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自治体もAI・IoT活用へ~次世代ちばレポ MyCityReportの取り組み~

自治体もAI・IoT活用へ~次世代ちばレポ MyCityReportの取り組み~

2018年01月25日更新

千葉市と東京大学による「次世代ちばレポMyCityReport」実証実験
〜ちばレポ(ちば市民協働レポート)を全国へ〜

千葉市では、市民がスマートフォンアプリを利用してインフラの不具合を行政に知らせる「ちばレポ」(ちば市民協働レポート)を2014年にスタートさせた。2016年11月からは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究委託を受け、東京大学を主体に他の自治体も参加して「次世代ちばレポMyCityReport実証実験」を開始している。スタートから1年、現状と課題を聞いた。

まちを良くするための市民と行政の共働システム

「ちばレポ」は、地域におけるさまざまな課題についてスマートフォンアプリを活用して市民から情報を送ってもらい、Web上にレポートとして公開する仕組みだ。

 例えば、道路や公園など市が管理する施設における修繕や補修が必要な不具合などがその対象となる。スマートフォンのGPS機能を使えば位置情報も自動で取得できるし、写真も簡単に撮って送れる(3枚まで)。動画での報告も可能で、地域の課題情報を市民と市役所が共有して課題解決にあたるというシステムである。

 報告された情報は、地図上にアイコンで表示して一般公開される。地図上のアイコンをクリックすれば詳細情報が確認できるので、同じ不具合が複数報告されることも防げる。以前までは、市民から電話で寄せられる不具合は、道路だけでも年間1万3,000件にも上っていた。電話の場合、市の職員がその都度対応していたが、アプリを利用すればその必要がなくなり、市民にも休日や深夜でも報告できるメリットが生まれる。

 コスト面でも、例えば街灯の電球切れは、定期的に市の職員が巡回してチェックしていたが、市民からの報告に頼れば、年間100万円単位のコスト削減になることが見込まれていた。
 報告された情報は誰でも参照できるが、レポートを行う場合は、事前に市への申請が必要で、スタート時は5,000人の登録者を目指していた。システム費用は開発費と運用費を合わせて、5年間で約5,000万円。千葉市の熊谷市長は、「今後は、他の市にも使ってもらい、全国展開を図りたい」と述べていた。

 スタートして3年。千葉市民局 市民自治推進部 広報広聴課 副課長の大森信人氏によると、これまでのトータルのレポート数(2017年11月末現在)は5,035件に上っている。レポーターは、男女別では男性が77%、年代別では30〜50代が77%を占めているという。報告される内容は、道路が7割、公園が2割、ゴミ・その他が1割となっており、受け付けてから7日以内に50%、30日以内に80%対応。ほぼ95〜96%は何らかの対応ができているという。

NICTの研究委託を受け、東京大学と共同実験

 ちばレポ以後、今回の実証実験までの経過を市発表の情報、共同記者会見(2017年1月)の模様を元に紹介しよう。

 千葉市は2015年9月から東京大学生産技術研究所・関本研究室と「ちばレポデータの分析とその有効活用に関する共同研究」を開始。さらに2016年11月からは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究委託を受けて、東京大学を主体に自治体や民間事業者が参画して「次世代ちばレポ『MyCityReport』実証実験」を開始している。

 ちばレポをベースにしつつ、機械学習やIoT、最適資源配分などの機能を組み込んだオープンソースベースの次世代型の市民協働プラットフォームを開発し、自治体の関係部署や住民が参加してMyCityReportの開発・実証を行っていくというものだ。実証実験の終了後は、全国の地方自治体への展開を目指し、システム提供サービスを継続利用するための共同運営の仕組みも検討していくという。

 千葉市以外でも室蘭市や市原市、足立区、墨田区、沼津市が参加しており、実証実験期間は2016年11月〜2018年度度末まで。2〜3カ月ごとに検討会を実施している。
 実地での実験として2017年2月に、車載カメラによる市内道路の路面撮影を行っている。実証実験で期待できる効果としては、次の2点が上げられている。


■次期ちばレポとしての活用
・道路維持管理業務の高度化、効率化による道路舗装損傷の把握
・経費の削減……システム導入経費の大幅削減

■ちばレポの全国展開
・共同運営の仕組みとオープンソースベースの開発により全国の自治体で安価にシステムを利用できる環境が整うので、全国展開が期待される

ちばレポを全国版のMyCityReportへ

 MyCityReportは、これまでのちばレポとどこが違うのだろうか。

「今回の東大との実証実験の目的は、ちばレポの機能を生かしつつ、IoTやAIを組み込んだ新しいシステムの開発です」と大森氏は言う。今までは、市民がレポートしたものを市が整理して道路インフラの不具合を解消する市民協働的な要素が強かった。MyCityReportは、IoTやAIによって道路管理業務そのものを効率化できる機能が盛り込まれる。

 機械学習のトレーニングデータや教師データは豊富に用意しなければ賢くなれない。市民からの投稿だけでは足りないケースが生じるので、道路パトロールなど現場のデータや管理者の知識と市民の投稿を組み合わせてより洗練させていくという。

 学術機関と組む今回の実証実験で最も期待できる効果はコストの削減だろう。ちばレポは、開発費約2,700万円、現行のランニングコストが年間約540万円かかっているという。ただし、ちばレポはクラウドの仕組みを使っているので、他の自治体が最初からちばレポと同等のものを開発するよりは安価に仕上げられる。千葉市は「ランニングコストだけで使える」という表現で全国に展開しようとしてきたが、「まだ高い」と言われているという。

 今回は、開発部分は東京大学の実証実験の中で行うので、トータルのコストが安くなる。NICTはオープンソースでシステムを作る部分と、AIを盛り込む部分をサポートする。オープンソースを利用してさまざまな団体が使いやすいシステムを作れば、コストは下がることが見込まる。

 目標は全国の自治体で使えるMyCityReportにすること。実証実験のスタートから1年経過して見えてきた課題は何だろうか。

「千葉市には、ちばレポの実績がありますが、他の参加団体は市民がレポートする段階に至っていません。また、雪が降る室蘭と千葉では道路の損傷具合も異なるでしょう。それぞれの自治体が抱える課題をどのように考え、どのような機能を盛り込んでいくか、意見交換をしながら展開していく必要があると思います」(大森氏)

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