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業務効率化を目指し庁内ネットワークにSDNを導入した島根県浜田市の成果とは

業務効率化を目指し庁内ネットワークにSDNを導入した島根県浜田市の成果とは

2017年07月26日更新

浜田市が庁内ネットワーク基盤をSDNで構築
〜業務を効率化し市民サービス向上を目指す〜

この3月、島根県浜田市でSDN(Software Defined Networking)を活用した庁内ネットワーク基盤が完成、運用を開始した。従来、基幹系、情報系、電話系、消防指令などシステムごとに分かれていた庁内ネットワークをSDNで統合・刷新することでネットワーク全体の統合管理を目指すもの。職員の業務を効率化し、セキュリティの強化や柔軟な変更・拡張性を実現した。導入の背景、導入後の成果、課題などを聞いた。

ネットワークの全体像の把握が困難
管理は個人に固定化していた

浜田市は、2005年10月に旧浜田市、金城町、旭町、弥栄村、三隅町の5市町村が合併して誕生した人口約5万5,000人の町。海、山などの美しい自然、石州半紙などの伝統文化やしまね海洋館アクアスなど観光資源にも恵まれている。高速道路、港湾などの都市基盤や大学、美術館などの教育文化施設も充実。人と文化と自然の調和のとれた島根県西部の中核都市である。

浜田市のHPをのぞくと、「住みたい 住んでよかった 魅力いっぱい 元気な浜田〜豊かな自然、温かい人情、人の絆を大切にするまち」というキャッチフレーズのもと、「暮らしの情報」「観光情報」「入札・産業支援情報」「浜田市の概要」「はまだ暮らし」のカテゴリーがあり、住民向け、観光客向け、移住希望者向けに積極的な情報発信を行っている。総合窓口課のワンストップサービスや、住民票の写しのコンビニ交付にいち早く着手するなど、住民サービスの提供にも力を入れている。

そんな浜田市の従来の庁内ネットワークは、基幹系、情報系、電話系、消防指令などのシステムごとに構成されていた。そのため、ネットワークの全体像把握が困難で、管理が個人に固定化してしまうなどの状況を招いていた。

また、自治体のネットワークは、標的型攻撃といった脅威が住民情報などにアクセスできないように完全に独立させる必要もある。自治体の機構改革や国の法制度改正があるたびに、大幅な構成変更もしなければならない。最近では、マイナンバー制度へ対応するためにネットワークのセキュリティ強化も大きな課題だった。システムごとに構築ベンダーが異なるので、ネットワークの設定変更や障害発生時の対応に手間や時間がかかるといった心配もあった。

「住みやすく元気な浜田」を実現するためには新たな住民サービスや自然災害発生時の対応強化などが不可欠。今回のSDN(Software Defined Networking)によるネットワークの統合・刷新は、それを支えるためのネットワークインフラ構築だったといえる。

SDNの導入で庁内ネットワークの設定変更は
コントローラーからソフトウェアで一元的に

SDNとは、ソフトウェアによって仮想的なネットワーク環境を作る技術やコンセプトのこと。管理ツールや事前の設定でネットワークの構成や性能・機能を目的に合わせて変えることができる。

「従来のシステムでは管理上の問題が一番大きかった」と語るのは、総務部情報政策課 情報政策係主任主事の田村翔太氏だ。「庁内で部署が引っ越しをする際など、ネットワーク機器へのコマンド入力や配線をつなぎ間違えないようにとか、ネットワークの設定や構成の変更のたびに、ケーブルの抜き差しやルーター、スイッチなどを設定し直したりする必要があり、大変な作業でした」と言う。

それまでの度々のシステム変更の結果、ネットワーク構成が複雑化し、ドキュメントで全体を把握することも困難となっていた。それが、スキルのある限られた職員に管理業務が集中する結果にもつながっていた。

ネットワークの統合・刷新にあたり、ネットワークを仮想化して分割したり、必要に応じてネットワークの変更や追加をソフトウェアで容易に行うことができるということで浜田市が着目したのがSDNだった。各ベンダーのSDN製品を調査して提案を募り、検討した結果、サンネット(本社・広島市)が提案したNECのSDNソリューションが導入されることとなった。VTN(仮想ネットワーク=Virtual Tenant Network)を構築し、用途ごとにネットワークを独立させられること、GUIでネットワーク構成を可視化できることなど、同市が求める要件を満たすものだったからだという。

システムの構成内容はSDNコントローラー2台、SDNスイッチ16台、エッジスイッチ280台など。それまで独立していた基幹系(住民情報システム)と情報系(インターネット)、電話系、消防指令を統合した新しい庁内ネットワークを構築した。拠点は本庁、4支所と公民館など合計45拠点。主な特長とメリットをまとめると次のようになる。

・庁内ネットワークの設定変更はSDNコントローラーからソフトウェアで一元的に行える

・レイアウト変更、端末の追加などが容易に行える

・ネットワークの現状(物理構成と論理構成)、通信状態(トラフィックの流れや障害状況など)もGUI画面で把握可能なので障害発生時も迅速に対応できる

・庁内システムはVTNで分離しつつ、セキュリティも保たれている

SDNで職員の業務を効率化
新住民サービスの実現にも期待

浜田市のネットワーク構成図を見ると、インターネット系、基幹系、情報(LGWAN)系、通信指令(消防指令)系、VoIP(音声)系、管理系という六つのVTNが運用されている。ネットワークは物理的に統合され、構成はシンプルなので、あらゆる面で簡単に運用できるようになっている。GUIを見ればリアルなネットワーク構成がわかるので、ドキュメントで管理する必要もない。ネットワークを変更する必要が生じても、GUIから簡単に設定変更できる。万が一障害が発生しても、自動で迂回して通信も継続できるという。

具体的には、新しいネットワークは本庁と同じLAN環境(レイヤー2構成)なので、市庁舎内だけでなく点在する支所や公民館などもカバーしている。市内の各拠点のどのポートに端末をつないでも、即座にネットワークを利用することができる。

ネットワーク運用を担当している田村氏は、「浜田市では、確定申告の時期になると支所や公民館で申告できるようにしているのですが、毎年、そのために臨時窓口を設け、ネットワークやPCの設定を行って対応してきました。しかし、SDN導入後は、PCを現場に持ち込んでケーブルを挿すだけで必要なネットワークに接続し、利用できます。市内の各拠点に本庁と同じネットワークが行き渡れば、端末を持って行けばすぐつながる。柔軟で迅速な市民サービスが提供できます。こうした事例に取り組んでいるところは島根県内では見られません。中国地方に拡大しても、少ないのではないでしょうか。地方自治体の先進的なモデルケースになると考えています」と胸を張る。

今回、庁内のネットワークがすっきりして使いやすくなったので、これからは選挙の対応や、自然災害時に避難所で被災者が使えるネットワークやの提供、観光客に情報提供を行うWi-Fiサービスの実現など、住民サービスに力を入れていくという。

SDN導入による職員の業務や住民サービスの向上は、住みやすく元気な浜田市の実現という初期目的に確実につながってゆくのではないだろうか。

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