
ハイブリッドクラウド環境でAI開発を効率化
ユーザーごとに大きく要件が異なるAI開発
ハイブリッドクラウドで柔軟なインフラ提供を
AI技術が注目を集めている。多くのサービスや機器への搭載が進むほか、自社でも試しに作ってみようという動きも出てきている。そうしたAI開発の裏側で、需要が高まっているのがハイブリッドクラウドだ。
Lesson 1 AI開発で重要となるインフラ環境
顔認識や自動運転、ロボット、自動応答、文字認識などAIの活用領域は多岐にわたる。これらの技術にAIを活用するため、開発に取り組む企業も多くある。
AIを構築するにあたって、まず注目されるのがアルゴリズムだ。脳の神経回路網を数式的なモデルとして表現することで、データの中にある特徴を学ぶことができるため、AI開発のベースとなる技術と認識されている。しかし、伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守サービス本部 ITインフラビジネス推進第2部 データプラットフォームビジネス推進部 課長の小野友和氏は「AI=アルゴリズムという構図を想像しがちですが、それはAIを構成する1要素に過ぎません。AIを構築するためには、アルゴリズムに加えて、学習に用いるデータや、AI開発の能力を持った人材、そして高速な計算処理やデータ処理に耐えられるだけの基盤が必要になります」と説明する。
AI開発基盤として必要なのは、多種多様なデータを一カ所にまとめて収集・活用できるマルチプロトコルである点と、スケールアウトが容易である点だ。またディープラーニング学習処理に耐えられるGPUを備えている基盤が望ましい。上記以外にも開発するAIに応じて必要となるインフラ要件は異なってくるため、それらを自ら選定して開発をスタートするのは、ユーザー企業にとって負担が大きい。
Lesson 2 ユーザーによって大きく変わる要件
そこで伊藤忠テクノソリューションズは、AI開発ニーズに応えるべく、AI開発のプロセスや技術を体系化した「CTC Artificial intelligence Resolution Library & Architecture」(CarLA)を策定し、それに対応したAI活用のためのハイブリッドクラウド環境「CTC Integrated AI Platform Stack」(CINAPS)の提供をスタートした。
CINAPSは今回策定した技術体系に対応したAI基盤オールインワンソリューションで、AIの特殊要件におけるプラットフォームの在り方を、同社のAI案件や検証結果などのナレッジから定義し、AI開発をすぐに開始できるように整えたAIハイブリッドクラウド基盤だ。AI開発基盤にハイブリッドクラウド環境を採用した理由について、伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守サービス本部 AIビジネス推進部 AI技術推進課の藤澤好民氏は「AI開発はユーザーによって要件が大きく異なるからです。例えばIoTで取得しているデータからAIを開発する場合、IoTのデバイスに近いオンプレミス環境で開発を行い、実行環境はクラウドに置くといった利用を求められるケースがあります。AI開発は大量のデータを取り扱うため、セキュリティの観点からオンプレミスで処理をしたいと考えるユーザーは多く、そうしたニーズに応えられる環境を提案しています」と語る。また、データの収集、加工、分析などの各プロセスでは、シーケンシャルもしくはランダムというデータへのアクセス方法、GPUの使用/不使用といったインフラ要件が異なる。ハイブリッドクラウド環境であればそれらのプロセス、セキュリティ、コストなどの要件に柔軟に対応できることも、基盤に採用した理由の一つだ。
Lesson 3 AIアプリケーションの移行を円滑に
ハイブリッドクラウド環境で開発を行う場合、懸念されるのが開発した環境から実行環境にAIアプリケーションを移行した際に正常に稼働するかどうかだ。
CINAPSでは、コンテナ技術を中核としたハイブリッドアーキテクチャーを採用している。例えばオンプレミスからクラウドにAIアプリケーションを移行させる場合、Dockerによる環境ポータビリティを用いるため開発環境から実行環境へ、AIアプリケーションに手を加えることなく移行できるのだ。また、本技術を使えばマルチクラウド間でのAIアプリケーションの実行も可能になる。
「2018年度に対応予定のOrchestrationという技術も用意しています。これはオンプレミスとクラウドをまたがるコンテナオーケストレーションで、ID管理やロールベースのアクセス制御などマルチユーザーに対応しています。例えば昨今、開発系の会社で部署ごとにAIを利用しているケースがあるのですが、それぞれのAI基盤を統合したいというユーザーに需要がある技術です」と藤澤氏。
CINAPSのフレームワークを活用することで、通常数カ月かかるAI開発を1カ月に短縮できるという。得意とするのは画像解析や認証ログの解析などで、画像解析に必要となるタグ付けサービスなども伊藤忠テクノソリューションズが提供している。
Lesson 4 AI開発は提案の大きなチャンスに
「ITにはアジリティが求められています。AIを利用したシステムを作って検証したいとか、実際に稼働するか試したいというユーザーもいれば、自動運転に代表されるような製品の質を、より高めるために時間をかけてAIを開発したいユーザーもいます。ユーザーごとに要件が異なるため、統合基盤を使うならオンプレミスを提案したり、リソースが足りない場合はクラウドを使ったりと適材適所にインフラを選択しつつ迅速に開発が進められる基盤環境が、AI開発には求められているのです」と小野氏。
AI開発において、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境が求められているという事実は、販売店にとっても大きなビジネスチャンスとなる。オンプレミスとクラウドを組み合わせて活用するハイブリッド環境を要件に合せて選定することは、販売店がこれまで得意としてきた提案力を生かせるポイントになるからだ。
またAIは企業が抱える課題解決や新規サービスに直結する技術であるため、開発するAIアプリケーションについてもヒアリングすることで、今後そのユーザー企業がどういったビジネスに舵を切っていくのか、現在どういった課題を抱えているのかを判断できるようになる。AI技術をサポートする商材を提案することで、新たな商機が生まれる可能性もあるだろう。
導入している企業は決して多くないAI技術。だからこそ今後ハイブリッドクラウド基盤でのAI開発が増加していくことが予想される。今回のCINAPSのようなインフラソリューションを商材とすることで、新たなクラウドビジネスのチャンスを掴んでいきたい。
(右) 伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守サービス本部 ITインフラビジネス推進第2部 データプラットフォームビジネス推進課
課長 小野友和 氏
(左) 伊藤忠テクノソリューションズ 製品・保守サービス本部 AIビジネス推進部 AI技術推進課 藤澤好民 氏
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