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クラウドとオンプレミス双方の提供でユーザーニーズに応える

クラウドとオンプレミス双方の提供でユーザーニーズに応える

2017年09月22日更新

オンプレミスと連携するクラウドサービスが
異なる企業層のユーザー獲得を実現する

昨今では基幹業務システムのクラウド化も進みつつあるが、それでも多くの企業はオンプレミス製品を使用しているのが現状だ。弥生はその中でも、クラウド会計ソフトの事業者シェアの半分以上※を占めている。会計ソフト利用者のうちのクラウド利用率は13.2%とはいえ、そのシェアは大きい。今回はクラウド会計ソフトで大きなシェアを獲得している弥生に、同社のクラウドビジネスについて話を聞いた。

Lesson 1 今後のソフトウェア市場を見据えSaaS事業を強化

弥生会計をはじめとした業務支援サービスを提供する弥生。会計事務所の販売パートナーを持つ同社は、会計ソフトウェア市場において中小企業や個人事業主を中心に大きなシェアを持っている。

そんな同社だが、オンプレミスのパッケージソフト以外に、クラウドサービスの提供も早くから着手していた。具体的には2012年7月から「やよいの店舗経営 オンライン」の提供をスタートするなど、自社サービスをクラウド化した「弥生オンライン」の提供を迅速に進めている。同社のクラウド戦略について弥生 マーケティング本部 マーケティング部 部長 兼 ビジネス戦略チーム シニアマネージャーの吉岡伸晃氏は次のように語る。

「クラウドサービスをスタートさせたのはここ数年の話ですが、当社ではパッケージソフトを販売していたころから、売り切りのビジネスではなくユーザーにサポートに加入してもらい、法令改正などがあると最新バージョンを提供するなど、リテンション型のビジネスモデルでサービス提供を行っていました。そのためクラウドサービスの提供にあたって大きくビジネスモデルが変わるということはなく、もともとのビジネスモデルを生かした形でクラウドサービスの提供ができていると思います」

同社のクラウド化への取り組みは2009年からスタートしている。きっかけとなったのは今後のパッケージソフト市場を見据えたSaaS事業の強化がある。当時同社のクラウドサービス基盤として選択されたのはMicrosoft Azure。まだ国内データセンターができる以前、Azureとしてのサービスがスタートされたばかりの頃だ。

Lesson 2 知識がなくても使えるようゼロベースで開発したクラウド版

同社のクラウド基盤にAzureを選択した理由について、吉岡氏は「デスクトップ向けのパッケージソフトはもともとWindows向けに開発されていました。そのためAzure基盤であれば開発環境を共有化しやすく、工数も効率化できると考えたためです。また将来的に他社のクラウドサービスと競合する場合でもAzureであれば競争力を維持できると考えました」と当時を振り返る。Azureは現在も同社のクラウド基盤として利用されているほか、認証系のシステム部分にはAmazon Web Services(AWS)を利用するなど、柔軟なクラウド活用を進めている。

しかし、同社が提供する弥生オンラインは、オンプレミスのソフトウェアをそのまま移植したわけではない。同社のクラウドサービスはパッケージソフトと比較して、会計に対する知識がなくても使えるようゼロベースで新たに開発されたサービスなのだという。

「具体的には、どの場所に何を入力すればいいのかわからないユーザーであっても、作業フローや質問に答えながら作業を進めていくだけで、手軽に会計業務が完了するような製品です。それに加えて、金融機関や各種Webサービスとの連携も行っており、自動仕分けができる機能も搭載しているので容易な会計業務が実現可能なのです」と吉岡氏は語る。

Lesson3 異なるユーザー層に訴求できるオンプレミスとクラウド

いち早くクラウドへの対応を進めた同社だが、現在でも既存のパッケージソフトの販売を平行して進めている。その背景には、それぞれの製品を利用するユーザー層が異なることがある。

「デスクトップ向けのパッケージソフトは、主に会計事務所で使用されています。会計事務所では業務効率の観点から、機能が豊富で動作の早いオンプレミス版のパッケージソフトを利用する傾向にあるためです」と吉岡氏。

しかし、会計事務所で弥生のパッケージソフトを利用しているからこそ、中小企業や個人事業主などのユーザー企業での弥生のクラウドサービス利用率も高まる傾向にある。なぜならば法人事業者の多くが、記帳や決算・申告業務を会計事務所に委託しており、会計ソフトを選定する際には会計事務所による推奨ソフトを選択するケースが多いためだ。そこで弥生では、デスクトップアプリケーションとクラウドサービスを連携させることで、双方にメリットのあるソリューションを提供している。

「具体的には、クラウドアプリケーション『弥生会計 オンライン』を使用して中小企業や個人事業主などのユーザー企業が仕訳取込や入力、確認などを行い、会計事務所は会計事務所向けのデスクトップ製品『弥生会計17 AE』を使用して、ユーザー企業が入力したデータを元に決算資料の作成などをするような連携機能を提供しています」と吉岡氏は話す。この連携機能に使用されているのはクラウドストレージであり、ユーザーはクラウドの存在を意識せずに利便性の高いサービスを活用できているといえる。

Lesson 4 これまで訴求できなかったユーザー層にシェアを拡大

吉岡氏は「競合他社を見てみると、クラウドサービスの場合はクラウドサービスだけ、デスクトップの場合はデスクトップだけの製品提供で完結しており、それぞれの連携ができない製品が多いようです。しかし、前述したような企業層ごとの使い分けや、クラウドへの抵抗感のある企業への需要に応えるためにも、選択肢を用意して用途に応じた使い分けができるようにしています」とオンプレミスとクラウド双方を提供している背景を語る。

同社のクラウドビジネスの状況を見てみると、まだまだオンプレミス版のシェアが大きいながらも、個人事業主をはじめとした個人ユーザーを中心に、クラウドもシェアを伸ばし始めている。MM総研が発表した2017年3月末時点の「クラウド会計ソフトの利用状況調査」を見ても、弥生が56.8%のシェアを獲得するなど、高いシェアを誇っている。

「特に『やよいの白色申告 オンライン』などは今までタッチできなかったユーザーに対して訴求できており、個人事業主を中心に支持を伸ばしています。クラウド会計等の業務サービスは現在萌芽期の段階であり、クラウドだからユーザー層が広がったというよりは、マーケットを広げるユーザーニーズに適合した製品がたまたまクラウドだったという認識です。今後もオンプレミス版、クラウド版ともにサービスの強化を続けていきます」と吉岡氏。

弥生はパッケージソフトやクラウドサービス提供のベンダーにとどまらない「事業コンシェルジュ」になることを掲げており、ソフトウェアでは解決しない業務サポートも行っている。吉岡氏は「業務ソフトは機能や安定性に、大きな差が出にくい製品です。そのためサポートやインシデントが起きたときに対応スピードを重視し、ユーザー企業に対してのサポートを充実させていきたいですね」と語った。

本日の講師

弥生 マーケティング本部 マーケティング部 部長 兼 ビジネス戦略チーム シニアマネージャー
吉岡伸晃 氏

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