク接続装置で、工場内の設備機器のIoT化を実現する。MAZAK SMARTBOXの導入によって、工場内の設備機器の稼働状況の可視化や分析、安全な接続環境が可能になる。MTConnect対応機器であればメーカーやモデルの新旧を問わずに接続できる。

 日立システムズは、マンホールのモニタリングシステムにCGR1000シリーズを採用した。センサー内蔵のマンホールからCGR1000シリーズがデータを受信し、日立システムズのクラウド型遠隔統合監視基盤に送信。そのクラウド基盤経由で官公庁や自治体の担当者などがマンホールの監視や保守を行えるようにしている。さらに、スペインのバルセロナでは、Wi-Fiを都市のインフラとして活用するスマートシティプロジェクトにおいてCisco IOx製品などを利用したフォグコンピューティングを実装し、Wi-Fiを利用して提供されるさまざまなサービスの統合的な管理を実現し始めているという。

「昨年の後半に、フォグコンピューティングを実現する製品ラインアップがほぼ出揃いました。これからはサポートの拡充などで、フォグコンピューティングの普及をさらに促進していきます」(印南氏)

白い筐体がCGR1000シリーズ。
MAZAK SMARTBOX内にはIE4000シリーズが採用されている。
IOx製品に対応するアプリケーションを管理できる「Cisco Fog Director」の画面。

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