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マルチクラウド戦略を成功させるコツ

マルチクラウド戦略を成功させるコツ

2017年12月21日更新

複数のクラウドを比較検討するマルチクラウド戦略
ポイントはユーザー要件とクラウドの特性にあり

顧客の要望に対応するためには、複数の商材から最適な製品やサービスを提案する必要がある。それはオンプレミスでもクラウドでも変わらない販売店やSIerの役割だ。しかしどういった基準で提案をすればいいのかなど、悩みを抱えている販売店やSIerも多いだろう。今回はマルチクラウド戦略を推進するインテックの事例から、提案のヒントを紹介する。

Lesson 1 クラウドビジネスを独自に展開していたSIer

 クラウドビジネスを進める上では、単一のクラウドだけでなく複数のクラウドを商材とし、ユーザー企業のニーズに最適なクラウドを提案する必要があることは、本企画で何度も触れたとおりだ。上記のような複数のクラウドを取り扱い、ユーザー企業の課題に最適なサービスを提案するマルチクラウド戦略を推進している企業として、インテックがある。

 同社は1964年に、ユーザーが共同でコンピューターを利用する計算センターとして創業された。具体的にはユーザー企業から受託計算や帳票出力などの業務を請け負うアウトソーシングの業務を古くから行っており、全国の企業からの業務受託を実現するためのネットワークインフラを構築していた。

 そうしたネットワークインフラの基盤をもとに、2000年代から同社が力を入れ始めたのがデータセンタービジネスだ。電気やガス、水道のように「いつでも、どこでも、誰もが」自由にコンピューターの恩恵を受けることができるコンピューター・ユーティリティ社会の実現を目指していたという同社は、インターネットクラウドの世界を独自に展開していたのだ。

 その基盤をもとに現在同社が提供している自社クラウドが「EINS WAVE」だ。ユーザーのビジネス特性に応じてクラウドサービスを提案できるようマネージド型クラウドサービスからセルフサービス型クラウドサービスなど多様なサービスを提供している。

Lesson 2 要件に応じて自社クラウド以外も提案する

 インテックでは前述した自社クラウド以外にも、Microsoft AzureやAmazon Web Services(AWS)など、他社パブリッククラウドサービスも商材として取りそろえている。また、同社のネットワークインフラを活用した閉域ネットワークサービスでパブリッククラウドとユーザー企業をプライベート接続し、セキュアな運用を提案するというビジネスも行っている。

 複数の自社クラウドに加えて、他社のパブリッククラウドを商材として扱う同社だが、どのようなポイントでどのクラウドを提案しているのだろうか。同社 ネットワーク&アウトソーシング事業本部 N&O事業推進部 ICTサービス課長 神保岳大氏は「基幹業務システムなど、パブリッククラウドサービスを利用することが難しいユーザーにはハイブリッド環境で運用しつつ当社の運用サービスなどが提供できる『EINS/SPS Managed』、プライベートクラウドの柔軟なリソース管理が行いたいユーザーには『EINS/SPS SelfPortal』を提案しています」と話す。

 また、グループウェアやOfficeアプリケーションを使用したいユーザーにはOffice 365に当社の運用サポートなどのサービスをセットにした『EINS/MCS まかせて Office 365』、コンシューマー向けのサービスインフラとして使用したいユーザーにはパブリッククラウドのAzureが使える『EINS/MCS for Azure』など、ユーザーの要件に応じて自社クラウド以外のサービスの提案も進めているという。

Lesson 3 パブリッククラウドごとの特性を知ることが重要

 パブリッククラウドについては、ユーザーがクラウド上で構築するサービスをもとに、複数のパブリッククラウドを検証し、必要とされる転送速度や安定性の高さなどを確認しながら比較検討している。同社のネットワーク&アウトソーシングアウトソーシング事業本部 クラウドサービス事業部長 君塚 修氏は「例えばファイル共有サービスを提供しているユーザーの場合、転送スピードやパフォーマンスの安定性、スケーラビリティが重視されます。そのため、実際にファイル共有サービスを運営する企業に対して提案した際は、インフラとしてその要件を満たすAzureを採用し、サービスの安定稼働につなげました」と語る。

 上記の事例ではAzureを提案するにあたりCloud Solution Provider(CSP)プログラムを利用したという。これはユーザー数の増加によって利用する容量が拡大することが見込まれていたため、月額課金で柔軟に利用できるCSPのライセンスが最適だと判断したためだ。

「昨今のパブリッククラウドはベンダーによって用途ごとの特長が出始めています。例えばグーグルなどは画像分析に強みが出てきています。今後はそうしたパブリッククラウドごとの得意分野に応じた提案も必要になってくると感じています」と君塚氏。従来のクラウド提案事例から同様のサービスを提案するのではなく、進化していくクラウドサービスを知った上で、その時々に合った最適なサービスを提案することが求められてくる。

Lesson 4 AzureやAWSでコスト削減は難しい!?

 しかし昨今、パブリッククラウドの認知が高まったことによって、ある課題も出てきているという。同社 ネットワーク&アウトソーシング事業本部 クラウドサービス事業部 クラウドサービス部 サービス企画課長 西野勝則氏は「例えば、AzureやAWSなどのパブリッククラウドを導入してコスト削減を実現したいという要望をもつユーザー企業が増えてきていますが、実際のところクラウド運用にかかる人件費などはユーザー企業側が負担する必要があるため、パブリッククラウドを使うよりは自社で内製化したり、当社のEINS/SPS Managedを使って運用サポートをアウトソーシングしたりした方が、コスト削減が実現しやすいのです」と語る。販売店やSIerはユーザー企業が抱えている課題の本質を見抜き、その課題を解決できる選択肢をいくつか提示することが重要だ。

 また、AzureやAWSのようなパブリッククラウドは、前述したようなファイル共有サービスなどの膨大なデータ容量を使う企業や、IoTやマシンラーニングのようなAIに関わる技術を使いたい企業が利用することで、最大限の利用効果が得られる。その事実を販売店やSIerはユーザー企業に広く伝えていく必要があるだろう。

 このように、インテックでは自社クラウドに留まらない多様なクラウドサービスから、ユーザー企業のニーズやビジネス特性に合った最適なクラウドを提案するマルチクラウド戦略を推進している。クラウドを利用したビジネスはユーザー企業自身でも取り組めるため、SIer側も旧来の知見を生かしつつ最適なクラウドを目利きして提案できる力が求められているのだ。

 クラウドに対する情報収集能力と、それぞれの特性を踏まえた提案が、今後さらに必要になるだろう。

(左) インテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部 N&O事業推進部 ICTサービス課長 神保岳大 氏
(中央) インテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部 クラウドサービス事業部長 君塚 修 氏
(右) インテック ネットワーク&アウトソーシング事業本部 クラウドサービス事業部 クラウドサービス部 サービス企画課長 西野勝則 氏

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