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VR日本市場の成長速度が世界市場より見劣りするその理由

VR日本市場の成長速度が世界市場より見劣りするその理由

2018年02月14日更新

Special Feature 2

複合現実やスマートスピーカーで変わる現場、消費行動

〜VR/AR/MR/スマートスピーカー〜

VR/AR/MRといったリアリティ技術や、音声認識で人々の生活をサポートするスマートスピーカーなどの先端技術を活用したデバイスは、コンシューマー市場にとどまらずビジネス市場でも今後導入が加速してくことが予想されている。これらのデバイスを導入することで、ビジネスはどう変わっていくのか。四つの先進事例を交えて紹介していく。

立ち上がりは順調なVR市場だが……?

 リアリティ技術に注目が集まっている。リアリティ技術とは、Virtual Reality(VR)、Augmented Reality(AR)、Mixed Reality(MR)といった技術の総称だ。特にコンピューターが作った仮想空間を、あたかも現実のように体験できるVRはゲームを中心としたコンシューマー利用において市場が拡大している。そうしたリアリティ市場について、IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原 啓氏は次のように解説する。「VR元年と言われた2016年から、市場は順調な立ち上がりを見せています。特にコンシューマー市場においては『PlayStation VR』が注目を集めており、入手困難な状況が続きました。しかし今後の成長速度を見てみると、世界市場と比較して国内市場が見劣りすることが予想されています」

 菅原氏によると、世界の2021年のVRヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)出荷台数は約4,000万台であるのに対し、日本国内は約100万台にとどまる。またAR HMDの世界出荷台数は約2,000万台だが、国内では10万台に届かない可能性が高い。(編注:IDC Japanの市場調査ではMRは含めず、没入型のHMDをVR、現実世界と重ね合わせるHMDをARと分類しており、MR HMDとされているMicrosoft HoloLensはARに分類されている)

 この市場状況について菅原氏は「特に企業利用においては、現場レベルでは興味を持っている人が多いのですが、導入の可否を決定する上層部が尻込みをしており導入率が伸び悩んでいます。これらの技術を業務でどう使ったらいいのか分からないことが、市場の伸び悩みにつながっています」と語る。

 日本国内の企業は、他社が利用していない技術はなかなか導入が進まない傾向にある。逆に言えば多くの企業が導入していたり、具体的な導入事例によって導入後のイメージがつきやすくなると一気に普及が進むのだ。

IDC Japan 菅原 啓氏

単体技術ではなく他の技術との組み合わせが重要に

 先進的な一部の企業では、VRやARを利用して業務改善や新しいサービスの提供に乗り出している。例えば、エンジニアのトレーニングなどをする場合、実機を使うとコストがかかるがVRを使えば、仮想空間上で基礎的な操作を学べる。またAR(MR)を使えば実際の工場に入って操作工程をトレーニングできる。こうしたトレーニング用途のAR(MR)採用例ではMicrosoft HoloLensがある。

 またARの利用では、セイコーエプソンが提供するARグラス「MOVERIO」を教育用途や観光用途に使った事例があるという。「長野県では、石垣だけが残った城の跡にMOVERIOで城を重ね合わせて見せることで、観光ガイドの理解をより深める活用をしています。こうした地域の歴史を紹介するコンテンツは教育用途でも共有しやすく、活用が進んでいるようです」と菅原氏。

 VRは不動産や建設業界でも導入が進みつつある。建築物は実際に竣工するまで内部はモデルルームで確認するしかないが、VRのHMDを使って説明すれば仮想空間上で壁紙の色を変えたり、実際に内装を確認したりできる。スマートフォンを活用したVRゴーグルなどは、不動産で物件を選ぶときなどに使用されるケースも多い。

「しかし、VRを本格的に業務で運用するのであれば、PCを使用した環境がおすすめです。スマートフォンの場合フレームレートが30〜60程度と低くVR酔いを起こしやすいのです。VR酔いを防ぐためには90〜120のフレームレートが必要で、この環境を構築するためにはPCを利用したVR HMDを選択するとよいでしょう」(菅原氏)

 世界市場と比較すると普及率は低いものの、国内でも徐々に本格利用が進みつつある。菅原氏は「VRやARといった単体技術で考えるのではなく、ほかのものと組み合わせると使い道が見えてきます。例えばVRと3Dプリンティング、データグローブ※を組み合わせれば、ろくろを回すように3Dデータを作って出力できるようになります。このように、業務にVRやARを組み合わせると何ができるのか、を考えるとイノベーティブな活用につながるでしょう」と語った。

※手の動きをデータ化してコンピュータ上で再現するセンシングデバイス

家電操作などの利用ですそ野が拡大

 スマートスピーカー市場も盛り上がりを見せている。スマートスピーカーとはインターネットに接続し、音声で操作できるアシスタント機能を有するスピーカーのことを指す。人の声で操作できるため、音楽の再生や情報検索、予定の確認などをハンズフリーで行えるのが魅力の一つだ。また、各スマートスピーカーの対応製品を導入していれば、スマートスピーカーを経由してそれらの機器の操作も可能だ。スマートホームの要となる役割を担っているのがスマートスピーカーといえる。

 それでは、現在のスマートスピーカー市場の動向はどうなっているのだろうか。調査会社の富士経済が2017年11月17日に発表したAI搭載機器、AI活用サービスの国内市場調査において、AI搭載のスマートスピーカーが注目市場として挙げられていたので紹介する。

 本調査によると、スマートスピーカー市場は2017年度より立ち上がり、18億円市場になる見込み。海外企業ではGoogleやAmazon、国内企業ではLINEがスマートスピーカーを発売しており、製品投入が本格化していることから上記の市場規模となった。2018年度以降も電機メーカーやオーディオ機器メーカーによる製品開発と市場投入が積極的に進むとみられており、市場拡大が予想されている。そのため2025年度には、2017年度比9.2倍の165億円市場となる予測だ。

 スマートスピーカーは従来のオーディオ機器としての利用に加え、家電操作やオンラインサービスなどの機能が利用できるため、今後ユーザーのすそ野拡大が期待されている。また、オーディオ機器としての需要も見込まれていると富士経済は指摘しており、従来スマートフォンとアクティブスピーカーをワイヤレス接続して音楽鑑賞に利用していたユーザーからの切り替えも進むと予測している。

 富士経済が発表したように、スマートスピーカーの市場は立ち上がったばかりであり、コンシューマー市場を中心に市場が拡大していくと予想される。また、実証実験の予定段階ながら受付業務をスマートスピーカーに代替させるなど、ビジネスでの活用事例も出てきており、販売店にとっては新たな商材の一つとして成長していく可能性が高いデバイスだ。

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