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先端技術活用でパブリッククラウド市場は再び成長する

先端技術活用でパブリッククラウド市場は再び成長する

2017年08月18日更新

拡大を続けるパブリッククラウド市場は
DXへの取り組み増で再び右肩上がりに成長

パブリッククラウドではセキュリティが担保できない—。そうした懸念はすでに過去のものとなりつつある。すでにセキュリティを重視する金融業の企業もパブリッククラウドの採用を進めており、市場は拡大を続けている。今後パブリッククラウド市場はどうなっていくのか、そして市場に潜むビジネスチャンスを掴むにはどうすればよいのか。IT専門調査会社であるIDC Japanに、その最新動向を聞いた。

Lesson 1 エンタープライズ企業のパブリッククラウド採用が進む

クラウドサービスには、プライベートクラウドとパブリッククラウドという二つの種類が存在する。プライベートクラウドは、企業が自社内でクラウドを構築して提供する環境、パブリッククラウドは、不特定多数がクラウド上のリソースを共有する環境のことを指す。従来、セキュリティを重視するエンタープライズ企業は、自社の占有環境で利用できるプライベートクラウドを利用するケースが多い傾向にあった。

しかし、昨今その環境に変化が生じてきている。「国内パブリッククラウドサービス市場予測」を発表したIDC Japanによると、2016年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は前年比30.5%増の3,762億円となる推計だという。

現在、国内市場ではシステム更新期を契機として、従来型のIT(オンプレミス)からクラウドへの移行が進んでいる。特に、Eメールアプリケーションや会議アプリケーションなどを含むコラボレーティブアプリケーションは、SaaSファーストが浸透しているほか、ERM(Enterprise Resource Management)アプリケーションもクラウドを優先的に検討するクラウドファーストや、クラウドとオンプレミスを同等に比較検討するクラウドオルソーの戦略が顕著となっている。

加えて、Web系システムではIaaSやPaaSが重要な選択肢となっており、国内パブリッククラウドサービス市場は成長を継続しているという。パブリッククラウドはもともとリソースを多く使うソーシャルゲームやソーシャルメディアを運営するWeb系企業が市場を牽引していたが、昨今では前述したようなエンタープライズ企業もパブリッククラウドを利用するケースが増えてきている。

Lesson 2 クラウドのハードルが解消されたことが普及の背景にあり

エンタープライズ企業がパブリッククラウドを選択するようになった背景について、IDC Japan ITサービス リサーチディレクター 松本 聡氏は次のように語る。

「ここ数年のエンタープライズ企業は、基幹系システムや情報系システムなどを中心にパブリッククラウドの採用が進んでいます。また、企業によってはもっと本業に結びつく部分でパブリッククラウドの活用を進めています。例えば従来、金融業はセキュリティを重視するためパブリッククラウドは選択しない傾向にありましたが、現在ではFintechを実現するための手段としてパブリッククラウドを選択するようになってきています。こうした背景には、これまで漠然としていたパブリッククラウドに対するセキュリティの懸念が明確化され、セキュリティを担保するために講じるべき手段の理解が進んだことが挙げられます」

例えば金融情報システムの安全対策の普及や推進を行う金融庁の外郭団体「金融情報システムセンター」(FISC)は、金融業がパブリッククラウドを利用するためのガイダンスを発表している。このように、パブリッククラウドを利用する上で配慮するべきポイントが明確化されたことが、パブリッククラウド利用の促進につながっているのだという。

また、パブリッククラウドを利用する上での技術や知識が浸透してきたことや、ソフトウェアライセンスの整備が進んだことなどもパブリッククラウド拡大の要因の一つだ。オンプレミスからクラウドに移行するにあたり、ハードルとなっていた部分が解消されたため、採用が拡大しているのだ。

Lesson 3 パブリッククラウド市場の成長率はDXで再び右肩上がりに

それでは、オンプレミスからパブリッククラウドへの移行状況はどのようになっているのだろうか。同社の調査によると、前述したようにEメールアプリケーションやコラボレーティブアプリケーションのパブリッククラウド採用が顕著だ。

「特に多いのがメールサーバーとしてExchange Serverを使用していたユーザーが、Office 365のExchange Onlineへ移行する事例です。メール機能のみであればExchange Serverで運用した方がコストは抑えられますが、社外からメールを確認するなど、より柔軟な利用を求めるのであればOffice 365に移行した方がよいのです」と松本氏は語る。

また、国内パブリッククラウドサービス市場は新たな成長期を迎えると同社では分析している。「一般的に新興市場では、製品やサービスの普及が進んで市場規模が拡大すると、前年比成長率は右肩下がりとなります。実際、2016年の国内パブリッククラウドサービス市場では成長鈍化が見られました。しかし2020年から前年比成長率が再び右肩上がりになると予測しています。この背景には、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが挙げられます」(松本氏)

DXを実現する技術としては「コグニティブ/AIシステム」「機械学習」「IoTプラットフォーム」などが挙げられる。これらの技術はパブリッククラウドサービスとして提供されるケースが多いことに加え、従量課金/拡張性といった特徴から、DXを支えるIT基盤としてパブリッククラウドサービスの需要が拡大しているのだ。

Lesson 4 クラウド導入を成功させるためには既存プロセスの見直しが重要に

「DXを実現する先端技術を活用するため、パブリッククラウドを利用する企業が増加し、市場は今後数年で爆発的に拡大すると予測しています。2019年には市場がある程度動き出し、2021年にはIT/ビジネスの効率化を目的としていた従来のパブリッククラウド市場と、先端技術活用を目的とするパブリッククラウド市場の規模が逆転する現象が起こるでしょう」と松本氏。

また、DXではシステム間の連携が重要になるため、オンプレミスからクラウドへの移行を促進する材料にもなる。松本氏は「将来的にはこれらの市場が拡大していきますが、直近での中小企業におけるクラウドの需要はITやビジネスを効率化するための、オンプレミスからの置き換えが中心になります」と語る。

このような置き換え提案はすでに多くの販売店が実施しているが、松本氏は「今年SaaS導入の失敗プロジェクトが増加すると予測しています」と課題も指摘する。

その背景にはクラウド導入にあたり、ビジネスプロセスやワークフローを含めた見直しを怠った事例の増加がある。特にクラウドはユーザー企業側にある程度の知識があり、販売店のサポートがない状態で移行するケースも多い。販売店は、クラウドへ移行したユーザー企業に対して、ビジネスプロセスを踏まえた提案や取り組みを紹介できるようにする必要があるのだ。

特に働き方改革をクラウド提案の切り口をとする場合、単一のシステムとしてだけでなく、ユーザー企業のビジネスに深くつながるツールとしてクラウドが使用される。そうした企業へのサポートを行う力をつけていくことが、今後のクラウドビジネスを成功に導くためには必要不可欠といえる。

本日の講師

IDC Japan ITサービス リサーチディレクター 松本 聡 氏

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