
AzureとAzure Stackの組み合わせ提案がクラウドビジネスを促進する
AzureとAzure Stackの組み合わせ提案が理想的なハイブリッドクラウドを実現する
クラウドを導入するにあたり、ボトルネックになりやすいのが機密情報など重要なデータをパブリッククラウドに置くことに対する抵抗感だ。そうした課題を解決するハイブリッドクラウドの利用も進みつつあるが、クラウドとオンプレミスの連携という課題が残る。今回は上記のようなパブリッククラウドの課題を解決した「Microsoft Azure Stack」について、その概要とビジネスチャンスを紹介する。
Lesson 1 パブリッククラウドの機能をオンプレミスへ
クラウドサービスを利用するメリットについては、すでに多くの企業が認識している。しかし、いくら利便性が高くても社外にデータを預けることは難しい、といったセキュリティの事情から、クラウドの導入に踏み切れない企業もまた多いのが実情だ。
そうした企業の選択肢として、ハイブリッドクラウド環境を構築することが挙げられる。パブリッククラウドとオンプレミス環境を組み合わせて使用するハイブリッドクラウドであれば、社内システムの中でしか扱えない機密データなどをオンプレミスに保存し、アプリケーションの実行環境をクラウドに置くといった使い分けで、利便性とセキュリティ性を両立させることが可能だ。しかしハイブリッドクラウドには、異なる二つのインフラをスムーズに連携させることが難しいという課題がある。特にクラウドとオンプレミス間のデータ移動や、統合管理のしにくさなどについては、不満を抱えている企業も多い。
マイクロソフトが2017年秋頃から提供をスタートした「Microsoft Azure Stack」(以下、Azure Stack)は、そうした既存のハイブリッドクラウド環境に生じていた課題を解決できる製品だ。Azure StackはパブリッククラウドであるMicrosoft AzureのIaaS、PaaSの機能をオンプレミスで利用できるようにするアプライアンス製品であり、Dell EMC、日本ヒューレット・パッカード、シスコシステムズ、レノボ・ジャパン、アパナードが提供するハードウェア上にシステムを構築し、販売を行っている。2018年にはファーウェイもアプライアンス提供を行う予定だ。
Lesson 2 アプリ開発の一貫性が保たれたハイブリッド環境
Azure Stackとはどのような製品なのか。日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド プラットフォーム製品マーケティング部 エグゼクティブ プロダクト マネージャー 伊賀絵理子氏は次のように語る。「Azure Stackは、パブリッククラウドであるAzureの機能をオンプレミスでも使えるようにしたアプライアンスです。このようなパブリッククラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッドクラウド環境は通常、オンプレミスの延長としてパブリッククラウドを導入するケースが多いですが、Azure StackはAzureの1機能として開発されているため、すでにAzureを導入している企業が、Azureだけではサポートできない部分をAzure Stackを導入することで補う、という利用が多いです」
前述したようにAzure StackはAzureの1機能として提供されているため、それらの環境を実行・運用するためのリソースマネージャーや制御するためのUIは同一だ。インフラ管理やID管理が共通化されているだけでなく、アプリ開発の一貫性も保たれており、例えばAzure Stack上で構築されたアプリケーションをAzure上にデプロイすることも可能だ。
現在のところ、Azure StackではAzureの一部機能は提供されていない。伊賀氏は「ロードマップとして、まずはIoT系とコンテナ系を中心に機能追加を進めていきます。最終的にはAzureとAzure Stackで同一の機能を提供できるようにしていきたいですね」と語る。
Lesson 3 クラウドに置けないデータをAzure Stackへ
Azure Stackについて同社では三つの活用用途を想定している。一つ目は、エッジソリューションや非接続ソリューションとしての利用だ。製造業が構築しているIoT環境の中には1msecのレイテンシーも許されないケースもあり、エッジ側での処理が求められる。そのエッジデバイスとしてAzure Stackを導入するという活用だ。また船舶や鉱山など、ネットワークが安定しない環境などで、一時的なデータ保管や処理を行うデバイスとしてAzure Stackを活用する例もある。
二つ目の用途は、金融機関などレギュレーション上データをクラウドに置けない企業で利用されるケースだ。アプリケーション開発はAzure上で行い、データ分析はAzure Stackのオンプレミス側で行われる。三つ目の用途は、Azure Stackをアプリケーションプラットフォームとして利用するケースだ。開発をAzure上で実施し、Azure Stackにデプロイするという使い方をすることで、多角経営をするグループ企業や、法規制の異なる地域に展開するグローバル企業などが、地域ごとのレギュレーションが行いやすくなる。
すでに国内での採用事例もある。例えば三菱日立パワーシステムズがAzure Stackを活用した上記の環境の採用を決めている。「同社では従来からTOMONIと呼ばれる火力発電所支援システムをAzure上に構築しており、クラウド上で解析したデータをバリューとしてお客様に提供していました。しかし火力発電所はテロの標的になりやすく、そうしたデータをあまりクラウドに置きたくないという抵抗感があったようです。そこでAzure Stackを導入してセンシティブなデータをオンプレミスで扱ったり、Azureデータセンターのない国のお客さまに対してAzure StackをAzureの代替として使えるような環境を整える方針です」と伊賀氏。
Lesson 4 ハードウェア販売のノウハウをクラウドビジネスに生かす
伊賀氏は「Azure Stackの引き合いは非常に強く、特にパブリッククラウドでは補いきれない領域に使いたいという声が多いです。また、現在Azureを使っていない企業でも、オンプレミスにデータを置けるということで、『まずは話を聞いてみたい』と興味を持っていただいているケースが出てきています。ワールドワイドでは二桁の事例があり、あるAzureのデータセンターがない国では、国のプライベードクラウドとしてAzure Stackを採用しています」と語る。
Azure Stackのターゲット層は、その価格帯から大企業が中心だ。特に製造業でニーズがあり、自社で開発すると時間がかかるアプリケーションをAzure Stack上のPaaSを使用したいという引き合いがあるという。「運用負荷の削減を期待しているお客さまが多いですね」と伊賀氏。また、Azure Stack 対応マネージドサービスプロバイダーがAzure Stackのサービスを提供しているため、コストを抑えてAzure Stackのサービスを利用することも可能だ。今後は低価格帯のAzure Stackハードウェアも発売されるため、手軽に導入できる選択肢も増えていくという。
Azure Stackはアプライアンス製品であるため、クラウドビジネスにおいては従来ハードウェア提案を行ってきた販売店に強みがある。Azure Stackによって、すでにAzureを導入している企業にはパブリッククラウドの不足している機能を補うツールとして、現在使っているオンプレ資産が重要でなかなかクラウドの活用に踏み出せない企業に対してはAzureとAzure Stackを組み合わせた提案でクラウド活用のファーストステップを踏み出すきっかけになり得る。「ハイパーコンバージドインフラの一種と思われがちですが、Azure StackはあくまでAzureの拡張機能です。既存のお客さまのビジネスを奪うことなく、さらに選択肢を広げる商材としてAzure Stackを提案してもらえたらうれしいですね」と伊賀氏は語った。
本日の講師
日本マイクロソフト
クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド プラットフォーム製品マーケティング部 エグゼクティブ プロダクト マネージャー
伊賀絵理子 氏
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