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トーハンが電子POPやAI書店員で書店への集客を狙う

トーハンが電子POPやAI書店員で書店への集客を狙う

2018年01月23日更新

「書店店頭×テクノロジー」で集客を狙う
電子POPやAI書店員などの実証実験を実施

①ブックファースト新宿店で2017年11月6日から2018年1月9日まで実施されるAI書店員「ミームさん」の実証実験。
②八重洲ブックセンター本店で2017年9月28日から11月12日まで実施された「次世代型電子POP」の実証実験。

デジタルコンテンツの普及に伴う書籍や雑誌などの紙媒体市場の衰退が危惧されて久しい。特にデジタルコンテンツの台頭だけではなく、書籍や雑誌のネット販売の普及も加わり、書店の経営は非常に厳しい状況に置かれている。そこで書籍や雑誌などの出版物を書店に取り次ぐ出版販売会社の国内大手であるトーハンは、書店店頭に最新テクノロジーを導入して集客および販売につなげるプロジェクト「マクルーハンの本棚」を実施している。その具体策として次世代型電子POPとAI書店員の実証実験が行われた。

既刊本から良質な作品を発掘
売上10万部以上の作品を育てる

 ネット販売の台頭が書店の事業を浸食しており、書店では集客および販売の向上が課題となっている。そこでトーハンは書店の集客や販売につなげる施策として、書店店頭にITを導入する取り組み、書店店頭×IT「マクルーハンの本棚」を開始した。

 この取り組みは同社が書店販売を活性化する目的で約5年前より取り組みを続けている「ほんをうえるプロジェクト」の一環だ。「ほんをうえるプロジェクト」は新事業に向けた企画を社内公募して選ばれたプロジェクトだ。

 発足当初はこれまでやり切れていなかったことを振り返り、まずは既刊本の発掘に取り組んだ。新刊本は発売から3カ月ほどは販促に力が入れられるが、期間を過ぎると埋もれてしまう。しかし埋もれている既刊本の中にはたくさんの良質な作品があり、それらを発掘して時間をかけて販売することで新たなヒット作を生み出す狙いだ。

 この取り組みの結果、10万部以上を売り上げた作品を3年間で20点以上生み出した。このほか書店への集客を目的とした店頭イベントの企画・実施や、独自の拡材の制作・提供なども評価された。こうした実績を経て次の施策として始めたのが書店店頭×IT「マクルーハンの本棚」である。

「ほんをうえるプロジェクト」で「マクルーハンの本棚」を推進するトーハン 仕入企画推進室アシスタントマネジャーの吉村博光氏は、「ネット販売の拡大に注目が集まりがちだが、実際の規模はリアルのほうが断然大きい。昨今、IoTやAIなどの新しいテクノロジーの普及が広がっており、こうした新しいテクノロジーを集客や販売に活用することで、書店販売を活性化させられる」と説明する。

トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」で「書店×IoT」や「書店×AI」の実証実験を担当した仕入企画推進室アシスタントマネジャーの吉村博光氏。

書店店頭×ITで集客・販売増を狙う
1カ月半で42冊を販売した電子POP

 吉村氏は書店店頭に導入する具体的なテクノロジーを探してIT関連の展示会に足を運んだ。そうして見つけたのがGMOクラウドのスマート電子タグと、sMedioの顔認識AIソフトウェアだった。

 GMOクラウドのスマート電子タグは電子ペーパーにセンサーを搭載した電子POPで、ブラウザーからインターネットを通じて電子ペーパーの表示内容を書き換えられる。また電子POPを見た来店客の行動をセンサーで検知できる。一方のsMedioの顔認識AIソフトウェアはカメラに映った映像から顔を認識して性別や年代、さらに表情を推定する。

 吉村氏はこれらのテクノロジーを書店店頭で活用できると判断し、その効果と実用に向けた課題を把握するために各社と協力して実証実験を実施したのだ。

 GMOクラウドのスマート電子タグを活用した「次世代型電子POP」の実証実験は「マクルーハンの本棚」の第一弾として、2017年9月28日から11月12日まで八重洲ブックセンター本店で実施された。

 電子POPはインターネットを通じて外部から電子ペーパーの表示内容をリアルタイムで書き換えられるため、タイムリーなアピールができる。実証実験では「365日名言の旅」という作品から、その日の名言を電子POPに表示して毎日更新した。

 その結果、以前は1カ月に1冊ほどしか売れていなかった本書が、実証実験の期間中、約1カ月半で42冊も売れたという。

 このほか電子POPに設置されたセンサーによって、電子POPの前に滞留した来店客の数や、商品を手に取った来店客の数を時間別に把握することができ、マーケティングや拡材の制作などに生かすことが期待されている。

顔認識AIソフトで表情を推定
顧客属性に応じた作品を提示

 sMedioの顔認識AIソフトウェアは顧客の属性に応じてお勧めの作品を提示するというAI書店員「ミームさん」の実証実験に活用され、2017年11月6日から2018年1月9日まで、ブックファースト新宿店で実施される。

 AI書店員では32インチモニターを使ったデジタルサイネージとカメラを設置し、デジタルサイネージの前に立った来店客の性別、年代、表情に応じて作品を勧める仕組みだ。表情は「うれしい」「悲しい」「普通」の3種類で推定する。

 実証実験ではアガサ・クリスティー作品フェアと連動したため、アガサ・クリスティー作品より選書された。2017年12月8日より映画『オリエント急行殺人事件』が公開されることもあり、実証実験開始から取材時の12月8日までにフェア対象の書籍が100冊以上売れたという。

 紹介した二つの実証実験は別の書店でも実施を広げている。さらに書店店頭に最新テクノロジーを導入する取り組みを今後も続けていくという。 吉村氏は「書店店頭でさまざまなテクノロジーの活用を試したい。アイデアやテクノロジーを持つ企業と協力して実証実験を実施したい」と意気込みを語った。

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