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水田用途特化型IoT 機器を1 万円で提供へ、国内水田稲作の振興に大きな期待

水田用途特化型IoT 機器を1 万円で提供へ、国内水田稲作の振興に大きな期待

2017年11月16日更新

水田用途特化型IoT機器を1万円で提供へ
国内水田稲作の振興に大きな期待

いる。その解決策として期待されているのがIoTの活用だ。しかし現状では機器の導入コストや通信コストの負担が普及を阻害している。この問題の打開に向けて農林水産省の先端技術展開事業により、水田センサーの低価格化と社会実装に向けた技術政策が打ち出され、農研機構を研究代表機関としてイーラボ・エクスペリエンスが次世代農業用IoT機器「水田用途特化型Paddy Watch」の商品化研究を進めている。この研究が実現するとセンサーを接続するためのインターフェースとLPWA通信機能を内蔵したIoT機器が、2018年以降に1万円で提供可能となるコストダウン技術が確立される。

農業人口の減少で農場の規模が拡大
人間による管理の限界に直面する

国内の農業の将来についてイーラボ・エクスペリエンスの代表取締役社長とベジタリア 取締役 技術開発本部長を務める島村 博氏は「農業従事者が減少しても国内の食糧自給を維持するには、農家1軒あたりが管理する田畑の規模を大きくしなければなりません。しかし規模の拡大によって管理に限界が生じます」と問題を指摘する。

農作物はそれぞれ栽培に伴う手間や作業の負担が大きく、1軒の農家が管理できる規模には限界がある。その中でも水田稲作は水温や水位を頻繁に管理しなければならないなど、年間を通じて栽培および水田を維持するための作業がある。

島村氏は「多数の圃場を管理するには認知の限界、記憶の限界、規模の限界という問題を解決しなければなりません。それにはIoTの活用以外に方法はありません」と強調する。

水田稲作の場合、水田の水の温度を積算することで収穫までに行う各作業の実施日を決めたり、収穫日を予測したりする。また稲の生育には水田の水の温度と水位の管理が非常に重要となり、それらの把握と調整が必要となる。

実証実験で限界の打開策を研究し
IoT機器とプラットフォームを開発

水田の水温や水位の計測は水田ごとに行わなければならないため、人手で数多くの水田の計測を行うのは限界がある。また計測した数値を人間が記憶することにも限界があり、数多くの水田の状態を日々把握することにも限界がある。

そこでIoTを活用してこれらの限界を打開する。まず認知の限界については水田にセンサーを設置して計測を自動化することで解決できる。次に記憶の限界についてはセンサーで計測した数値を自動的にクラウドに蓄積することで解決できる。規模の限界についてもクラウドに記録されたデータを参照することで解決できる。

イーラボ・エクスペリエンスおよびベジタリアではこれまで農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)などと研究連携して実証実験を進めてきた。これまで実施された実証実験の中には内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に採用されたものもある。

その取り組みの中で開発されたのが田畑の計測に必要な各種センサーを接続して計測データを収集し、クラウドなどのデータベースへ伝送するためのIoT機器「Paddy Watch」と、計測データを蓄積して分析・活用するために共通化したり、管理システムや各種アプリケーションを構築・利用したりするためのクラウド上に構築されたプラットフォームだ。

タブレットに表示された管理画面。水田に設置したIoT機器からの情報を詳しく確認できる。
スマートフォンに表示された管理画面。管理する水田の情報がいつでも確認できて便利だ。

ほぼ全国の水田に3,000台以上を設置
LPWA採用で機器価格1万円を目指す

現在のPaddy Watchは水田向けの水位・水温の計測に限定しているが、量産化技術要素を用いて製品化している。また屋外向けのIoTセンサープラットフォームとして「Field Server」の製品化も進めている。
これらは各種センサーを有線で接続するためのインターフェースと3G通信機能が内蔵されており、乾電池で駆動する。

またイーラボ・エクスペリエンスおよびベジタリアはスマートフォンやタブレット、PCのブラウザーで利用できるアプリケーションも開発しており、水位、水温、温度、湿度などの環境データがリアルタイムで確認できるほか、水田の水温の積算の確認、ピンポイントでの天候予測の確認や病害虫の発生条件がそろった場合はアラートを発信するなどの機能が利用できる。

現在のPaddy Watchはほぼ全国となる43道府県の水田に3,000台以上が設置されており、2016年までの開発・実証段階から2017年より社会実装・技術普及段階へと進展している。その社会実装・技術普及の課題となるのが価格だ。

これまでもPaddy Watchは進化に伴って低価格化を続けてきており、現在のモデルでは1台5万円まで低価格を果たしている。さらに今後は水田用途特化型の次世代Paddy Watchの価格を1〜3万円に低価格化して、本格的な普及を目指している。

低価格化に大きく貢献するのがLPWAの採用だ。LPWAは機器の低価格化に加えて通信コストの削減にも貢献し、導入と運用の両面でコスト削減が期待できそうだ。その実現に向けて農林水産省が実施しているプロジェクトを通じて、2018年に低価格化の技術を確立し、順次量産化を行う計画だ。

株式会社イーラボ・エクスペリエンス 代表取締役社長 ベジタリア株式会社 取締役 技術開発本部長
島村 博 氏

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