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エッジ戦略は

エッジ戦略は"シフトレフト"へ

2018年03月05日更新

スタートダッシュ・エッジコンピューティング

Kick Start Edge Computing

IoTの普及によってモノから大量のデータが収集できるようになった。しかし、ネットワークやデータセンターの負荷が増大したり、データ処理のリアルタイム性の欠如といった課題が生じてきた。そこで、データを収集できるモノの側、いわゆるエッジ側で処理を行ってしまう“エッジコンピューティング”時代が到来しつつある。本特集はそのパイオニアたちの動向から、ビジネスのポイントを探った。

Intelligent Edge

エッジコンピューティング専用製品を日本ヒューレット・パッカードが提供している。それが「HPE Edgeline Converged IoT Systems」だ。それらの製品群と傘下のアルバネットワークスのネットワーク製品を組み合わせて推進しているのが「HPE Intelligent Edge」戦略である。

エッジ戦略は“シフトレフト”へ

 日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は、現在、「ハイブリッドIT」と「インテリジェントエッジ」という二つの戦略を進めている。ハイブリッドITとは、パブリッククラウドやプライベートクラウドとオンプレミスをシームレスに利用できる環境のことだ。一方、インテリジェントエッジはIoTのビジョンであり、HPEのエッジコンピューティング製品とアルバネットワークスのネットワーク製品で実現する。

「IoTでは、OT(オペレーションテクノロジー)とITの融合、OTにおけるITの利用が軸となります。具体的にはセンシングとビッグデータの活用であり、それらを実現する環境構築をサポートできるのがHPEの価値になります」(HPE ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 カテゴリーマネージャー 北本貴宏氏)

 IoTの世界ではさまざまなモノがインターネットに接続され、モノから得られるデータの収集・分析によってビジネスに結びつく新たな知見が得られるようになる。例えば製造業などでは工場内の機械から得られるセンサーデータをネットワーク経由で収集・分析することで、リアルタイムの遠隔モニタリングや機器の故障予測、予防保全などが実現する。

 こうしたIoTの世界において、「エッジ」と見なされるのは、「モノが存在し、アクションが実行される場所です」と北本氏は解説する。データセンターやクラウドの外部で、よりモノに近い場所をエッジと呼ぶのだ。従来のIoTのモデルでは、エッジ部分でセンサーからのデータを収集・集約し、分析はデータセンターやクラウド側で行っていた。ただしこのモデルでは、モノからのデータが増えるほど、データの転送に伴う遅延やネットワーク帯域の圧迫、コストなどにおいて負担がかかってしまう。そこでHPEが導き出したのが「シフトレフト」という考え方だ。

日本ヒューレット・パッカード
北本貴宏氏

エッジでディープラーニング

 シフトレフトとは、前頁の図のように従来までデータセンターなどで行ってきたデータの早期分析や制御の処理をエッジ側で行えるようにする考え方だ。「センサーから発生する大量のデータに近いところで処理を行うことで、リアルタイムにデータを処理・分析できるようになります。従来のデータ転送の課題を解決しつつ、データの賞味期限切れやアラート検知の遅れを防ぎ、迅速なアクションを起こすことが可能になるのです」と北本氏は説明する。シフトレフトとは、エッジ側でコンピューティングを行うことであり、すなわちエッジコンピューティングとなる。

 HPEは、エッジコンピューティングに特化した製品を用意している。それが、「HPE Edgeline Converged IoT Systems」だ。ラインアップは以下の4製品。

・パフォーマンスエッジコンピューティング
「Edgeline EL4000」(インテル Xeon プロセッサー搭載)
・エントリーエッジコンピューティング
「Edgeline EL1000」(インテル Xeon プロセッサー搭載)
・パフォーマンスゲートウェイ
「Edgeline EL20」(インテル Core iプロセッサー搭載)
・エントリーゲートウェイ
「Edgeline EL10」(インテル Atom プロセッサー搭載)

 Edgeline EL20とEdgeline EL10はデータの1次処理などを担うゲートウェイ製品であり、Edgeline EL4000とEdgeline EL1000は、エッジにおける早期分析や制御を実現するエッジコンピューティング製品となる。現場利用に耐える堅牢性も備えていて、Edgeline EL20とEdgeline EL10の動作温度は−20〜60度、Edgeline EL4000とEdgeline EL1000の動作温度は0〜55度だ。また、ナショナルインスツルメンツなどが推進する計測器向けの通信規格「PXI」に準拠していて、1,500以上のPXIモジュール製品からデータを取得できる。

「Edgeline EL10はI/O端子の豊富さが特長です。Edgeline EL20はデュアルコアのインテル Core i5プロセッサーを搭載しているので、簡単なマシンラーニングにも利用できます。Edgeline EL4000とEdgeline EL1000は、NVIDIAのGPUである『NVIDIA Tesla P4』をそれぞれ4枚と2枚搭載でき、エッジにおけるディープラーニングも実現します。これまではデータセンターやクラウドで学習モデルを作り、そのモデルを基にエッジ側でさまざまな判断を行うような仕組みが多かったのですが、Edgeline EL4000やEdgeline EL1000を利用すれば、エッジ側で学習モデルを作ることも可能なのです。従来と異なるIoTのアプローチが実現します」(北本氏)

 例えば、エヌ・ティ・ティ・コムウェアは、同社の画像認識AI「Deeptector」をEdgeline EL1000にプリインストールした産業用エッジAIパッケージを販売している。このパッケージを導入すると、製品外観検査などの自動化を工場内で完結できるようになる。

ネットワーク製品も同時提案

 HPEのインテリジェントエッジ戦略を支えるもう一つの要素は、HPE傘下のアルバネットワークスのネットワーク製品だ。IoTにおけるエッジコンピューティングにはネットワーク環境やセキュリティ環境が必須となるが、そうした環境をアルバネットワークスのネットワーク製品で支えていくというのだ。

「工場などのエッジ領域では無線環境の見直しが行われているなど、接続性や運用・管理性、セキュリティにおいて信頼性の高い製品が求められています。アルバネットワークスのネットワーク製品はそうしたニーズに応えられるのです」(北本氏)

 アルバネットワークスのアクセスポイントやコントローラーと一緒に、「Aruba ClearPass」というアクセス制御ソリューションを活用すれば、PLC(Programmable Logic Controller)やカメラ、センサー、作業者端末それぞれの通信の個別管理を一元的に行えるようになったりする。

 このようなネットワーク製品やセキュリティソリューション以外にも、「データ変換・転送、データの取得、分析、IoTプラットフォームといったインテリジェントエッジ戦略に欠かせない各分野において、パートナーを増やしていき、取り組みを強化していきます」と、北本氏は展望を語る。

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