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LTE-Mを使ったIoTごみ箱で観光地のごみ問題を解決

LTE-Mを使ったIoTごみ箱で観光地のごみ問題を解決

2017年12月20日更新

IoTごみ箱で観光地のごみ問題を解決
那覇で実施されたLTE-Mの実証実験の成果

IoTはビジネスだけではなく、生活や社会の身近な課題の解決にも貢献する。KDDIが沖縄県那覇市で実施した「IoTごみ箱」の実証実験では、観光地におけるごみ問題の解決に効果があることが確認された。多くの人が集まる観光地ではごみの回収に伴う作業やコストの負担など管理上の問題から、屋外にごみ箱が設置されないことが多い。実証実験ではごみ量の満空を把握するためのセンサーと通信機器を搭載したごみ箱を繁華街に設置し、ごみ量が少ないごみ箱のごみを回収するといった無駄を省いて回収作業の効率化を図った。

※掲載した写真および画面はすべてKDDIが提供。

大勢の観光客が訪れるのにごみ箱が設置されていない

 日常生活において感じる小さな「不便」はたくさんある。それらは身近な問題であるにもかかわらず、さまざまな事情から見過ごされてしまう場合が多い。そんな身近な不便の解決・改善にIoTは最適だ。ここで紹介する「IoTごみ箱」は、IoTを利用した地域の身近な課題解決の好例と言えよう。

 場所は沖縄県那覇市。いわずと知れた日本有数の観光地だ。同市がホームページで公開している統計によると、2016年には県外、海外から年間750万人以上もの観光客が同市を訪れたという。その那覇市の中でも観光客で混み合うのが土産物店や飲食店が軒を連ねる那覇国際通り商店街だ。

 那覇国際通り商店街は日中から深夜まで観光客でにぎわっており、多くの人たちが行き交う。そんな観光客に人気の観光地には意外な問題がある。それは屋外にごみ箱が設置されていないことだ。

 那覇国際通り商店街に限らず観光地にはごみ箱が設置されていないことがある。その理由としてごみ箱に捨てられたごみの回収やごみ箱およびその周辺の清掃などの管理作業を担当する人手が地域で確保できないことや、業者に委託する予算がないことなどが考えられる。

 いずれにしてもごみ箱を公共の場に設置するのは容易ではないことは理解できる。しかしごみ箱が設置されていないため、那覇国際通り商店街では次のような問題が生じている。それは観光客がごみを持ち歩いて買い物などを楽しんでいること。そしてごみを路上に放置する人がいること。これは観光客にとっても地域にとっても解決・改善してほしい問題だろう。その解決策として「IoTごみ箱」が試された。

ごみ箱の管理を効率化するためにごみの量を遠隔監視して適切に回収

 IoTごみ箱とはKDDIが沖縄セルラーと協力して2017年9月2日から9月8日までの1週間、那覇国際通り商店街で実施した実証実験のことだ。この実証実験の目的は商店街の屋外にごみ箱を設置する際の課題である管理の負担を軽減すること、そしてデータの収集に「LTE Cat-M1(LTE-M)」を利用することの二つだ。

 その仕組みはごみ箱に捨てられたごみの量を量るためのセンサーとLTE-M通信機器をごみ箱に搭載し、ごみ箱の中のごみの量をリアルタイムに監視する。ごみの量が満杯に近づくと管理画面に表示される該当のごみ箱の絵柄がオレンジ色になり、管理者に通知されるというもの。

 そして管理者は現場の担当者にメールで回収を指示する。ごみの量が少ないごみ箱を回収すると、回収の回数が増えてしまう。この仕組みによってごみの量が満杯近くなってから回収することで、回収の回数を減らして作業を効率化する狙いだ。

ごみ箱のごみの量はPCの管理画面からリアルタイムで遠隔監視できる。ごみの量が満杯に近づくとオレンジ色で表示され、管理者が該当するごみ箱の近くにいる回収担当者に回収をメールで通知する。なお回収担当者の位置はGPS機能を搭載したLTE-M端末を利用して管理画面で把握できる。

ごみの量を正しく把握する工夫と地域と調和できる仕組みの工夫

 IoTごみ箱ではごみの量を量るためのセンサーが内蔵されているが、この仕組みがユニークだ。センサーはごみ箱の天井部分に設置されており、天井からごみの最上部までの距離を測ることでごみの量を把握する。

 この仕組みについて実証実験を担当したKDDIのビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏は「例えばごみ箱の中に傘が斜めに入っていた場合、高さに差が生じて距離を正しく把握できません。そのため天井からごみの表面までの距離を測るセンサーを二つ取り付けました。さらにセンサーの精度が温度によって変化するため、温度センサーも使用しました」と説明する。

 そして「普段はごみ箱が設置されていないため、ごみ箱に気付いてもらえないという心配がありました。そのためごみ箱に気付いてもらえるようにデザインを工夫しました」と続ける。
 またセンサーや通信機器などを搭載するユニットの省電力化にも力が入れられた。その結果、IoTごみ箱はバッテリーのみで稼働でき、コンセントが不要となったおかげで設置場所の制約がなくなった。

 今回の実証実験では監視センターを障害がある人を支援する施設、ヘルパーステーションに設置して、障害がある人が回収指示のメール発信をした。原田氏は「自動的にメールを発信することも可能ですが、地域と調和の取れた仕組みを実現するには、地域の人たちが携われる機会を提供するべきだと考えました」と説明する。

 IoTごみ箱は那覇国際通り商店街の4カ所、荒天時を除く朝8時から夜8時まで設置された。その成果としては管理画面からごみの量を遠隔で監視し、適切なタイミングでごみの回収が行えたことや、ごみ箱を設置する場所によってごみが捨てられる量が異なり、回収作業を効率化する余地があることも確認できたことが挙げられる。 
 実証実験はすでに終了しているが、この仕組みは観光地だけではなく都心など広く活用できるはずだ。ぜひとも実用化してほしいものだ。

IoTごみ箱の屋外実証実験などIoT事業およびLPWA事業に携わるKDDI ビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏。

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