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AIで企業を強くする

AIで企業を強くする

2017年08月29日更新

AIで企業を強くする

IT Japan 2017レポート

日経BP社は「デジタルイノベーションで創る競争戦略」をテーマに2017年7月5日~6日の三日間、都内のホテルにおいて「IT Japan 2017」を開催した。講演には経営トップや有識者、著名人を招き、IoTやAIなどの最新テクノロジーを活用して「何をするのか」についてさまざまな知見が紹介された。ここでは日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括 池田 和明 氏が語るAIの取り組み方についてレポートする。

日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括 池田 和明氏

新世界ではAIが戦いの武器に

現在、企業を取り巻く環境として「IoT」の普及があり、「デジタルデータの爆発」を生んでいる。データについては、構造化データだけでなく非構造化データもまた爆発的に増加している。そうした非構造化データも理解して新たな知見を導き出せる存在としてAIに注目が集まっている。そのため、「AIの興隆」が進んでいる。これらの三つの潮流は相互に作用を及ぼし、新しい世界を形成していると日本アイ・ビー・エム 執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括の池田 和明氏は話す。

モノとインターネットによってデジタルとフィジカルが融合した新しい世界では、「X:顧客体験」(顧客にとっての価値を巡る戦い)、「D:データ資源」(データ資源の権益を巡る戦い)、「P:サービスプラットフォーム」(プラットフォームを巡る戦い)、「H:ハードウェア」(デジタルとフィジカルの接点をだれがおさえるのか)の四つが企業の主戦場になる。特に顧客体験の場は最も重要な戦場だ。

これまで成果を出してきた戦い方には定石が三つある。

・「H-D-X」(ハードから得られるデータを分析してよりよい顧客体験を提供する)
・「X-D-P-H」(質のよいサービス提供、ユーザーデータの蓄積、企業やサービスがプラットフォームに参加、ハードを提供)
・「Buy(D)」(データ資源を保有する企業を買収する)

AIはこれらの定石において価値ある顧客体験を提供するための重要な役割を担う。

AIを使って価値を創出できる三つのパターン

実際にAIによってどのように価値を創出すべきか。それについて池田氏は、「人間の経験知の移植による生産性の飛躍的向上」「莫大なデータから洞察を獲得」「知能化されたハードウェアとサービスによる新たな体験」という三つのパターンを挙げる。

生産性の向上という観点では、マーケティング・販売・顧客対応といった顧客接点における「保険金の支払い査定」へのIBM Watsonの導入をはじめ、「“個客”の把握」「“個客”対応」などにAIが適用できる。調達・生産・物流などのサプライチェーンにおいては「予知保全」「自動制御」「品質管理」などでAIが有効だ。さらに人事・会計・経営管理などの支援業務においては「人材配置/登用」「離職防止」「不正検知」などにおいてAIが価値を生み出す。

莫大なデータから洞察を獲得できる例としては、がん治療や精神科医療、人材マッチングの分野でのIBM Watsonの導入、知能化ハードウェアとサービスによる新たな体験の例としては、スバルの高度運転支援システム「アイサイト」やコマツの建設機械遠隔無人制御、アマゾンやグーグルの音声アシスタントなどを池田氏は挙げる。

このようなAI活用例がある中、池田氏は「プラットフォーム・オン・プラットフォーム」という新たな定石の可能性を、音楽認識アプリである「SHAZAM」を用いて示唆した。SHAZAMは流れている音楽を認識してApple MusicやGoogle Playなどで聞くことができ、関連したYouTube動画も探せるなど、さまざまなプラットフォームを活用するアプリで大成功を収めている。

AIの働かせ方とは?

これからは、ハードウェア、データ資源、サービスプラットフォーム、顧客体験という四つの戦場でAIを働かせていけるかどうかがIT部門の戦いとなる。例えばデータ戦略においては、データを加工したり利用したりする際にAIを働かせていかなければならないだろう。そのためにはAIを活用できる新しいアーキテクチャーの採用が求められる。それはクラウド、データ、AI、アプリケーションというレイヤー構造になり、AIとアプリケーション層ではAPIが並ぶ。

今後は提供されるAPIを組み合わせて自社のアプリを構築していくようなイメージになるが、そのような世界においては、差別化とコモディティを実現するAPIの選択が必要であり、それを池田氏はAIソーシングと呼んでいる。また自社でAIを教育していくにはAIが使う知識体系(コーパス)の整備が欠かせない。このコーパスも差別化の源泉となる。AIを教育するための教師データの作成は、従来の要件定義や概要設計に相当する。

AIを自社で活用するには、リーンスタートアップとアジャイル開発、そして体験デザインの実施が大切だ。まだまだ手探りのAI活用においては、こうした取り組みが有効だと池田氏は指摘する。

これらのポイントがAIで競争優位を実現するポイントだと池田氏はまとめた。

(レビューマガジン社 山崎慎介)

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